「アゲアゲホイホイ」採用校は21、微減もさらに浸透…甲子園アルプス総括

2018年8月21日11時0分  スポーツ報知
  • 熱狂に包まれた報徳学園のアルプススタンド。甲子園の「もう一つの戦い」でもある

 100回大会のアルプス席は「一体化」「オリジナリティー」「多様化」がキーワード―。空前の盛り上がりを見せる夏の甲子園大会。応援席でも控え部員や吹奏楽部、応援団に一般生徒が一体となって「もう一つの戦い」が繰り広げられている。酷暑の中、出場全56校のブラバン&控え部員に直撃取材を敢行した高校野球ブラバン応援研究家の梅津有希子さんに、今夏の甲子園応援を総括してもらった。(構成・加藤 弘士)

 「アゲアゲホイホイ」(以下「アゲホイ」)とは、高校野球応援の定番だった「サンバ・デ・ジャネイロ」に合わせて「ハイヤハイヤー! アゲアゲホイホイー! もっともっとー!」などと掛け声を乗せるというもの。2014年頃、報徳学園の野球部員が掛け声をつけると関西圏を中心に広がった。16年夏の甲子園では採用校が2校だったが、17年には24校へ爆発的に増加。今夏も38%の高校が「アゲホイ」を踊り、叫んだ。

 「昨年の24校から21校になりました。今年はどの学校もこなれてきた印象です。文化祭や体育祭でも『アゲホイ』で盛り上がっていると聞きます。16年、まだこれほどブームになる前に花咲徳栄が採用した頃は、みんな恥ずかしそうにやっていたんですが、今はそんな子は全然いません」

 「アゲホイ」はなぜここまで10代の心をつかむのか。梅津さんは「一体感」をキーワードに挙げた。

 「アルプスでチアや一般の生徒に『アゲホイ好き?』と聞くと『大好き』『楽しい』といった声が相次ぎました。対戦相手が盛り上がっていると『次、ウチもやろうよ』となる。10代のテンションにマッチしているのでしょう。楽しい一体感、ですね。今は小学校や幼稚園の運動会でも採用されているみたいです」

 地方大会から各地の応援席を取材してきた梅津さんは、沖縄出身の成底ゆう子の曲「ダイナミック琉球」に大ブレイクの兆しを感じていた。出だしのソロパートを野球部員が独唱するのがポイント。昨夏の甲子園で仙台育英の部員が歌う動画がYouTubeで142万アクセス数を記録し、今夏の沖学園アルプスも85万アクセスを集めた。

 「北海道から沖縄まで、全国で演奏されていますが甲子園での採用校は7にとどまりました。でもこれは、たまたま演奏校が甲子園に出場していなかっただけです。控え部員の中で歌のうまいアルプスの選手がソロパートに選ばれて、歌いきれば『おおっ』となるし、キーの高い曲なので、外したら外したでまた盛り上がる(笑い)。定番曲『必殺仕事人』の冒頭、トランペット演奏の歌バージョンと言えるかもしれません」

 しかし、大阪桐蔭の「ダイナミック琉球」はソロを歌うことなく、吹奏楽部が一斉に演奏を始める。

 「吹奏楽部の先生に『なぜソロを歌わせないんですか?』と聞いたら『一人で歌っても聞こえないでしょうから』と話していました(笑い)。大阪桐蔭だけは最後の歌詞を『目指せ春夏連覇』としています。それを歌えるのはウチだけ!という誇りが感じられました」

 大阪桐蔭のオリジナル曲といえば強打者のみに許され、今夏はドラフト1位候補の藤原恭大の応援曲として聖地を沸かせた「You are スラッガー」が有名だが、同曲を採用した学校も目立ったという。

 「7校ありましたね。強い大阪桐蔭に憧れ、かっこいいからと野球部員の希望で演奏する例が多いです。一つの学校のオリジナル曲があれほど甲子園で演奏されるということは、今までなかった。埼玉や千葉の地方大会でもよく耳にしましたからね。強すぎて、横綱ゆえに影響力が大きい。野球部員もYouTubeでチェックして、吹奏楽部にリクエストするようです」

