大阪桐蔭が史上初2度目の春夏連覇 15戦連続安打の根尾昂を、西谷監督が“さん付け”で呼ぶ理由

スポーツ報知
春夏連覇を達成し、完投した柿木(左から2人目)に飛びつく大阪桐蔭・根尾(右は中川=カメラ・石田 順平)

◆第100回全国高校野球選手権記念大会最終日 ▽決勝 大阪桐蔭13―2金足農(21日・甲子園)

 第100回記念大会で大阪桐蔭(北大阪)が金足農(秋田)を破り、史上初となる2度目の春夏連覇を達成した。今秋ドラフト1位候補の根尾昂遊撃手(3年)が5回にバックスクリーンに今大会3本塁打目を放つなど、15安打13得点で4年ぶり5度目の優勝を飾った。V5は歴代3位タイ、春夏通算8度目のVは歴代2位。甲子園決勝は春夏通じて8戦全勝で、平成最後の夏の王者に輝いた。

 右翼の青地斗舞がウィニングボールをつかむ前に、大阪桐蔭の根尾は笑顔でマウンドに駆け出した。「前の2回は(優勝を喜び合うマウンドに)行くのが遅かったので…。春夏連覇を目標にやってきたので、めちゃくちゃうれしかった」。この日の登板機会はなかったが、2勝&3本塁打は100回の歴史で2人目の快挙。二刀流の名にふさわしい活躍で、史上初2度目の春夏連覇を彩った。

 6―1の5回無死一塁、金足農・吉田輝星の高めへの140キロ直球をバックスクリーンへ運んだ。「思ったより球が強かったので、球の勢いで飛んでいった」。今大会3本塁打目で打線を再点火させた。この回打者11人で6得点を挙げ、相手エースは5回12失点で降板。「(吉田は)疲れが目に見えていたし、しんどそうなところもあったけど、代わるところまで素晴らしい投球をしてくれて、全力でぶつかることができた」。これで甲子園は4季連続出場で3度優勝し、通算19試合で無安打は1試合だけ。15戦連続安打で締めくくった。PL学園・清原和博、桑田真澄の「KKコンビ」級の甲子園の申し子と言える。

 “大阪桐蔭史上最強”の優等生だ。物理と生物が得意な理系男子。西谷浩一監督(48)は、授業中の様子として「寝ているのを見たことは一度もない」と証言する。遠征帰りのバスでは他の選手が寝ているなか、投球の極意やメジャーリーガーの本を読んだり、米大リーグのホームラン映像集を見ている。「たまに根尾が(遠征帰りの)バスで寝てたりするとホッとする。『根尾さん』も人間なんだ」と指揮官は苦笑し「本気で声を荒らげて怒ったことは一度もない」と姿勢に感服する。

 入学後、西谷監督に「野球は体でやるもんじゃない。心でやるスポーツだ」と指導を受けた。バスを降りたら一番に走り、1年生より先にグラウンドにトンボをかけ、道具も出す。朝早く起きて勉強をする。その教えを体現した。

 大会前恒例の家族への手紙には「このチームで負けたくないので最後まで勝つ。野球をさせてくれてありがとう!」と記した。約束通り、史上初となる2度目の春夏連覇に貢献した。試合後、今後について聞かれると「プロ野球に入りたいという思いはある」と宣言。投手・野手の二刀流には「どっちか、と言われたら、はっきりとなるかなと思う」と否定的で、「遊撃かな」と希望を明かした。

 「昂」という名前には、両親の「(誕生時は)エネルギーがすごくて、生命力にあふれていた。前向きにのぼってほしい」という願いが込められている。プロ野球の最高峰の舞台でも、エネルギッシュなプレーを見せる。(伊井 亮一)

 ◆根尾 昂(ねお・あきら)2000年4月19日、岐阜・飛騨市生まれ。18歳。河合小2年から「古川西クラブ」で野球を始め、古川中ではボーイズリーグの「飛騨高山ボーイズ」でプレー。中学時代にスキーで国際大会に出場した経験も持つ。大阪桐蔭高では1年夏からベンチ入り。最速は148キロ。高校通算30本塁打。177センチ、78キロ。右投左打。家族は両親と兄、姉。

 ◇個人1大会3本塁打以上 大阪桐蔭・根尾昂が今大会3発目。今大会の大阪桐蔭・藤原(3本塁打)に続き、30人目(31度目)。同一年に同一チームの2人が記録するのは、00年の智弁和歌山・山野純平&後藤仁、08年の大阪桐蔭・奥村翔馬&萩原圭悟に次いで3組目。投手で2勝しながら3発を放ったのは、00年の智弁和歌山・山野(4勝&3発)に次ぐ2人目。

 ◇個人連続試合安打 大阪桐蔭・根尾が15試合連続安打を記録。最近では箕島・嶋田宗彦(78年春夏と79年春夏)、池田・水野雄仁(82年夏、83年春夏)が、ともに出場した全16試合で安打を記録した。また、根尾は甲子園通算19試合のうち18試合で安打。PL学園の清原和博と桑田真澄は83年夏から85年夏にかけて全5季26試合に出場し、清原が18試合、桑田が19試合で安打を記録している。

 ◇チーム大会通算本塁打 大阪桐蔭が史上初となる夏通算50本塁打の大台に到達。

 ◆大阪桐蔭(大東市)1983年創立の私立共学校。生徒数2090人(女子861人)。野球部は88年に創部し、部員数63人。春は10度出場し、3度の優勝を誇る。主なOBは平田良介(中日)、中田翔(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、松村沙友理(乃木坂46)ら。

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