金足農・吉田輝星、投げ抜いた1517球「全く歯が立たなかった 完全に力負け」

スポーツ報知
決勝戦で力投する金足農・吉田

◆第100回全国高校野球選手権記念大会最終日 ▽決勝 大阪桐蔭13―2金足農(21日・甲子園)

 金足農の150キロ右腕・吉田輝星(こうせい、3年)は、2本塁打を含む5回を12安打12失点(自責11)。今夏初めて試合途中でマウンドを降り、東北勢初優勝を逃した。それでも歴代6位の大会通算62奪三振をマーク。県立の農業高が成し遂げた秋田勢103年ぶりの準優勝に、スタンドからは大きな拍手が送られた。

 とめどなく涙があふれた。100回大会の幕切れを告げるサイレンが鳴り響く中、あいさつを終えた吉田は根尾、柿木らと抱き合った。「大阪桐蔭は思い描いていたものより、はるかに上をいっていた。全く歯が立たなかった。完全に力負け。応援してくれた人に、優勝を届けられなくて悔しい」。秋田勢103年ぶりの決勝戦。悲願の東北勢初優勝をかけた大一番は、西の横綱に押し切られた。

 完敗だった。初回に自らの暴投などで3失点。5点を追う5回には、根尾に中越え2ラン。藤原には1イニング2安打で2打点を許すなど、打者11人に7安打で6失点。「どこに投げても打たれそうだった。すごい落ち着いた表情をしていて、それでも、打ってやるという強い気持ちを感じた。プロでまた対戦して、次は自分が抑えたい」。初回に146キロの直球で空振りを奪うなど沸かせたが、2人のドラフト1位候補スラッガーに痛打された。

 限界だった。異変を感じたのは4回。下半身全体に、力が入らなくなった。トレードマークの笑顔が消えた。伝令を送られ、マウンドに集まった時には、両手をひざについた。「痛みというより疲れがたまって、動かない感じだった」。5回の猛攻を浴びている時、何度も声を掛けに来た菅原天に、こう伝えた。「もう、投げられない」。5回で132球を要し、12安打12失点(自責11)4奪三振。秋田大会初戦から今大会準決勝まで全11試合で1517球を投げた右腕は、初めてマウンドを譲り右翼へ回った。

 試合後には高校日本代表初選出が発表され、U18アジア野球選手権大会(9月3~9日・宮崎)出場が決まった。マウンドにひざまずき、抜刀するような“シャキーン”ポーズでも注目を集めた右腕は、侍デビューに「小さい頃から、日の丸を背負って戦いたいと思っていたのでうれしい」。藤原、根尾ら強力打線をバックに、代表での金メダルを目指す。

 「ミラクル金農」の快進撃が終わった。継投で守備の入れ替えはあったが、ベンチ入りした3年生9人で今夏11試合を戦い抜いた。「みんな『勝つ』っていう気持ちが強かった。9人で戦えて良かった」。100回の記念大会。平成最後の夏。記憶に残る旋風を巻き起こした“みちのくのドクターK”は、静かに甲子園を去った。(青柳 明)

 ★記録アラカルト

 ◇個人1大会通算奪三振 金足農・吉田が4三振を奪い、今大会通算62奪三振。46年の浪華商・平古場昭二の61Kを抜き、歴代6位に浮上。1位は58年の徳島商・板東英二の83K。

 ◇決勝戦の大量失点 金足農・吉田が5回12失点で降板。10年の東海大相模・一二三慎太(6回13失点)以来の12失点以上で、ワースト4位タイ。最多は1920年の京都一商・安江忠之助の16失点。

 ◇大会通算投球数 金足農・吉田が今大会6試合に登板して通算881球。800球以上は14年の三重・今井重太朗の814球以来で、98年の横浜・松坂大輔の782球よりも上回った。

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