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引退試合で感じたロッテ・大隣の人柄

2018年10月10日16時0分  スポーツ報知
  • ロッテ・大隣(左)は引退試合でソフトバンク・工藤監督からねぎらわれた

 涙はなかった。10月3日、ヤフオクDのソフトバンク―ロッテ戦で行われたロッテ・大隣憲司投手(33)の引退試合。大隣は、工藤、井口両監督から花束を渡されても涙をこらえた。両チームのナインから胴上げされたあと、ソフトバンクに同期入団し、涙で顔をくしゃくしゃにした高谷に「泣きすぎですよ」と笑顔で突っ込みも入れた。大隣らしい最後のマウンドだった。

 思い返せばあの日もそうだった。ソフトバンク時代の2014年7月27日。黄色靱帯骨化症の手術から1年以上のリハビリ生活を乗り越え、422日ぶりに白星を手にした。プロ野球界で黄色靱帯骨化症の手術を受けて復帰したのは、オリックス・宮本大輔(引退)に次いで2人目。白星をマークしたのは大隣が初めてだったが、この時も涙はなかった。

 つらいはずのリハビリ中も、決して弱音ははかなかった。それどころか病気で感覚がマヒした左足の状態について「鉄板の上に足を置いてジューって焼けても何も感じないと思いますよ」などと、笑い話のように話していた。周囲に心配をかけまいとする気遣いだった。

 プロ通算141登板で52勝50敗、防御率3・36。順風満帆な選手生活ではなかったが、チームメート、ファンに愛され“異例”のビジターでの引退試合が実現した。11年間在籍した古巣のソフトバンクサイドも粋な演出を用意。まるでホームゲームのように在籍時の入場曲が流れ、スタジアムDJによる「ピッチャー、大隣憲司!」のコールが、マウンドに上がる大隣の背中を押した。引退試合に大隣の人柄が集約されていたように感じた。

(記者コラム・戸田 和彦)

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