マリナーズ、大きかったカノの穴…イチロー出番あったかも

スポーツ報知
イチロー

 イチロー選手(44)が一時的に現役を退き、マリナーズの会長付特別補佐就任が発表されたのは5月3日。当時マリナーズは首位と0・5ゲーム差のア・リーグ西地区3位。17年ぶりのポストシーズン(PS)進出に向けて陣容を再編成し、7月3日時点では貯金を24まで伸ばしていた。ところが夏場以降に失速し、ワイルドカード(WC)も厳しく、PSから遠ざかっている連続シーズン記録を17まで伸ばしそうだ。今季のマリナーズを検証する。(構成・蛭間豊章、金岡美佐)

 正左翼手B・ギャメルの故障で3月に急きょ決まったイチローのマリナーズ入りだったが、レギュラーシーズンに入って15試合に出場し44打数9安打、長打も打点も0。前の日まで17勝12敗と好調なスタートを切ったマリナーズにとって、不振のイチローをベンチ入りの25人枠から外すことは、メジャー契約の40人枠から外し自由契約かウェーバーにかけなければならなかった。

 その上で他球団が手を挙げなければマイナー行きか契約解除となる。チームのレジェンドを遇するにはあまりにも冷たいということと、長年の経験からのアドバイスなども期待して球団が与えたのが会長付特別補佐というポストだった。

 試合前の練習はナインと一緒に行い、打撃練習ではバッティング投手を、ローテーション投手のブルペン投球には打席に入るなど、ナインをバックアップ。また、アドバイスも行うなど、積極的な姿勢を見せていたという。

 そのカンフル剤が効いてかチームの快進撃が続き7月3日時点ではア・リーグ西地区2位ながら55勝31敗。悪くてもWCでのPS進出なら、球団の思惑が効果を生んで、イチローも陰の功労者としてたたえられるシナリオになる予定だった。

 ところが、6月15日時点で11ゲーム差をつけていた同地区のアスレチックスがその後、56勝23敗という信じられない快進撃。一方のマリナーズは最近1か月だけでも12勝15敗で一気にペナントレースから脱落。9月4日のオリオールズ戦の試合前にはロッカーでD・ゴードン、J・セグラの1、2番コンビの口論から端を発して騒ぎが大きくなり、ゴードンがその場に居合わせた記者をロッカーから外に追い出すという記事が同日遅くに更新されたシアトル・タイムズ電子版が伝えた。同紙によると、ロッカーからは怒声が飛びかっていたとも報じた。

 そんな一幕があった後でもチームは上昇気配がなく、11、12日に本拠に迎えたナ・リーグ西地区最下位のパドレスにも連敗。敵地のエンゼルス戦で3連勝したのが精いっぱいだった。

 S・サービス監督は「我々は後半戦、落ち込んでいる。それにはいくつかの理由がある」と話すも具体的な内容は話していない。

 しかし、その理由は長年エースの座を守っていたF・ヘルナンデス投手の不調(8勝13敗)、打線では9年連続79打点以上マークしていたカノが、右手骨折と薬物使用80試合の出場停止による不在が響いたことが誰の目にも明らかだ。また、M・ハニガー外野手がオールスター戦に出場するまで18本塁打を放ったのが23試合連続本塁打ブランク。1番に起用されて息を吹き返したものの時すでに遅しの感があり、16本打っていたK・シーガー三塁手も5本に激減するなど中軸が後半戦に一気に落ち込んだ。

 そんな主軸選手の不調になった要因とは別に、7月6日に、M・ディポトGMの契約を延長、その2週間後の20日にはS・サービス監督の契約延長というチーム全体の気の緩みも失速の一因とも一部で指摘されている。

 結果的に計85試合休むことになったカノ不在の二塁には、今年外野にコンバートされたばかりのゴードンが回ったために、レイズから外野のD・スパンを補強した。もし、カノの故障がもう少し、早ければイチローがグラウンドから離れることはなかったかもしれない。

 マーリンズ在籍の昨季は、メジャー新記録の109試合もの代打起用があったが、その理由は、59本塁打、132打点のG・スタントン、37発124打点のM・オスナ、18発81打点のC・イエリチと盤石名外野トリオがそろっていたため。それを考えると、キャンプ合流が遅く調整遅れが目立った今季のイチローをもう少し長い目で5番目の外野手として置いていれば、シーズンを全うしていた可能性は高かったのではないか。

 イチローには来年3月に東京ドームで開催されるアスレチックスとの開幕2連戦に出場する可能性がある。今季の練習継続はそのカムバックのためでもあるとされている。その2試合だけで正式にユニホームに別れを告げるのか、それとも現役を続行するのか大注目となるはずだ。2012年の同じカードでの日本開幕戦ではいきなり4安打してファンを熱狂させた。別表は現時点での通算3000安打のリスト。この数字をどこまで塗り替えるのか45歳で迎える2019年開幕シリーズが待ち遠しい。

野球

×