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両親が明かす大阪桐蔭・根尾の素顔と秘話

2018年10月31日16時0分  スポーツ報知
  • 中日からドラフト1位指名を受けた大阪桐蔭・根尾

 先日、中日にドラフト1位指名された大阪桐蔭・根尾昂内野手(18)の両親に取材をさせてもらう機会に恵まれた。実家近辺には、2016年に大ヒットした映画「君の名は。」のモデルになったJR高山本線の飛騨古川駅や図書館、バス停などがある。通っていた河合小は1学年約10人の小さな学校だった。

 根尾は、10月1日現在の人口が958人という飛騨市河合町で生まれた。保育園時は「バスケットボール選手になりたい」と言っていたという。診療所長の父・浩さん(52)と母・実喜子さん(51)は飛騨市の勤務医。姉・春陽さん(23)は看護師、兄・学さん(20)は岐阜大医学部に在籍している。「(根尾に)医者になりなさいと言ったことはない。中学2年の春には『野球一本でいく』と、本人は決めていたと思う」と浩さん。類いまれな身体能力の高さは、小学生時代から野球、スキー、陸上の「三刀流」でやってきたからだろう。

 小学1年から地域のスポーツ少年団で陸上とスキー、2年から兄の影響で野球を始めた。学さんは斐太(ひだ)高のエースで、2015年夏の岐阜大会は高橋純平(現ソフトバンク)を擁する県岐阜商を準決勝で破り、決勝まで進んだ。根尾だけが特別ではなく、生まれ育った地域では、みんなが同じように、いろんなスポーツに親しんでいた。小学5年時には陸上のジュニア五輪に出場。5年男子の100メートルで5位に入った。陸上は中学2年の夏まで続けた。

 スキーは、インストラクターの資格を持っていた両親の手ほどきを受けた。幼少時は、浩さんに抱っこやおんぶをされながら滑った。中学2年時の全国中学校大会の男子回転で優勝。翌3月にイタリア・トッポリーノで開催された国際大会に出場し、U16男子大回転で44位だった。「野球のことが頭にあって、それどころじゃなかったみたいです」と、浩さんは明かした。

 国際大会期間中に、中学硬式野球の日本一を決める「ジャイアンツカップ」の予選があり、根尾が不在だった飛騨高山ボーイズは敗れた。主将の責任感からか、出場資格があったスキーのジュニア五輪を辞退。「クラブ(飛騨高山ボーイズ)に迷惑をかけられない」と男気を見せ、ボーイズリーグの全国大会予選に出場することを選んだ。国際大会を最後にスキーはやめた。帰省時は「スキー場に行ってみたい」と言うものの、ケガを避けるため、やめてからは滑っていない。

 根尾の特長として両親が挙げたのは「時間管理のうまさ」だ。「野球をやりたいから、学校で宿題を終わらせて帰ってきた」と実喜子さん。浩さんは「睡眠時間を取りたいというのがあって、9時半~10時には寝ていた。自分の好きな時間が欲しいために、集中して勉強をしていた」と振り返った。

 父が驚いた出来事がある。昨年末、大阪桐蔭高を中心とした大阪府選抜で台湾遠征をする前に、保護者も参加した説明会があった。根尾はスケジュール表をパラパラッと見ただけ。「この日は何時間眠れるとかを頭に入れてしまっていた。一番大事な睡眠時間をどれだけ取れるのかを把握して、そこから練習や移動の時間を調整する。『すごいな』と思いましたね」

 浩さんによれば、時間管理は陸上やスキーで培われたものではないか、という。陸上はスタート時間やウオーミングアップ時間が日によって違い、スキーも降雪の状況やコンディションによって、1~2時間も待たされることがある。「時間管理は厳しいというか、うまい。いろんなことを想定しながら準備する癖がついてんでしょうね」と、父も舌を巻くほどだ。

 「昂」という名前は、漢字1文字の父と兄にちなみ「元気に前や上を向いて伸びていけるように」という願いを込めて付けられた。初めて甲子園で見た高校野球が、2006年夏の早実と大阪桐蔭の2回戦。斎藤佑樹が中田翔(ともに現日本ハム)から3三振を奪い、11―2で早実が勝った試合だ。「目がギラギラで見ていました」と浩さん。大阪桐蔭に進学したのも何かの縁だろう。

 根尾の文武両道ぶりは、奥ゆかしい両親の教育があったからこそ、と取材を通じて納得がいった。

 余談だが、10月中旬に大阪桐蔭高で体育祭が行われ、根尾は全校生徒の前で、日本ハムに1位指名された吉田輝星(金足農)の「シャキーン」ポーズを披露したという。たまに見せるおちゃめな一面も彼の魅力。ドラフト会議から1週間がたつが「巨人に入っていれば…」という妄想が止まらない。(記者コラム・伊井 亮一)

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