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滝川西、震災被害のむかわ町でボランティア「逆に勇気をもらった」

2018年10月10日12時40分  スポーツ報知
  • 滝川西ナイン(1日の札幌大谷戦)

 今でも、テレビに映る被災地を見ると「気になってしょうがない」という。秋季北海道高校野球大会に出場した滝川西・小野寺大樹監督(42)は、寂しそうな表情でそう振り返った。9月6日に北海道を襲った胆振(いぶり)東部地震から約1か月。震災直後にナインで向かったむかわ町の農家が、今も気に掛かっている。

 北海道大会開幕直前の9月22日。札幌と旭川の中間に位置する滝川市から、ナインはチームバスで道南のむかわ町に向かった。小野寺監督が2009年までの8年間、鵡川高で部長などを務めた縁から「何か力になれることはないか」と、起こした行動だった。震源地に近い同町は最大震度6強を記録。目的地に近づくに連れて、選手らは言葉を失った。

 倒壊した家屋に、道路は陥没。主将の吉田尚平(2年)は「想像していたよりも、ひどい状況だった」と振り返る。野菜農家のビニールハウスは鉄骨が倒壊。断水の影響で収穫間際だった野菜もほぼ全滅状態だった。選手たちは手分けして、農家のビニールハウスも、骨組みから外して撤去。すでに、売り物にならないと聞いていた野菜や収穫物だったが、誤って踏みつけてしまい、頭を下げる選手もいたという。農家の人たちが苦労して作った野菜や収穫物だけに、申し訳ないという思いがあったようだ。

 「大切に育ててきた野菜が、もう売り物にならない。苦しさしかなかった」と吉田主将。午前10時から始めた作業も、午前に終わったのは1棟のみ。必死にペースを早め、日が暮れる頃には6棟の作業が終わった。それでも、半分以上の作業が残る。選手らは翌日に検定試験が控えていたため、泣く泣く帰宅することになった。小野寺監督は「作業を残して帰るのが、本当に心苦しかった」と言う。

 作業後には、農家さんから「ありがとう。全道大会、頑張ってね」とエールをもらった。苦しい状況の中で、被災地の人々は必死に前を向く。その懸命な姿に、吉田主将も「本当は僕らが勇気を与えるために来たのに、逆に勇気をもらった」。全道大会では初戦(2回戦)で優勝した札幌大谷に2―5で惜敗。だが、終盤8回に1点を返すなどの意地は見せた。

 「勝って勇気を与えたかったんですが…」と吉田主将。その思いはきっと、農家さんにも届いたはずだ。(記者コラム=北海道支局・清藤 駿太)

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