【阪神】39歳・能見、杉内の思い背負い中継ぎで復活…担当記者が見た左腕の2018年

スポーツ報知
阪神・能見

 見事なV字回復に、勇気をもらったファンは多いだろう。「新しい発見があった。野球人生において、いい意味でプラスになった。ありがたいことに、体も元気なので…」。39歳。厳しいプロ野球の世界で、阪神・能見はたくましく生き残った。今季は開幕から3試合で0勝2敗、防御率7・53の不振。5月から1か月の2軍生活を経て、見違える姿で表舞台へ戻って来た。

 開幕投手3回、5度の2ケタ勝利をマークした先発から中継ぎへの配置転換。6月5日に再昇格すると、1度も降格せずシーズンを走り切った。救援に限れば42試合で防御率0・86と出色の働き。6月28日のDeNA戦(横浜)では、プロ野球135人目となる通算100勝も成し遂げた。

 「自分より年上の能見さんが、1軍でバリバリ投げている。すごく刺激になる。尊敬の気持ちしかないよ。本当に…」と熱い言葉を聞いたのはシーズン中のある日。右股関節手術や左肩痛から復活を目指していた1歳下の巨人・杉内だった。05年に沢村賞を受賞するなど、キャリア通算142勝。日本を代表する左腕は能見について「投手としてのシルエットがきれい。スラッとしてね。ピッチャー、という感じ。憧れはずっとある」と熱っぽく続けた。

 同じサウスポーで、高校、社会人を経由してプロ入りしたのも一緒。早くから世に出た杉内とは対照的に、能見は遅咲きだった。唯一の個人タイトルは12年の最多奪三振。シーズン最終戦に先発し、初回に2個を奪ってそのまま降板した。その時点で杉内と並ぶ172奪三振。「あれはあれでね、本当に良かったんです。スギと並べただけで十分。すごい投手ですからね」と誠実で控えめな人柄も、後輩の心を動かしたに違いない。

 13年のWBCで共闘した2人の投げ合いは過去に9試合あり、能見は0勝7敗(杉内は5勝1敗)。極めて分が悪い対戦成績にもかかわらず、能見は「やっぱりもう一度、スギには帰ってきてほしい」と願っていた。再戦が見られなくなるのは残念でならないが、リリーフ一本で挑む40歳のシーズン。ユニホームを脱いだライバルの思いも背負い、まだまだ第一線で踏ん張ってもらいたい。(長田 亨)

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