•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

北照、不祥事から生まれ変わり愛されるチームへ…「小樽の雄」の今

2018年9月11日17時0分  スポーツ報知
  • 北照ナインは常に道具を整頓して並べていた
  • 今年7月、5年ぶりの甲子園出場を決め、大声援に応える北照ナイン

 派手さはないが、応援したくなる。今夏の全国高校野球南北海道代表・北照(5年ぶり4度目)は、そんなチームだった。世間の注目は史上初2度目の春夏連覇を果たした大阪桐蔭、金足農の右腕エース吉田輝星(3年)に集まったが、小樽の雄・北照にも、心を引き寄せられる魅力があった。

 「皆様からお許しいただけるか分かりませんが…」。7月。南北海道大会で優勝し、前主将の三浦響捕手(3年)が優勝インタビューで真っ先に発した言葉だ。うれしい気持ちよりも、まず口についたのは、同校の過去の過ちだった。

 2016年8月。部内暴力などの不祥事で活動を自粛した。現3年生が入学して間もない時期。大河恭平部長(31)は「『北照のバッグ』を持って通学するのもつらかったと思う」と当時を回想する。甲子園を目指して入学したのに、全体練習ができない。ナインは自主練習で汗を流し続けるしかなかった。ある選手は、自宅の庭で母親にバドミントンのシャトルを上げてもらった。エース左腕の原田桂吾(3年)は近所の公園の鉄棒で懸垂を繰り返し、上体の筋力を鍛え抜いた。

 11月に処分が解けると、学校のグラウンド一面を覆う大量の落ち葉拾いから再スタート。汚れ果てた部室とトイレのペンキを塗り直した。野球ができるのは当たり前じゃない。誰もが心から、そう思っていた。当たり前のことかもしれないが、北照の練習取材に行くと、全部員が足を止めて一礼する。「おはようございます」「ありがとうございます」。一つ一つのあいさつを、ハッキリと大声で、丁寧に言う。こちらが背筋を正す、そんなやりとりが生まれるのだ。

 道具を大切にする姿勢も目を引く。どんな時もバットやグラブ、バッグはきれいに整頓され、試合では四球で出塁すれば、全打者がバットを投げずに一塁線上に置いてから一塁へと向かった。「甲子園は呼んでもらうところ」。凡事徹底がナインの結束をも高めた。

 そんなナインには、気付けば“大応援団”が味方していた。南大会前に約40人の女子応援部が発足。野球部と関係のないクラスメートが、選手一人一人に手作りのお守りを作って手渡した。南大会決勝には、北照に敗れた高校の生徒が集結。札幌円山球場の応援席は、強豪・駒大苫小牧の大応援団に見劣りしなかった。全校生徒200人は参加56校の中で最少だったが、甲子園1回戦・沖学園(南福岡)との初戦には、地元・神戸の吹奏楽部が駆けつけ、北海道を代表する「北の国から」や小樽・潮まつりの伝統曲「潮音頭」を合奏し、ナインを後押しした。

 2―4。接戦を勝ちきれず、大粒の涙を流した。それでも、“ゼロ”から始まったチームを、ここまで大きく変えることができた。試合翌日の選手の表情には、充実感が漂っていた。

 代は変わり、センバツ切符を争う戦いが始まった。秋季全道大会小樽地区予選は11日に開幕。北照は12日に初戦を迎える。甲子園でベンチ入りしていた選手は伊藤陸二塁手(2年)のみだが、グラウンドには、引退した3年生が今もなお練習に参加し、卒業までの短い時間を後輩に割いている。

 上林弘樹監督(39)が「厳しいかもしれない」と言うように、戦力は大きく落ちる。ただ、高校生による、高校野球。3年生が作り上げた、新しい伝統もある。秋も、なんだか期待感を持ってしまう。技術だけでは勝てないと、北照が、教えてくれたからだ。(記者コラム・宮崎 亮太)

コラム
注目トピック
今日のスポーツ報知(東京版)