 今夏の野球応援を巡るさらなるキーワードは「オリジナリティー」と「多様化」だという。確かにどの高校も同じように定番曲の「サウスポー」「狙いうち」を奏でる風景は、過去のものにありつつある。

 「オリジナルを作る学校、応援のスタイルを独自に変えてくる学校が徐々に増えてきた実感があります。例えば近江は、これまで定番曲を中心に演奏していましたが、それをガラッと洋楽5曲のローテーションに変えてきました。ピッドブルのラップが原曲の『FIREBALL』は走者が二塁に進んだ時のチャンステーマなんですが、そこでは『今日の主役はどこですか?』『近江高校!』『優勝するのはどこですか?』『近江高校!』と野球部員と一般の生徒がコール&レスポンスを繰り広げるんです」

 ラップの軽快なリズムでコール&レスポンスというのは、これまでの野球応援にはなかった光景だ。

 「吹奏楽部の先生が『FIREBALL』を提案した時、野球部員に歌詞を考えてほしいと要望したんです。そしたら、先ほどのような歌詞を考案してきた。吹奏楽部の先生は『こちらが頭に浮かばないような歌詞を考えてきて、びっくりした。頼んで本当に良かった』と感心していました。校長先生も『近江高校!』と応えていて『この歌詞を考えた野球部員は素晴らしい』と気に入っていらっしゃる。近江は秋の文化祭のテーマが『FIREBALL』になったそうです。みんな気に入ったので。センバツで初披露してわずか半年。ここまで校内に浸透するなんてすごいですね」

 昭和歌謡もアニソンもプロ野球の応援歌も…まさにジャンルレス。さらに今後、多様性は増し、オリジナリティー志向も高まるのではと梅津さんは予測する。独自の応援曲が確立された場合、「起用法」も大事になってくるという。

 「チャンステーマで使えば点も入りやすいし、それで勝つと『あの曲が後押ししてくれた。魔曲だ』となります。ここ一番の『使い所』が大事になってくるわけです。それが一番上手なのは智弁和歌山。魔曲といえば『ジョックロック』ですから。チャンスの時だけ、ここ一番で使うというルールが徹底されている。魔曲を大事に『育てる』という意識があるんですね」

 100回大会から、未来へ―。アルプス席の風景は今後、どのような進化を見せていくのか、楽しみだ。

 ◆金足農、巨人チャンテ「Gフレア」で快進撃

 梅津さんは全出場校のアルプス応援を甲子園で体感したが、特に印象に残ったのはどの高校のどの曲か。まずは旭川大高「仁義なき戦いのテーマ」だ。ヤクザ映画の名曲。初のタイブレーク試合を彩った。「ビックリしましたね。吹奏楽部は地域のイベントや老人ホームに呼ばれて演奏する機会もあるので、演奏会で年配の方が喜ぶようにと準備してきた曲だそうです。以前から演奏してきたのですが、野球応援にも使えるんじゃないかと吹奏楽部の先生が考え、始めたそうです」

 大阪桐蔭はこの夏話題のDA PUMPの「U.S.A.」で沸かせた。「大阪桐蔭は今回、100回大会だからと新曲を6曲持ってきたそうです。大阪桐蔭の吹奏楽部はみんな、すごく演奏能力が高いので楽譜を渡した5分後には吹けるんです」

 藤蔭はキャンディーズの名曲「年下の男の子」で盛り上げた。「2年生の朝倉選手が打席に立つときの曲で、曲を選ぶのは3年生の応援団長なのですが『アイツは俺たちより年下だから、この曲を選びました』と。そこに朝倉君の意思はないという(笑い)」

 金足農は巨人のチャンステーマ「Gフレア」で快進撃を成し遂げた。「最初は音量を下げて始まるのですが、その後すごく音量を上げるんです。今回の旋風をきっかけに、これからさらに広がるかもしれませんね」

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