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「じゃない方の坂本」巨人の育成・坂本工宜投手よ、関西学院大学の星になれ

2019年2月19日16時58分  スポーツ報知
  • 巨人・坂本工宜

 みなさんは関西学院大学の野球部出身と聞いて、プロ野球選手ならだれを思い浮かべますか。同じ関西の大学でも、立命館大なら元ヤクルトの古田敦也捕手のようにピンとくる選手がいると思うが、関西学院大にはいないと思う。

 そもそも関学体育会の大看板は、何度も大学日本一に輝いているアメリカンフットボール部。そのアメフト部でさえ、定期戦を行っていたN大学の前監督から「かんさい、がくいんだいがく」と全国に間違った呼び名で呼ばれ、謝罪される始末。関西での知名度はあっても、野球部はおろか関東では大学名そのものが全然知られていない。それが東京で働き始めて15年間で感じた私の母校、「かんせい、がくいんだいがく」の印象だ。

 そんな見方を変えてくれるかもしれない選手と、1月27日から2週間以上取材した巨人の宮崎春季キャンプで出会うことができた。坂本工宜(こうき)投手(24)。ある日突然、巨人の坂本勇人選手(30)の表記が「坂本勇」に変わる原因となった「じゃない方の」坂本選手だ。

 関西学院大学の高等部までは硬式野球部に所属するも、大学では使用するボールが違う準硬式に「転向」(バットも金属)。ここで成績を残し、巨人から2016年の育成ドラフト4位で指名された異色の存在だ。この育成右腕が1軍スタートに抜てきされ、平成最後の宮崎キャンプで躍動した。

 まずは2月3日。球団史上最速実戦となった紅白戦に紅組の先発としてマウンドに上がると、2回を投げ無安打無失点の好投。1軍レギュラーでもある吉川尚、岡本から三振を奪うなど、176センチの体を目いっぱい使ったスライダーを武器に首脳陣へのアピールに成功した。11日に行われた今キャンプ3度目の紅白戦でも、紅組の2番手として登板。再戦となった岡本を一邪飛で再び凡退に仕留めるなど、失点は北村の一発のみで3回を投げ1失点。支配下の若手有望株・高田らが2軍降格で宮崎残留を命じられる中、育成ながら見事に沖縄で行われる1軍の第2次キャンプ切符を勝ち取ってみせた。

 関西学院大学の新聞サークルに所属していた記者の学生時代、関学野球部の出身といえば、オリックスや米メジャーリーグのセントルイスカージナルスなどで活躍した田口壮さん(現オリックス1軍野手総合兼打撃コーチ)が唯一にして史上最高のOBだった。

 あれから15年。日本ハムの宮西尚生投手(33)は昨季まで通算294ホールドのNPB最多記録を保持し、日本屈指の救援左腕の地位を確立。ロッテでは荻野貴司外野手(33)も1軍で活躍している。ちなみに2人は関学野球部時代の同期生だ。坂本工宜はこの2人に続く存在になれるか。OBとしては期待せずにはいられないのだ。

 ただ、巨人の育成選手の道が険しいことも確かだ。基本、育成契約選手の在籍期間は3年間。その間に支配下登録されなければ3年後に一度自由契約となり、球団側に再契約の意思があれば再度3年間のチャンスが与えられる。北海道総局勤務時代に旭川実の速球派右腕として2年生の春から3年生の甲子園登板まで取材した成瀬功亮投手(26)は、球界の育成選手としては異例の8年間にわたって巨人で踏ん張ったが、昨年末に戦力外通告を受け、現在はジャイアンツアカデミーのコーチとして初めての「社会人生活」をスタートさせた。

 16年に入団し17、18年シーズンを過ごしてきた坂本工に残された時間は今季のみ。本人にも勝負の年の自覚があるのか、宮崎滞在中に2日あった休日はいすれも返上で練習。担当記者によると、キャンプだけでなく年間を通して完全休養日を設けずトレーニングを続けているそうだ。

 最後に、わが関西学院大学の出身で最高の成功者ともいえるオリックスの宮内義彦オーナーが9日にチームの宮崎・清武キャンプ視察時に行った訓示の一部がスポーツ新聞紙面に掲載されていたので紹介する。「とにかくこのキャンプで、1段上げるべきものをきっちり手に入れてもらわないと。みなさんの選手生活が今年が最後と思ってやる覚悟がないとキャンプも意味はありませんよ」。さすが、キビシいお言葉。この言葉を坂本工選手に贈っている場合ではない。私もこの言葉を肝に銘じて、巨人沖縄キャンプを取材します。(記者コラム・泉 貫太)

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