【イチロー会見〈2〉】元イチロー、監督は絶対無理?

スポーツ報知
試合後会見し、現役引退を発表したイチロー

 現役引退を発表したマリナーズのイチロー外野手(45)が、21日のアスレチックス戦(東京D)後に引退会見を行った。1時間22分にも及んだイチロー節は、終わってみれば午前1時23分だった。その全文を紹介していく。

 ◆イチロー会見〈2〉

 ―引退の文字が浮かんで悩んだ時期はあったか?

 「引退というよりは『首になるのではないか』はいつもあった。ニューヨークに行ってからは毎日そんな感じ。マイアミもそうだった。ニューヨークは特殊な場所、マイアミも違った意味で特殊だった。だから毎日そんなメンタリティーで過ごしていた。首になるときはその時(引退)だろうと思っていたので、しょっちゅうあった」

 ―開幕シリーズを「大きなギフト」と言ったが、こちらが大きなギフトをもらったような気でいる。

 「そんなアナウンサーみたいなことは言わないでくださいよお~」

 ―これから私にどんなギフトをくれるのか? 

 「ないですよ、そんなの。むちゃ言わないでください。本当にこれは大きなギフト。去年3月頭にマリナーズからオファーをいただいて、今日までの流れがある。あそこで終わっていても全くおかしくない状況だった。今この状況は信じられない。あのとき考えていたのは、自分がオフの間、米国でプレーするために準備をする場所が神戸の球場だが、そこで寒い時期に練習するのでへこむ、心が折れる。そんなときも仲間に支えられてやってきた。最後は今まで自分なりに訓練を重ねてきた神戸の球場で、ひっそりと終わるのかなとあの当時は想像していた。こんなのは夢のよう。これも僕にとっては大きなギフト。質問に答えていないが、僕からのギフトなんかない」

 ―今日は涙もなく、むしろ笑顔が多いように見える。この開幕シリーズが楽しかったということか? 

 「これも純粋に楽しいということではない。やはり、誰かの思いを背負うということはそれなりに重くて、そうやって一打席一打席立つことは簡単ではない。だから、すごく疲れた。やはり一本ヒットを打ちたかったし。応えたいというのは当然ですよね。僕は感情がないと思っている人はいるみたいだが、ある。意外とある。だから結果を残して最後を迎えられたら一番いいなと思っていたが、それはかなわなかった。それでもあんなに球場に残ってくれて。そうしないですが、死んでもいいという気持ちはこういうことだろうなと。死なないですけど。そういう表現をするのはこういうときだろうなと思った」

 ―最低50歳まで現役と公言していたが、日本のプロ野球に戻ってきてプレーする選択肢はなかった?

 「なかった。理由はここでは言えない。ただ、最低50歳までと本当に思っていた。それはかなわず、有言不実行の男になってしまったが、その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかなという思いもある。だから、言葉にすること。難しいかもしれないが、言葉にして表現することは、目標に近づく一つの方法ではないかと思っている」

 ―これまで膨大な時間を野球に費やしてきた。これからその時間をどう使っていくか?

 「今はわからない。多分、明日もトレーニングはしている。それは変わらない。僕はじっとしていられない。動き回っていないと。ゆっくりしたいとか全然ない。動き回っていると思う」

 ―イチロー選手の生きざまで、ファンの方に伝えられたこと、伝わっていたらうれしいことはあるか?

「生きざまでというのはよくわからないが、生き方と考えるなら、人よりも頑張ることはとてもできない。あくまでも計りは自分の中にある。自分なりに計りを使いながら、限界を見ながら、ちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの日かこんな自分になっているんだという状態になって。少しずつの積み重ねは、それでしか自分を超えていけないと思う。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、続けられないと僕は考えているので、地道に進むしかない。進むだけではないですね。後退もしながら、ある時は後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく。それは正解とは限らない。間違ったことを続けてしまうこともあるが、そうやって遠回りすることでしか、本当の自分に出会えない。そんな気がしている。自分なりに重ねてきたことが、今日のゲーム後のファンの方の気持ちを見たときに、ひょっとしたらそんなところを見ていただいていたのかなと。そうだとしたらうれしいし、そうでなくてもあれはうれしい」

 ―シンプルな質問です。現役選手を終えたら、監督になったり指導者になったり、あるいは全く違うタレントに…

「あまりシンプルではないですね」

―イチロー選手は何になるのか? 

「何になるんだろうね。そもそも、カタカナのイチローってどうなるのか? 元イチローになるのかな。どうなんだろう? 元イチローだけど、一朗ですから、書くときにどうするか。何になるか(しばらく考えて)監督は絶対に無理。これは絶対が付く。人望がない。本当に。人望がない、僕は」

 ―そうでもないと思うが。

 「いやー無理ですね。それくらいの判断能力は備えている。ただ、プロの世界というよりもアマチュアとプロの壁がどうしても日本の場合は特殊な形で存在しているので、今日をもって、そういうルールはどうなのか。今まではややこしかった。たとえば、極端な話、自分に子どもがいたとして、高校生だったら教えられないというルールですよね。それは変な感じ。今日をもって元イチローになるので、小さな子どもになるのか、中学生、高校生、大学生になるのかわからないが、そこには興味ある」

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