【西武】多和田8勝も11失点の投手陣に辻監督がカツ 一周忌「森コーチが怒ってるよ」

スポーツ報知
3回2死、メヒア(手前)が左越えソロを放ち、森コーチのユニホームを掲げたベンチでナインが出迎える(カメラ・川口 浩)

 失点を重ねても、多和田の気持ちは切れなかった。背番号89を目にするたび、勝利への思いが増幅した。「何としても勝ちたい。その気持ちだけでした」。昨季1軍投手コーチを務めた森慎二さん(享年42)が急逝してから、ちょうど1年。ベンチとブルペンには、森さんのユニホームが掲げられた。6回5失点と本調子にはほど遠かったが、リードを守ってバトンを渡した。

 17年6月28日。1軍ブルペン担当だった森さんが、多臓器不全のため突然この世を去った。多和田は同日のロッテ戦(那覇)で先発していた。5回1/3を3失点。チームは延長戦の末に敗れた。訃報を知ったのは試合後だったが、勝利を届けられなかった無念さは忘れない。在りし日にたたき込まれた下半身の使い方、アイデアに満ちた練習法…全てが今につながっている。特別な思いを胸に5戦ぶり8勝目。「今日は自分の結果どうこうではなく勝てたことが全て」と実感を込めた。

 天国の森コーチに白星を―。思いは全員に共通していた。耐え忍ぶ投手陣を打線が鼓舞し続けた。今季最多18安打で4発14得点。16戦ぶり19号を放った山川は「恥ずかしくない試合をしないといけなかった。勝ったということは皆に(勝利を届けたい)気持ちがあったということ」。プロ初4安打の森は「絶対勝ちたかった。ウィニングボールを森さんに渡すために」と大粒の汗を拭った。

 この日はイースタン・ロッテ戦が行われた西武第二にも背番号89のユニホームがあった。完封リレーの2軍に続き、1軍も全員で勝利を届け、辻監督は「奥さんに贈ってあげたい」と勝利球を握りしめた。結局11失点した投手陣には「森コーチが怒ってるよ!」と、森さんに代わって奮起を促した。2位との差を1ゲームに広げ、首位を死守。その座を最後まで守り抜けば、秋に最高の報告ができる。(宮脇 央介)

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