【大谷翔平、二刀流の真実】〈2〉新ルーチン 球種や球筋メモ

スポーツ報知

 ア・リーグ新人王に輝いた、エンゼルス・大谷翔平投手(24)の今年に迫る「二刀流の真実」。第2回は打者・大谷がメジャー投手と対戦する際、膨大なデータをどう活用したのかに迫った。

 メジャー移籍で、大谷には新たな“ルーチン”も加わった。膨大なデータの活用だ。球種や球筋などの投手の特徴を事細かに記し、電話帳サイズのファイルにまとめて持ち歩いている。5号を放った5月10日のツインズ戦後に、こう明かしている。「どちらが先に進んだ一手を打てるかが大事。そのためのデータ。相手も見られることを踏まえながら傾向を出していけば、いい打席が増えると思う」

 日本ハム時代は「相手より自分のスイングをすることが大事」と決してデータ重視というわけではなかった。それでも、初対戦の投手ばかりで、今季だけで大谷は166人の投手と対戦。エ軍移籍後は打席前にベンチ内でタブレット端末「iPad(アイパッド)」を駆使し、相手投手の球筋やデータなどを研究。毎打席ごとにはロッカールームに隣接した映像室へ走り、自身の打撃を振り返る。

 シーズン終盤にはヒンスキー打撃コーチに午前中までに対戦投手の配球や傾向のデータを送るようにお願い。トラウトらが行うルーチンを取り入れ、9月は打率3割1分、7本塁打、18打点。4月に続き2度目の月間最優秀新人に輝いた。一時1割台だった対左投手にはシーズン終了までに打率2割2分2厘に上げた。

 大谷の野球に対する姿勢は同僚も目を細める。トラウトは試合中に“質問攻め”されるという。打席でのアプローチに関する質問が主で、トラウトは「かなり質問してくる。のみ込みが早く、すぐにアジャストでき、結果につなげている。特別な選手だ」と明かす。4度のゴールドグラブ賞を誇るシモンズは「自分のやるべきことをこなすプロだ。準備を怠らず、万全で試合に臨む。僕たちが彼から学ぶべき」と感服する。新たな取り組みと日本ハム時代から不変の姿勢。どちらも新人王獲得に欠かせなかった。(特別取材班)

 ◆打席増えるほど内容が良くなる

 大谷は対左投手に対して一時、打率1割台と苦しんだ。今季12勝を挙げたレンジャーズの先発左腕、マイナーは6打数2安打3奪三振。初対戦の9月4日は2打席連続三振を奪ったが、6回の第3打席で16号ソロを被弾した。「打席が増えれば増えるほど打席内容が良くなる」と警戒。アストロズで左のワンポイントとして起用されるサイド左腕、T・シップは大谷と今季3打席で対戦し、2打数1安打1四球1三振だった。「ボール球を振ってくれることを願うしかない。ストライクに投げると、非常に危険な打者だ」と話した。

 ◆Aロッド氏が敬意

 ヤンキースなどで活躍し、歴代4位の通算696本塁打を放ったA・ロドリゲス氏(現ESPN解説者)は大谷について「打席でもマウンドでも比類ない才能の持ち主。この世界で打って、投げたいという目標にチャレンジするのは並大抵のことじゃない。最も達成が困難なチャレンジだ」と敬意を込めた。仮に大谷の監督を務めたら、との問いには「僕は打者だから打者目線で見てしまう。打者としての非凡さに心ひかれるけどエースの役割を任せられる投手だからね。難しい」と話した。

 ◆NYの記者が称賛

 大谷の新人王獲得から一夜明け、受賞を争ったヤンキース勢の地元、ニューヨーク・ポスト紙のジョエル・シャーマン記者は大谷を1位で選び「ヤンキースファンには深呼吸をして考えてみてと言いたい。どうすれば100年以上も達成されなかったことを上回れるのか」とテレビ出演して語った。春先は大谷の活躍に懐疑的な見解を示し、開幕後の躍進を受けて謝罪文を掲載したヤフー・スポーツ(電子版)のジェフ・パッサン記者も1位票を投じ「大谷が新人王であるべき」と評価した。

 ◆票を投じなかった記者が理由を公表

 新人王投票で大谷へ3位までに1票も投じなかったレイクランド・レジャー紙のレイズ担当、D・スキャンロン記者が理由を公表。「故障で3分の1を欠場した」ことに加え、アンドゥハーらの活躍ぶりを高評価したという。「投票が偏っているように見えるのは分かっている」とした上で「大谷を祝福したい。他の新人よりもいいキャリアを送っている」とたたえた。

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