加藤剛さん死去“大岡裁き”もう見られない 親友・竹脇無我さんの待つ天国へ

スポーツ報知

 TBS系「大岡越前」、映画「砂の器」などで知られ、端正なマスクと知性的な演技で人気を集めた俳優の加藤剛(かとう・ごう、本名・たけし)さんが6月18日午前10時11分、胆のうがんのため死去していたことが9日、分かった。80歳。

 所属の俳優座が発表した。本人の希望で、葬儀はすでに家族葬で執り行っており、お別れの会を9月22日に東京・六本木の俳優座劇場で開く。

 1970年に始まった「大岡越前」で、人情味あふれる“大岡裁き”を何度も見せた加藤さんが、静かに息を引き取った。

 この日、都内で取材に応じた次男で俳優の加藤頼(らい=37)によると、加藤さんが体調を崩したのは今年3月末。病院で検査すると胆のうがんが見つかり、すでに末期の状態だったという。その後も検査や治療を繰り返していたが、先月18日、家族にみとられて天国へ旅立った。

 頼が最後に話したのは亡くなる4日前の14日。15日から3日間、京都で舞台に出演することを伝えると「そうか、わかった。僕のことは心配しなくていいから、自分の頂いた仕事をちゃんと務めてきなさい」と話したという。18日に再び対面した時には、すでに意識はなかった。

 加藤さんはたばこを吸わず、酒も飲まなかった。普段から健康に留意しており、がんが見つかるまで大病を患ったことはなく、亡くなる直前まで、頭もさえていたという。28日に喪主は設けず家族葬を済ませ、遺族の希望で、お別れの会の段取りが固まってからの発表となった。

 加藤さんは静岡県生まれ。中学3年の時に上京し、都立小石川高校に進学。早大文学部演劇科では学内の劇団「自由舞台」で活躍し、68年に結婚した妻で女優の伊藤牧子(81)とも同劇団で知り合った。卒業後は20倍の難関を突破して俳優座の養成所入り。62年にTBS系ドラマ「人間の條件」の主役に大抜てきされ、スターへの道を歩み始めた。

 64年に養成所を卒業。72年には熊井啓監督の恋愛映画「忍ぶ川」で栗原小巻(73)と共演して話題に。野村芳太郎監督の「砂の器」(74年)では、暗い過去を隠して自らの立場を守ろうとする天才ピアニストを好演し、代表作となった。

 人気を不動にしたのが「大岡越前」で演じた江戸町奉行・大岡忠相(ただすけ)役。99年の第15部まで約30年間にわたり放送された。同作で共演し、私生活でも親友だった竹脇無我さん(享年67)が2011年8月に亡くなった際には、お別れの会で弔辞を読み「無我ちゃんがいないとは、どうしても思えない。今は、待っている電話がもう鳴りません」と肩を落としていた。

 年々、出演作は少なくなっていったが、16年6月には俳優座の舞台「先生のオリザニン」に出演。昨年12月には、頼とともにテレビ朝日系「徹子の部屋」に出演し、笑顔を見せていた。今年2月に公開された映画「今夜、ロマンス劇場で」が最後の作品となった。

 ◆胆のうがん 胆のうは、肝臓で作られた脂肪を分解する消化液(胆汁)を、一時的に蓄えておく袋のような臓器のこと。そこにできた悪性腫瘍を指す。胆管がん、乳頭部がんと合わせ、胆道がんと呼ばれる。初期段階が無症状のため、早期発見、早期治療の難しいがんの一つとされる。進行するにつれて上腹部(特に右上腹部)に圧迫感、鈍痛を覚え、食欲不振、吐き気を訴えることも多い。

 ◆お別れの会(家族が主催)

 ▼9月22日(時間未定)

 ▼会場 俳優座劇場(東京都港区六本木4の9の2)

 ◆加藤 剛(かとう・ごう)本名・剛(たけし)。1938年2月4日、静岡県生まれ。62年にTBS系「人間の條件」でデビュー。63年に「死闘の伝説」で映画初出演し、65年に「お前にも罪がある」で初舞台。高校時代は柔道部の主将で2段の実力。01年に紫綬褒章、08年に旭日小綬章。著書に「こんな美しい夜明け」など。大の猫好きとしても知られる。

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