【イチロー引退の真実】(下)異例プランはマリナーズからの敬意

スポーツ報知
グラウンドを1周しながら大歓声に応えるイチロー

 2018年3月初旬まで所属先が決まらなかったイチローに、手を差し伸べた古巣マリナーズには深謀遠慮があった。

 1977年創立とメジャーでは新興チーム。ワールドシリーズに出場したこともない。殿堂入り確実のイチローを、09年にWソックスからFAとなっていたK・グリフィーを招いたように獲得することで、球団の歴史に厚みを加える狙いがあった。イチローも古巣からの獲得申し入れに、「シアトルに戻していただいて本当にうれしかった」と話している。

 キャンプインの遅さが影響したイチローは、故障もあってバッティングの状態が上がらなかった。打率は2割5厘にまで落ちていた5月2日、事態は動き出す。メジャーリーグが19年3月のマリナーズ・アスレチックス戦の日本開催を発表した。そこで、一度プレーをやめるも、カムバックを目指すという異例のプランが持ち上がったのだ。

 イチローも「5月にゲームに出られなくなる。あの時もその(引退)タイミングでもおかしくない。でもこの春(今年の日本開幕戦)に向けて、まだ可能性があると伝えられていたので、そこに自分なりに頑張ってこられた」。全ては日本開幕戦ありきでのシナリオができ上がった。

 ただ、そこへ向けてのマリナーズのスタンスはイチローへの確かな敬意があった。ディポトGMは「チーム内で1年間にわたって、東京でどうやって彼をたたえるのがベストかを話し合ってきた。そして試合も重要だし、勝つことも重要。だが、イチローはそれ以上に重要なんだ」と、理由を話した。引退後のフロント入り要請は、必然の流れとなっていた。(特別取材班)=おわり=

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