【東東京】“平成元年日本一”の帝京、平成最後はベトナム国籍トラン先頭弾で発進

スポーツ報知
1回、先制本塁打を放ったトラン・ヒー・キエン〈9〉を迎えるベンチの帝京ナイン(カメラ・相川 和寛)

◆第100回全国高校野球選手権記念東東京大会▽3回戦 帝京9―0海城=7回コールド=(16日・神宮)

 7年ぶりの出場を目指す帝京(東東京)が、公式戦で初めて1番に座ったベトナム国籍のトラン・ヒー・キエン右翼手(3年)の初回先頭打者弾など10安打9得点で7回コールド発進。平成最初(1989年)の夏の甲子園を制した名門が、平成最後の夏返り咲きに向けて好スタートを切った。南埼玉では、巨人・斎藤雅樹投手総合コーチ(53)の母校・川口市立(今春から統合で市川口から校名変更)が、埼玉栄のプロ注目右腕・米倉貫太(3年)を攻略。5年ぶりの8強入りを決めた。

 名門の完全復活を告げる一発が、試合開始早々に放たれた。初回裏、先頭のトランが直球を右翼席に運んだ。「チームに勢いをつけようと思って打席に入った。打った瞬間に入ったと思いました」。公式戦で初めて1番に座り、公式戦初アーチが初回先頭打者弾だ。2安打の新リードオフマンが7回コールド発進の勢いをもたらした。

 両親がベトナム出身。自身もベトナム国籍だが、生まれも育ちも日本。日本語の方が得意だという。ベトナムではまったくなじみのない野球を始める際は、両親の反対にも遭った。最後の夏に名門の背番号9を背負い、「いつもお世話になっている母に本塁打を届けられて良かったです」。スタンド観戦の母・トリンさん(42)に頭を下げた。

 名将の采配も的中した。春は中軸を打っていたトランを6月から1番に起用。甲子園通算51勝の前田三夫監督(69)は「何となくかな」とひょうひょうと語ったが、「チームでいちばん最初に打席に入る1番は、主軸より責任が大きい。そこに置いてくれるのはとてもうれしい」とトラン。巧みに闘志を引き出してみせた。

 さらに、二塁に小松涼馬、遊撃に沢石淳平という1年生をレギュラーに抜てき。帝京史上初という1年生二遊間コンビで初戦に臨んだ。指揮官は「1年生を使うと活力になる。チームの底上げのためにも、非常に効果的だね」とほくそ笑んだ。

 甲子園で数々の栄光を築き上げた東の名門だが、6年間も聖地から遠ざかっている。松重恒輝主将(3年)は「注目される100回大会。もう一度、強い帝京を復活させたい」と闘志。平成最後の夏に、もうひと花咲かせてみせる。(増田 寛)

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