メダルなき優勝の立役者 大阪桐蔭・小谷、データ班としての葛藤とうれし涙

2018年8月28日12時0分  スポーツ報知

 第100回全国高校野球選手権記念大会は熱戦に次ぐ熱戦の末、大阪桐蔭が史上初となる2度目の春夏連覇を達成し、幕を閉じました。スポーツ報知のルーキー女性記者が初の甲子園取材でネット裏からアルプススタンドに至るまでフル稼働。汗と涙にまみれて追いかけた真夏の一瞬を「見た」コラムで振り返ります。

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 宿舎で撮影を受けるユニホーム姿の選手たちの胸には、金色のメダルが輝いていた。途中、申し訳なさそうな表情を浮かべた制服姿の一人の部員が最後列右端に加わった。史上初となる2度目の春夏連覇を陰から支えた大阪桐蔭のブレーン・小谷優宇(ゆう・3年)だ。登壇と同時に端正な顔立ちがうれし涙でゆがんだ。こみあげる滴を小麦色に焼けた左腕で拭った後に、笑みをみせた。

 中学では投手として最速144キロを記録。日本選抜で米国遠征を経験するなど華々しい経歴を持つが、2年夏に右ひじを故障。最後の夏にマウンドを踏む夢はかなわず、対戦相手の分析担当と記録員としてベンチ入りした。

 優勝を手にした夜。オレンジ色の光が充満している宿舎の一室。記者陣に混じり、仲間の写真撮影を眺める小谷にコーチが集合写真に入るよう促した。不安げな表情で見つめ返した後、メダルのない胸元に視線を向けた。それでもと、コーチは肩を押し、陰から光の下に一歩ずつ歩む苦労人の背中を目で追った。そのやりとりは、データマンの今までの努力を物語る以外の何ものでもなかった。

 勝負の世界には常に勝者と敗者、ひのき舞台に上がる者と支える者がいる。後者の方が人生において得るものがあると思うし、そうであって欲しいと私は願う。

 準決勝で白星を飾った夜の取材で、小谷を取材した。監督からデータ班として任命された日から、今日までの心の葛藤は計り知れない。しかし、「データ分析の経験は今後の役に立つと思います」と気丈に答える表情が、いまだに脳裏に焼き付いて離れずにいる。

 大学に進学する小谷は、新天地でエースを目指す。今夏は記録員として、だがそう遠くない日に選手として宙を舞うと信じている。(伊藤 明日香)

 ◆伊藤 明日香(いとう・あすか)1994年、米ニューヨーク市生まれ、杉並区育ち。24歳。日大卒。日大では政治研究会に所属。ビール党。休日にはクラフトビアを一人で堪能するなど趣味は飲み歩き。

週刊報知高校野球
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