【広島】豪雨で10日遅れ 2校での開会式で復興の誓い 安芸南・田代主将、選手宣誓全文

スポーツ報知
開会式で黙とうをささげる千代田と広陵の選手たち

◆第100回全国高校野球選手権記念広島大会(17日・みよし運動公園野球場)

 西日本豪雨で最も大きな被害を受けた広島大会が、当初の予定より10日も延びて全国で最も遅く開幕した。2校のみが参加した開会式は、安芸南・田代統惟(とうい)主将(3年)の選手宣誓と優勝旗返還だけが行われた。岡山では、今秋ドラフト候補の倉敷商・引地秀一郎投手(3年)が1失点13奪三振で完投。サヨナラ打も放ち、甚大な被害を受けた地元に初戦白星を届けた。西東京では早実が4回戦で敗退した。

 参加88校のうち、2校しかいない開会式が被害の大きさを物語っていた。広島大会が10日ずれ込んで開幕した。1分間の黙とうをささげた後、開幕試合に出場する昨年の代表校・広陵と千代田だけで、選手宣誓と優勝旗返還が行われた。選手宣誓を務めた安芸南の田代は「野球ができることに感謝したかった。大変な被害に遭った地域の光景を思い出しました」と思いを込めた。

 6日からの豪雨により、広島は全国で最も深刻な被害を受け、100人以上が犠牲となった。田代の住む広島市安芸区矢野南でも、大規模な土砂崩れが相次いだ。選手宣誓では「7日の朝、私が見た景色、矢野が矢野でなくなったように感じました」と赤裸々に告白。付近でボランティア活動をした際には土砂に全て埋まった家を目撃し「本当にこんなことになってしまうんだ」とショックを受けた。14日まで毎日、土砂の撤去作業を手伝った。

 県高野連も難しい判断を迫られた。豪雨で県内各地の交通網が遮断された。開幕日を当初の7日から11日に延期。さらに9日に被害の全容が判明すると、緊急の理事会を開いた。16日に各会場への交通網、ライフラインが復旧見込みであることから、過密日程も考慮して17日開幕、28日決勝に変更した。

連日撤去作業 第100回大会を記念して、当初はベンチ外の3年生部員も含む総勢約2000人がマツダスタジアムで入場行進を行う予定だった。しかしこの日は同球場の予定が合わず、県中部にある、みよし運動公園野球場での開会式となった。選手の移動を考慮して、入場行進も中止された。

 田代は15日から練習を再開し、20日に初戦(対戦相手未定)に臨む。「今は野球に集中しています」と全力プレーを誓った。(牟禮 聡志)

 ★安芸南・田代主将 選手宣誓全文

 今日、ここに大会が開会されること、野球ができることに感謝します。

 7月6日、記録的な豪雨が西日本を襲いました。多くの命が失われ、今も被災されている方々もいます。

亡くなられた方々に哀悼の意を表します。

 私の地元は(広島市内の)矢野です。7日の朝、私が見た景色、

矢野が矢野でなくなったように感じました。

 とにかく行動せずにはいられませんでした。その中でどうにもならない無力感も感じました。今なお

困難な状況にある仲間もいると思います。

 しかし、私たちひとりひとりにとって選手権大会は1回きりのかけがえのないものです。どんな状況も克服し、それを乗り越えて挑戦します。

それが野球だから。その積み重ねが100回を迎えました。

 今回は私たちの成長、私たちの闘う姿を見てもらう大会です。被災された方々に勇気と力を与えられるように全力でプレーします。家族、指導者、チームメイト、私たちを支えてくれた全ての人々への感謝を胸に、がむしゃらにプレーすることを誓います。

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