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名スカウトが明かす「3巡目指名の丸佳浩が世代トップランナーに躍り出た理由」

2018年12月3日12時0分  スポーツ報知
  • 苑田スカウト統括部長は広島の歴史を築いてきた名スカウトだ

 彼は決して最初から、世代のトップランナーだったわけではない。丸佳浩のことだ。まだ「大学・社会人」と分離開催されていた、2007年の高校生ドラフトを振り返る。その年の高校生「BIG3」は大阪桐蔭・中田翔、仙台育英・佐藤由規、成田・唐川侑己の3人。丸は1巡目ではなく、3巡目指名だった。そこからどうやって、2年連続セ・リーグMVPの強打者に進化したのだろうか。

 「プロでも絶対にレギュラーを取れる選手になると思っていました。でも、2年連続でMVPに輝く選手になるとはねえ。それはもう、本人の努力です。本人を一番褒めてあげたい」

 声の主は広島の苑田(そのだ)聡彦スカウト統括部長。過去には小早川毅彦、江藤智、金本知憲、黒田博樹、新井貴浩らの入団に関わった名スカウトだ。73歳になった今でも、現場第一主義を貫く。卓越した「目」は昨年末にはNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも特集された。苑田部長は丸のどんな点に惚れたのか。

 「千葉経大付のエースとして、3年のセンバツでも144キロを投げていましたが、私は2年の秋頃から『いい野手になるぞ』と見ていました。足も速く、肩も強い。打撃ではテイクバックがやわらかく、タイミングの取り方がうまかった。甲子園にも2度出ていて、名前も知られた選手でしたが、高校に調査に行くと他球団のスカウトはそれほど熱心という感じではなかった。ドラフトが終わってから、巨人の長谷川君(国利・現スカウト部長)がかなり調査していたと聞きました」

 こいつはモノになる-。苑田部長がそう確信したのは、丸には練習への強い意識と、それを可能にする強靱な肉体があったからだ。

 「入団後、印象に残るのは練習する時にキツそうな顔をせず、本当に楽しそうに1時間でも2時間でもバットを振っていたこと。そしてあれだけ練習をやっているのに、故障がない。だから本人には冗談交じりに言うんです。『こんなにいい選手になったのは、お前だけの力じゃないぞ。お父さん、お母さんに頑丈な体に生んでもらったんだから、感謝せんといかん』って」

 今回、巨人がFAで丸獲得を成し遂げた要因の一つには、原辰徳監督が直接交渉に臨み、自らの言葉で熱意を伝えたこともある。不思議な因縁であるが、苑田部長は三池工時代、あの原貢監督の教え子だった。

 「自分が見いだした選手が、来季から辰徳君のもとでプレーすることになるんだね…。先日のドラフト会議でも、スカウト控室で辰徳君があいさつに来てくれて。『来年はカープに勝ちますから』と言うから『勝てるなら、勝ってみいや!』と笑って話したんですよ」

 「プロ野球人・丸」の「生みの親」としては当然、カープを離れることに寂しい気持ちもある。それでも新天地でのチャレンジを決断した愛弟子に、こうエールを送った。

 「巨人の独特の雰囲気に負けないように頑張ってほしい。丸だったら、大丈夫だと思います。人間性が良くて、みんなに好かれる性格ですから。けがには気をつけて、1年でも長くプレーしてほしいね」

 今年のドラフト会議で指名された高校生は育成をのぞき、計37名。そのうち1位で指名されたのは大阪桐蔭・根尾&藤原、報徳学園・小園、金足農・吉田、天理・太田の5人だけだ。メディアは彼らの動向を中心に報道する。しかし、2位以下の誰かが10年後、世代のトップランナーに躍り出ている可能性も十分ある。

 よき指導者や先輩との出会いに恵まれ、頑丈な肉体を駆使して豊富な練習量をこなし、「逆転」する男は一体誰になるのだろうか。フラットなまなざしで、今後の出世競争を見届けていきたい。(野球デスク・加藤 弘士)

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