観察と対話、気遣い…日本ハム・栗山監督の行動に感じる清宮らナインへの「思い」

スポーツ報知
7回2死、横尾の本塁打にベンチで喜ぶ清宮(5月27日)

 張りつめた雰囲気が漂っていた。5月27日、西武・日本ハム戦(メットライフ)後のベンチ裏通路には、多くの報道陣が栗山英樹監督(57)の帰りを待っていた。最大6点のビハインドをひっくり返しての大逆転勝利に関することはもちろんだが、それ以上に注目を集めていたのはドラフト1位・清宮幸太郎内野手(19)を2軍に降格させるのか、という点だった。

 午後1時4分に試合が開始され、終了したのは午後4時48分。そこから約40分の間に、29日から始まる交流戦を前に、清宮には2軍降格が告げられた。午後5時半頃、スーツ姿の指揮官は「幸太郎を一回、向こう(ファーム)に戻すから。いまがちょうどいいタイミングなので」と説明した。

 日本ハム担当になって5か月。栗山監督が、選手との対話を重視する姿をグラウンド上でよく目にする。試合前練習をどの位値から観察し、チーム全体を把握するのかは個々の監督のやり方次第だが、栗山監督はバットを片手にグラウンド上を歩き回る。

 時には左翼フェンス際、また別の時には右翼ファウルゾーンに。そして、その先々で選手の横に立ってなにやら会話をしているのだ。指揮官は個々の選手との会話について「人に言うことじゃないから」と明かさないことも多いが、やりとりの多くが各選手を思うがゆえの助言だったり、気遣いの言葉であることは想像に難くない。

 話をベンチ裏での場面に戻す。これからまさに、清宮の2軍降格という重大な決断を報道陣に明かす直前であっても、栗山監督は選手への優しさを欠かさなかった。スーツ姿の指揮官が現れる直前、死角となっている通路の奥から声が響いてきた。どうやら監督が球団広報と会話をしているらしい。

 「俺は1人でいいからさ、幸太郎に付いていってあげてよ」

 当時、現場に残っていた球団広報は1人だけ。自分のことよりも、これから報道陣の囲み取材に対応しなくてはならないルーキーのことを案じたのだと思う。怪物と呼ばれていても、素顔は19歳の青年。球団の宝として大事に思うからこその言葉だったのだろう。

 清宮の初1軍生活は、21試合で打率1割7分9厘、1本塁打、2打点の成績でひとまず終わった。プロの世界の厳しさ、すごさを肌で感じ、多くの課題と気づきを得たはずだ。「それ(課題)はしっかり俺から話したし、コーチからも話した。自分で何をしなきゃいけないのかというのを自分で感じていた」。栗山監督は、再昇格を目指して2軍で汗を流すことになる怪物の目に宿る決意を確かに見届けていた。

 チームの将来を背負うスター候補として、期待の大きさは変わらない。「すぐに上がってくるのを待っているよ。何度も言うように、(清宮を)チームを勝たせる選手にいかに早くさせるのか。それしか考えていない」。清宮がたくましさを増して1軍の舞台に戻った時、指揮官の“思い”は報われる。(日本ハム担当・小島 和之)

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