【ロッテ】死球で嗅覚失った肘井「悔いない」 引退後は選手のセカンドキャリアをサポート

スポーツ報知
ロッテの肘井

 肘井はハツラツとした口調でプロ人生を振り返った。「1、2年でクビになると思っていたけど、5年もできた。1軍にも行けたので悔いはないです」。13年育成ドラフト1位の捕手として入団し15年3月に支配下登録された。2日後のオープン戦では公式戦初安打を放つなど幸先良いスタートを切ったかに見えたが思わぬ事態に見舞われた。

 同年9月21日のイースタン西武戦(ロッテ浦和)で相手左投手の直球が顔面を直撃。脳しんとうを起こし、鼻や口から大量出血。救急車で緊急搬送され、7時間に及ぶ大手術を受けた。顔面各所は粉砕骨折しており、整形用のプレート6枚が入ったまま。それでも底抜けの明るい性格は健在で「鼻の神経がダメになっちゃって臭いを感じないんですよ。代わりに味覚は良くなりましたね」と笑い飛ばす。ブルーチーズ、くさや、色々と嗅いでみて嗅覚が戻らないことを悟った。

 その後、大けがを乗り越えて1軍復帰も果たしたが、今季は1軍出場なし。オフに戦力外通告を受けた。しかし、不思議と「達成感」がこみ上げてきたという。「自分で自分を褒めるのは恥ずかしいですけど、やり切った。すがすがしいというか、めっちゃスッキリしています」。打席に立つのもやっとの状態から周囲のサポートと自らの努力でプレーできるまでに回復できた経験は誇りとなった。

 引退後の進路先は「プロ野球選手会事務局」。今季限りで引退した先輩の岡田がチームの選手会長を務めていた時の人脈が縁で欠員が出たポストにタイミング良く招かれた。ここで選手たちの地位向上のための活動、けがした選手たちのサポート体制作りや、「キャッチボールプロジェクト」と呼ばれる野球振興活動にも尽力することになる。また、自分のように戦力外となった選手たちのセカンドキャリアの斡旋(あっせん)も行う予定だ。

 「選手がどれだけいい環境でプレーできるか。そのサポートをしたい。絶対に選手には終わりが来る。どれだけアドバイスできるか。そのためにも勉強しないといけない。自分の経験してきたことをいろんな人に伝えたいですね」。選手生命が絶たれそうになる大けがを負いながらもグラウンドに戻った不屈の男。プロで得た大きな“財産”を持って人生の第2章へと向かう。(長井 毅)

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