金村義明さん甲子園決勝評論「泣くな吉田輝星、100回分の球児たちに、ありがとう」

スポーツ報知
健闘を称えあう金足農・吉田と大阪桐蔭・柿木(右)(カメラ・石田 順平)

◆第100回全国高校野球選手権記念大会 最終日 ▽決勝 大阪桐蔭13-2金足農(21日・甲子園)

 報徳学園OBで81年夏の優勝投手、金村義明さん(54)=スポーツ報知評論家=が、決勝を評論した。

 100回の記念大会にふさわしい決勝戦だった。大阪桐蔭の春夏連覇には何も言うことはないが、金足農の吉田輝星君の奮闘には本当に拍手を送りたい。

 初回が残念だった。無死一、三塁から3番の中川卓也君、そして4番の藤原恭大君を連続三振で仕留めた時は、連投で完投できると思った。次の根尾昴君に打たすわけにはいかないから四球はしょうがない。それでも大阪桐蔭は4番打者だらけ。6番の石川瑞貴君の初球にスライダーが暴投になって失点し、右中間に2点適時打を打たれてしまった。あの暴投がなければと悔やまれてならない。

 大阪桐蔭打線はほとんどがプロ級。藤原君のスイングは金本(知憲、現阪神監督)の現役時代のようだ。5回に連打を打たれた時には、吉田君は顔がほてって真っ赤になっていて、かわいそうになった。この猛暑と呼ばれる夏に、公立の星がよくぞ決勝で最強王者に立ちはだかった。私は37年前に決勝まで6試合に完投(地方大会でも5完投)したが、時代が違いすぎる。監督の降板指令は当然の指導と言える。

 伝統の夏の甲子園を、ドーム化などという議論にならないよう次の100年につなげるためにも、選手のコンディションを見極めることが一番大事だ。それでも吉田君は野手として最後までグラウンドに立ち続け、フル出場を果たした。泣くことはない。

 吉田君は低めのストレートの伸びが出場投手の中で群を抜いていた。プロでも例える選手がいない逸材だ。上背がない分、角度はないが、低めの球の伸び、切れがいい。私が始球式を務めた大会第13日目(17日)に、室内練習場でウォーミングアップしていた時に入ってきた。随分、早く練習するなあと思ってすれ違った。野球に対する真摯な態度がうかがえた。

 プロに行っても十分通用するし、プロが放っておかないだろう。フォームをいじる所は何一つない。このまま自分の信じた投球で伸びていってほしいものだ。100回記念大会はレジェンド始球式などでも盛り上がった。日本の高校野球ここにありを見せつけてくれた。100回分の球児たちに、ありがとう。(スポーツ報知評論家)

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