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藤岡vs岡 「トレード対決」を巡るロッテナインの思い

2018年8月17日10時31分  スポーツ報知
  • 藤岡と岡(右)

 トレード期限直前の7月26日にロッテから日本ハムに移籍した藤岡貴裕投手(29)が、古巣相手に移籍後初登板した16日の日本ハム―ロッテ戦(札幌ドーム)。遊軍記者の私は、ロッテ担当の代役として現場で取材した。ロッテもトレード相手の岡大海外野手(27)を9番・中堅でスタメン起用。どちらが“恩返し”を果たすか注目された一戦は、ロッテ打線が藤岡を攻略して快勝した。

 試合前から、ロッテの井口資仁監督(43)やロッテナインの間には、様々な思いが錯綜していた。挑発するかのように藤岡を古巣にぶつけてきた日本ハム・栗山監督に対し、岡をスタメン起用した井口監督は「出さないわけにはいかない。みんなが見たいでしょう」と、堂々と受けて立った。試合前の練習では岡に「構えが小さくなってる」「もっとゆったりとタイミングを取った方がいい」と直接指導するなど、指揮官自ら気合十分だった。

 今回の3連戦で初めてビジターの一塁側ベンチに座った岡。地元メディアなどに囲まれ、「意識しないのは無理。ガッツリ意識します」と鼻息が荒かった。試合では3回に逆転劇につながるエンドランを決めるなど、藤岡から2打席連続安打。「(日本ハムファンからも送られた)声援に感謝したい。チームの勝利に貢献できてうれしい」と、感慨深そうに語った。

 藤岡と投げ合った土肥星也投手(23)は、6回途中まで2失点で、プロ2年目で念願の初勝利。試合後、藤岡との投げ合いについては「意識しなかった」と語った。だが、登板前日の囲み取材では、同じ質問に「う~ん…」と言葉に詰まった後、「僕は僕なりに、1人1人の打者を打ち取るだけです」と、言葉を選ぶように答えた。同じサウスポーの先輩。「う~ん…」と首をかしげた数秒の“間”に、複雑な思いが透けて見えた。

 ロッテの打者も難しかったはず。手の内を知っているけど知られている。そんな中で、試合前に「忘れられない1日になる。楽しみです」と話していたのが鈴木大地内野手(28)。藤岡とは東洋大の同期生で、11年のドラフトでは藤岡が1位、鈴木が3位の同期入団でもある。プロ入り後はやや伸び悩んだ藤岡に対し、ベストナインを2度獲得するなどチームの顔になった鈴木だが、「自分がプロ野球に入れたのは、あいつがすごく頑張ってくれたから」と、大学野球選手権Vに導いてくれたエースへの感謝を口にした。「今までは紅白戦くらいしかなかった」という真剣勝負は、内野ゴロ2つ。ここは藤岡に軍配があがった。

 藤岡を打ち崩し、岡も活躍と、理想的な勝利を手にした井口監督は「相手が相手だけに、みんな負けられないって気持ちだった」と会心の笑みを浮かべた。3連戦も勝ち越し決定。「負けられない」試合での白星は、5連敗で5位まで沈んだチームが再浮上するきっかけになるかもしれない。

 試合直前に相手チームにトレードなんてこともあるドライなメジャーに比べ、日本のトレード事情はまだネガティブなイメージがある。でも、ドライじゃないからこそ生まれる人情ドラマも日本のプロ野球の魅力のひとつではないかと、改めて感じた試合だった。

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