侍ジャパン・稲葉監督、巨人・丸の選出「十分ある」…インタビュー前編

スポーツ報知
色紙に「創」と記した侍稲葉篤紀監督(カメラ・関口 俊明)

 侍ジャパンの稲葉篤紀監督(46)が28日、インタビューに応じ、巨人にFA移籍した丸佳浩外野手(29)を20年東京五輪に招集する可能性を示した。柳田、秋山、筒香ら代表の外野手争いは激戦だが、丸の選出について「十分ある」と明言した。2日連続で掲載するインタビューの前編では、18年の収穫や19年のテーマ、そして清宮(日本ハム)のトップチーム初選出の可能性に迫った。(取材・構成=宮脇 央介)

 東京五輪まで約1年半。準備段階として重要な1年間を終え、侍ジャパン最大の収穫は何だったのか。普段は選手について語ることが多い稲葉監督が、珍しく自身の経験を「一番の収穫」と即答した。

 「監督として20試合を経験できたことが一番の収穫ですね。経験は非常に大事と感じました」

 トップチームでは3月の強化試合(対オーストラリア)2試合、11月の壮行試合(対台湾)、日米野球6試合。U―23では練習試合2試合、W杯本戦9試合。計20戦でタクトを振るい、采配の自信を深めた。

 「特にコロンビアでのU―23は首脳陣4人、メンバー24人という五輪に近い形で試合ができた。非常に大きかったですね」

 五輪同様、限られた数のコーチ、選手でW杯を戦った。自らサインを出し、瞬時に決断を下す貴重な経験を積んだ。

 「これまではコーチの意見を聞いて判断していたが、試合の中での動かし方、作戦、投手交代などに自分の意見が出てきた。そこが成長できたかなと思うところです」

 「学び、試し、挑戦する1年」と位置付けた18年に十分な手応えを得た指揮官は、19年のテーマを「創」としたためた。

 「来年は(五輪に向けて)少しずつチームを創っていく。試す、学ぶという2つは19年も継続してやっていきたいと思います」

 五輪前年の19年は3月にメキシコと強化試合、11月にプレミア12を戦う。選手にとっては来年中の代表入りが五輪出場への最低条件となるのか―。指揮官は首を横に振った。

 「そんなことはない。五輪は夏、シーズン中でもある。調子、ケガ…いろいろある。メンバーは正直、(直前まで)どうなるか分からないですよ」

 春先のWBCと異なり、五輪はシーズンのど真ん中で開催されるため、状態面の見極めが可能。本番の選手選考に向けては幅広い選択肢を準備しておく必要がある。例えば、稲葉ジャパンには未招集の丸が五輪の舞台に立つ可能性も大いにあるという。

 「十分、あります。よりプレッシャーのかかるところ(巨人)を選んでチャレンジする彼の姿には非常に好感が持てる。見続けていきたい選手です」

 外野は大激戦区。柳田、秋山、筒香、鈴木ら各球団の主軸に加え、外崎や上林ら若手も代表で存在感を示している。一方、秋山と筒香には来オフ米挑戦の可能性があり、五輪出場は不透明。指揮官が掲げる「スピード&パワー」に合致した2年連続セMVP男は、2020の有力候補と言える。

 「丸選手には一発で仕留める力がある。初球からスイングをかけて、仕留める能力に長けている。そして選球眼が非常にいい。追い込まれてもなかなか簡単に三振しない姿もある。足も肩もありますしね」

 多くの選択肢を用意するという側面において、来年3月のメキシコ戦では若手の登用を視野に入れている。19年にブレイクして五輪候補に浮上しうる若手や、五輪以降に主力を担う素材にまで門戸を広げ、招集を検討している。

 「3月はある程度若いメンバーを考えています。本当の意味で(若手を)試すラストチャンス。ジャパンは五輪以降もずっと続いていく。その先も見据えて、と考えています」

 指揮官が言う“次世代の逸材”の中には、清宮や安田(ロッテ)らが含まれているという。

 「その年代も含め、広い視野で考えています。ひょっとしたらこの1年半で化ける(五輪候補に入る)可能性もありますからね」【あすの後編に続く】

 ◆稲葉 篤紀(いなば・あつのり)1972年8月3日、愛知・師勝町(現北名古屋市)生まれ。46歳。中京(現中京大中京)高、法大を経て、94年ドラフト3位でヤクルト入団。05年にFAで日本ハム移籍。06年日本シリーズMVP、07年首位打者と最多安打。ベストナイン5回、ゴールデン・グラブ賞5回。08年北京五輪、09、13年WBC代表。13~17年侍ジャパン打撃コーチを経て、17年7月に侍ジャパン監督に就任。通算2213試合、2167安打、261本塁打、1050打点。左投左打。15年から日本ハムのSCO(スポーツ・コミュニティ・オフィサー)も務める。

 ◆2018年の侍ジャパン

 ▼強化試合オーストラリア戦(3月3日・ナゴヤD、4日・京セラD)

 2―0、6―0で2戦連続完封勝利。2回6Kの千賀らが力を示し、「収穫は投手陣」と総括。一方で攻撃時のサインミスもあり、反省材料に挙げた。

 ▼U―23W杯(10月19~28日・コロンビア)

 接戦を制しながら開幕8連勝で決勝進出も、メキシコとの決勝はタイブレークの末に敗れ準優勝。首脳陣4人、選手24人という五輪を想定した布陣を経験し、「いい経験ができた」。

 ▼壮行試合台湾戦(11月7日・ヤフオクD)

 試合間隔の空いた選手を中心に起用し、9回に5点を挙げたが5―6で敗戦。情報の少ない国際大会を見据え、あえてデータ分析をせずに臨み「積極的に振る中で対応することが大事」と収穫も。

 ▼日米野球(11月9~15日・東京Dほか)

 指揮官が掲げる「1点を守り、1点を取りにいく野球」を体現し、5勝1敗。投手陣が次の1点を防ぐ意識を高く持ち、粘り強い野球で終盤の逆転につなげる試合が目立った。打線では中軸を担った柳田がMVPを獲得。

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