金足農・吉田輝星、毎回14K ギア入れ替え自在ピンチになるほど球速アップ…スカウト絶賛

スポーツ報知
14奪三振の1失点完投で金足農を初戦突破に導いたエース・吉田(カメラ・泉 貫太)

◆第100回全国高校野球選手権記念大会第4日 ▽1回戦 金足農5―1鹿児島実(8日・甲子園)

 金足農(秋田)の150キロ右腕・吉田輝星(こうせい、3年)が、今大会NO1投手の実力を披露した。走者の有無などで3段階の直球を投げ分けるクレバーな投球で、鹿児島実から14三振を奪って1失点完投勝ち。チームに23年ぶりの甲子園勝利をもたらした。大垣日大(岐阜)は、堀本洸生右翼手(3年)の逆転満塁本塁打などで東海大熊本星翔に逆転勝ち。74歳の阪口慶三監督が歴代単独8位に浮上する春夏通算38勝目。史上7校目の連覇を狙う花咲徳栄(北埼玉)は逆転勝ちで初戦を突破した。

 みちのくの新星が、初の聖地で輝いた。金足農・吉田が3回を除く毎回14奪三振。157球の9安打1失点完投で、23年ぶりの白星をつかんだ。自己採点は「30点」。今大会NO1投手が底知れぬ力を示した。

 3段階のギアを自在に入れ替えた。〈1〉走者なしで130キロ台~142キロ〈2〉走者一塁で143~145キロ〈3〉得点圏で146キロ以上。右腕はピンチになるほど本気をのぞかせた。3点リードの4回に、バックネットに当たる大暴投。「捕手まで遠く感じた。球を叩きつける感じがつかめなかった」。2死二塁となったが、直後に高め148キロで空振り三振に斬った。「低めのツーシーム、チェンジアップを見送られ、ストレート一辺倒で三振を取るしかなかった」。直球で12K。うち10個を空振りで奪った。

 巨人のスピードガンでは最速149キロをマーク。ヤクルト・橿渕スカウトグループデスクは、「阪神・藤川みたい。スピンが利いた浮き上がる直球で空振りを取れる」。パ球団のスカウトは「プロ志望届を出せば、上位候補。1位12人に入るかもしれない」と、うなった。

 厳しい冬を乗り越えた。年明けの合宿で早朝5時半から8キロ走に坂道ダッシュ。雪上を長靴で走り込んだ。球威が増して捕手・菊地亮太の左手人さし指を切り、ミットを2か月に1度交換させた。奥歯が欠けるほど踏ん張るため、マウスピースを着用。「秋田と違って蒸し暑い」と、2イニングごとにアンダーシャツ4枚を着替え、「もっと持ってくればよかった」と、大粒の汗を拭った。

 同校野球部OBの父・正樹さん(42)がシドニー五輪柔道金メダリスト・井上康生氏にひかれ、「輝星(こうせい)」と命名。同級生に「ヨッシー」の愛称で呼ばれる怪物は、「あと3イニング投げられた」。磨き上げた変速ギアで東北悲願の金メダルをつかみに行く。(山崎 智)

 ◆吉田 輝星(よしだ・こうせい)2001年1月12日、秋田市生まれ。17歳。小3から野球を始める。高校では1年夏にベンチ入り、同秋からエース。昨夏の秋田大会準優勝で、今春は県大会優勝、東北大会8強。今夏の秋田大会は全5試合43回を投げ、57奪三振は出場選手中最多。球種はカットボール、カーブ、スライダー、ツーシーム、チェンジアップ。176センチ、81キロ。右投右打。家族は両親、弟。

 ★スカウト絶賛&OBも驚く

 DeNA・吉田編成部長「センスの塊。投球に強弱をつけピンチで力を出せる。江川に似ている」

 楽天・長島スカウト部長「今年の高校生の右投手では一番。直すところがない。けん制、フィールディング、マウンドさばき、全部がうまい。センス、完成度の高さを例えるなら桑田かな」

 ヤクルト石山(06年度卒)「(吉田投手は)自信を持って直球を投げていると思う。すごくいい直球だし14三振も取ってうらやましいです」

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