ポルノグラフィティ「運命だ」豪雨の爪痕残る地元・広島から20周年イヤー開幕

スポーツ報知
8、9日に広島・尾道市で凱旋公演を行うポルノグラフィティの岡野昭仁(右)、新藤晴一(カメラ・森田 俊弥)

 岡野昭仁(43)、新藤晴一(43)による2人組バンド・ポルノグラフィティがデビュー記念日の8日と9日に、広島・尾道市の広島県立びんご運動公園で野外ライブ「しまなみロマンスポルノ18」を開催する。99年に「アポロ」でデビューし、20周年のキックオフとなる地元での凱旋公演。西日本豪雨被害の災害復興支援として行う同ライブや瀬戸内への思い、20周年イヤーに向けた心境を語った。(加茂 伸太郎)

 「しまなみロマンスポルノ18」を前にして、思わぬ事態が起きた。7月上旬に広島、岡山などを豪雨災害が襲った。やるべきなのか、やっていいのか。協議を重ねた末に開催を決断。言葉の端々から決意がにじみ出た。

 岡野「ネガティブなことを考えたら、そればかりになってしまう。音楽に携わる人間として、原点として何を大事にすべきか。人の心を楽しませること―そこに懸けるべきと思った。災害に遭われた地域が元気になればいいと信じて。僕らにできるのは、歌うことしかないと思った」

 新藤「泥に流され、浸水を経験した人にとって『ポジティブだ』『ネガティブだ』『音楽だ』を言っている場合ではない。自分がユンボの免許を持っていたら役に立つだろうけど、ユンボが使えるわけでもない。僕らができることといえば、歌うことになるだろう」

 実はプラス面とマイナス面の両面が同居し、なかなか結論を出せないでいた。

 新藤「延期、会場を変える、他に方法がないかを考えた。誰が言ったか分からないけど、広島出身の我々がこの時期にライブを企画していたのは運命だろうと。『運命』というキーワードが出て、やろうとなった」

 野外ライブ当日からデビュー20年目に入る。10年目と比べ、重みは倍以上だ。

 岡野「40代半ばになろうとして、音楽で飯を食っていること自体がすごい…。2人で約束したわけではないけど、やめなかったのが全て。ファンの方が支持してくれているからそういう考えにも至らない。周りの助けがないと、20年も表舞台でできないから。出会いという意味では運が良かったと思う」

 2人は3月、母校の県立因島高校の卒業式を訪れた。同高軽音楽部に所属し、バンド「NO SCORE」を結成した出発点。壇上では卒業生と“同い年”の「アポロ」を歌った。

 新藤「あの時に生まれた子らが、立派に育って社会に旅立っていく。どれくらいの時間がたったかを感覚で捉えられたし、ありがたいことだと実感できた」

 初の全国ホールツアー(00年)でステージから見上げた景色、初めての横浜スタジアム公演(06年)の興奮、東日本大震災から半年後のつま恋ロマンスポルノで感じた一体感。昨年、初出演した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」で受けた熱気と歓迎。印象に残るライブはそれぞれ異なるが、記憶の中で鮮明によみがえる。

 「アポロ」以降も「ミュージック・アワー」「サウダージ」とヒットが続いた。

 新藤「何の根拠もないけど、『ロックバンドで飯を食っていこう』と考えるヤツが思い描くようなサクセスストーリーが妄想の中にあった。失敗なんて考えていなかった」

 デビューから数年後、インディーズ時代にお世話になった女性スタッフと再会する機会があった。転機となる出来事になった。

 岡野「年も近く姉貴分。『あんたたち、まだまだ』とゲキを飛ばされると思ったら、『やりたいことを前に出して頑張りな』みたいなことをおっしゃってくれた。半信半疑でやっていたのが、わずかだけど確信に変わった瞬間だった」

 25年、30年とバンドとしてどんな未来を描くのか。

 岡野「たいそうなことは言えないけど、島出身で洗練されていない僕らの(オリジナルの)発想があると思う。明確に言葉にできるわけじゃないけど、それをちゃんと音楽、歌詞に落とし込んで、より人間味が出るような活動をしたい」

 新藤「ポルノグラフィティが面白い場であれば、この先も続く。逆にそうでなければ、誰に何を聴かすんだという存在意義にも関わってくる。自分にとっての刺激的な場、ワクワクする場になるようにどう貢献できるか。そうあり続けられるようにやっていきたい」

 今季のプロ野球、Jリーグはカープ、サンフレッチェが首位を走り、広島のプロスポーツが熱い。音楽ではポルノが盛り上げていく番だ。凱旋公演では、生まれ育ったしまなみの魅力も伝えていくつもりだ。

 岡野「波が高いわけでもなく、風が吹き荒れるわけでもない。街も人も穏やか。思いきり楽しみたいし、僕らの姿を見た人が、少しでも幸せな気分になってもらえればうれしい」

 新藤「県外から来られる方もたくさんいると思う。坂本龍馬が太平洋を見て、さまざまな思いにはせたのはすごいことだけど、瀬戸内には海と島が連なるグラデーション、日本人の郷愁を誘う箱庭的な美しさがある。しまなみのいいところを見て帰ってほしい」

 2日間、さまざまな感情を歌声に込める。

 ◆広島党強さを分析…相撲なら寄り切り

 熱烈なカープ党のポルノ。新藤は強さについて「相撲でいうと、ぶん投げたというより、ジリジリと寄り切るイメージ。1年目は勢い。2年目はフロックと思われない緊張感、浮足立たない感じがあった。経験値」と分析。リーグ3連覇を前に「昔はこいのぼりの時期までと言われた。秋まで野球を楽しめるのはありがたい」と感謝した。岡野は「点を取れる時に取る。年替わりで活躍する投手も登場している。サンフレッチェも負けじと頑張ってほしい」と話した。

 ◆平成30年7月豪雨 6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方など全国的に広い範囲で記録された台風7号および梅雨前線などの影響による集中豪雨。消防庁によると14府県の主な被害は7月31日現在、死者220人、行方不明者10人、全壊家屋5236棟。

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