【秋田】金足農・吉田輝星、大谷も雄星もダルも超え東北に優勝旗

スポーツ報知
甲子園出場を決め、吉田(中央)のもとに駆け寄る金足農ナイン(カメラ・遠藤 洋之)

◆第100回全国高校野球選手権記念秋田大会 ▽決勝 金足農2―0明桜(24日・こまちスタジアム)

 みちのくの怪腕が、甲子園にやってくる。秋田で決勝が行われ、金足農の150キロ右腕・吉田輝星(こうせい、3年)が昨夏代表の明桜を4安打11奪三振で完封。全5試合を1人で投げ抜き、チームを11年ぶり6度目の甲子園出場に導いた。これまで甲子園未出場ながら、侍ジャパン高校代表の1次候補にも名を連ねている逸材が、ついに全国の舞台にデビュー。第100回の記念大会で、輝く星になる。

 1年分の悔しさをボールに込めた。最後の打者を空振り三振に斬った吉田は、両手を広げて力強く歓喜のガッツポーズを見せた。昨夏、同じ決勝で敗れた明桜を4安打完封。11奪三振の力投で雪辱し、同校11年ぶり、夏の100回大会への出場を決めた。全国の舞台に立つのは、自身初だ。

 「本当にうれしい。先輩たちの分もリベンジできた」。今大会は決勝までの全5戦計43回を1人で投げ抜き、投球回数を上回る57三振を奪った。初戦の2回戦、秋田北鷹戦では自己最速の150キロを計測するなど、高校日本代表の第1次候補に恥じない、1年前とは違う姿を見せつけた。

 昨夏は「力でねじ伏せようとしていた」というが、スタミナ面に不安を残した。課題克服へ、冬場は中泉一豊監督(45)が「走りすぎじゃないの?と思うくらい、自分から走るようになった」と振り返るほどの走り込みで体力を強化。雪の中、長靴を履いての長距離走や、室内練習場でのダッシュに取り組んだ。

 下半身強化でスタミナだけでなく、球のキレも増した。女房役の菊地亮太捕手(3年)は「(ミットの)ひもはすぐ切れる。ミットも、もって1~2か月なんです」と明かすほどの球威を誇る。この一戦もスライダーなどの変化球を多く使いながら、9回2死でこの日最速タイの147キロを計測。豊富なスタミナを生かしたペース配分で相手打線を封じた。明桜の4番で今大会2発の強打者・山口航輝左翼手との対戦では、4打数無安打3三振。互いに認め合うライバル対決を制し、試合後は山口に「お前の分まで頑張る」と決意を伝えた。

 父のリベンジも果たした。金足農野球部OBの父・正樹さん(42)は現役当時、2年連続決勝で敗退。3年時は明桜の前身、秋田経法大付の前に涙をのんだ。大会中も「気を抜くなよ」と助言をくれた父に、吉田は「父を甲子園に連れていきたかった」と笑顔だ。

 聖地での目標を聞かれ、「(チーム最高成績の)昭和59年の4強を超えたい」と力強く宣言した吉田。初出場したあの夏の準決勝、KKコンビを擁するPL学園を追いつめながら、桑田真澄(スポーツ報知評論家)に逆転2ランを浴び、2―3で敗れた名勝負は語りぐさだ。狙うは東北・ダルビッシュ有も仙台育英・佐藤由規も花巻東・菊池雄星も大谷翔平も届かなかった、東北勢初の深紅の優勝旗。みちのくの怪腕が、全国の舞台で大暴れする。(有吉 広紀)

 ◆吉田 輝星(よしだ・こうせい)2001年1月12日、秋田市生まれ。17歳。幼少時に潟上(かたがみ)市へ転居し、天王小3年時に天王ヴィクトリーズで野球を始める。天王中から金足農に進み、1年夏に初のベンチ入り、1年秋から背番号1。昨夏秋田大会準優勝、今春県大会優勝。東北大会8強。176センチ、81キロ。右投右打。家族は両親、弟。

 ◇夏の甲子園で優勝経験がない県

 東北6県を含め、全国で19県(福井、岡山、熊本、長崎、鹿児島はセンバツ優勝経験はあり)。東北勢は第1回大会(1915年)の秋田中から2015年の仙台育英まで、延べ8校が決勝に進出しているが、いずれも準優勝に終わっている。

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