「マツコの知らない世界」舞台裏 マニアックな素人ゲストの探し方とは

スポーツ報知
番組収録中、レモンサワーで乾杯するマツコ・デラックスとゲストの鈴木慶洋さん

 マニアックなゲストが得意とする分野を「―の世界」と題し、タレントのマツコ・デラックス(45)にサシでプレゼンするTBS系バラエティー「マツコの知らない世界」(火曜・後8時57分)。2011年10月に深夜帯でスタートし、14年10月からゴールデン帯に昇格した。MCを務めるマツコとのディープなトークが人気だが、ゲストの大半は素人だ。番組の進行、ゲストの選考はどのように行われているのか。収録現場に潜入し、“視聴者の知らない世界”に迫った。

 7月某日、TBS局内のスタジオで行われた本番収録は、午後3時頃から同10時半に及んだ。3つのコーナーが収録され、最後は「レモンサワーの世界」。同9時頃、一年でレモンサワーを1000杯以上飲むという自称「レモンザムライ」のサラリーマン・鈴木慶洋さん(32)が登場した。

 スタッフ約30人とカメラ5台に囲まれ緊張する鈴木さんに、マツコは「大丈夫、不安がるな」と気遣いを見せた。鈴木さんは徐々にリラックスし「レモンサワーは、スコスコ飲める」と冗舌に。「スコスコ」を連発し滑り続けると、マツコはすかさず「まだモノにしてない!」とツッコみ、笑いに変えた。10杯ほどサワーを試飲しながら、絶妙なリアクションで盛り上げた。

 2人はこの収録が初対面。マツコと10年来の付き合いがあるという総合演出の坂田栄治さん(43)によると、通常、収録前に出演者同士の顔合わせはしない。ゲストとの事前打ち合わせは何度か重ねることもあるが、マツコには概要を伝える程度。さらに、台本にはセリフがほとんど書かれていないという。ゲストのプレゼン用フリップなど一定の段取りが用意されているが、トーク内容はほぼアドリブなのだ。

 番組には、これまで約400組のゲストが出演。その8割以上が鈴木さんのような素人だ。手羽からあげ、トイレットペーパー、蚊、心霊ビジネスなど日常に潜むさまざまな「知らない世界」を紹介してきた。「世界」の奥深さに目を奪われがちだが、あぶり出されるゲスト自身の人生が“隠し味”になっている。

 その“味”を引き出すのもマツコの役目だ。そこで「セリフを決めると面白くなくなる」と坂田さん。「マツコさんはゲストの魅力を察知するのがうまいから、僕ら以上に話を広げてくれる」と絶大な信頼を寄せつつ、「マツコさんが『へぇ~』とリアクションできることを仕掛けていくには、『こうしたら、こうなるだろう』とずっと妄想し続けなきゃいけない」と裏方の苦労をにじませた。

 ゲストの多くは、ある分野について精通し、自身の人生に影響を及ぼすほどハマってしまったようなタイプ。だが、そうした魅力的な人物を探し出すのは容易ではない。

 番組では、チーフディレクターと各コーナーを担当するディレクター2人、ADら計10人ほどで構成された班を6~7班作り、企画を進めていく。ゲスト探しは、コーナー担当ディレクターが分野を決め、人脈やネット情報などを駆使して全国津々浦々を調査するケースが多く、構成作家からの提案やリサーチ会社から資料をもらう場合などもあるという。ただゲスト候補が見つかっても、すべて一発で決まるわけではなく、内容によっては練り直しを迫られる。

 なかなか実現に至らない企画もある。坂田さんが熱望する「ソーセージの世界」だ。「毎年ディレクターの誰かが『頑張ります』と言って探すけど、ウチの番組に合う方がいない。海外でソーセージを学んで作っている方はいるけど、全国のソーセージを食べ歩いているような方がいないんです」と意外な告白。それでも「いつかはやりたい」と情熱をたぎらせた。

 なお、「レモンサワーの世界」の模様は、31日に放送予定。

(江畑 康二郎)

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