安藤政信、難役で「新しい一面が出た」 映画「きらきら眼鏡」15日公開!

スポーツ報知
「間口を広げて、いろいろな役柄に挑戦していきたい」と語る安藤政信(カメラ・池内 雅彦)

 俳優の安藤政信(43)が映画「きらきら眼鏡」(15日全国公開、犬童一利監督)で、がん患者役に初挑戦した。ドラマ、映画と大ヒット中の「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」シリーズで演じた脳外科医役から一転、肺がんで余命宣告を受ける役どころ。必死に生きようとする強い意志の中に悲しさを漂わせる難役を演じ「新しい一面が出た」という。デビュー23年目。最近はかつて敬遠していたドラマへの出演も増え、マルチな芝居を見せている。その転機とは―。

 脳外科医から肺がん末期の患者へ―。昨秋にオファーを受けた今作の役柄は、命を“救う側”から“救われる側”へ180度変わった。

 「半年間くらい『コード・ブルー』で脳手術のシーンとかやってたんです。立場は真逆だけど、ずっと医療に携わってたから患者役にはすんなり入れました」

 今作は作家・森沢明夫氏の恋愛小説を映画化。主演の池脇千鶴(36)演じるあかねの恋人・裕二を演じた。昨年9月のクランクイン前、実際に余命宣告を受けた男性患者の話を聞き、役作りにつなげた。

 「宣告された時のショック、抗がん剤のつらさ、家族への思いを聞いた。30代半ばで家族ができて、働き盛りの時に余命宣告された男性で、家族がいる自分にも重なった。8月に亡くなってしまって、映画を見てもらえなくて残念です」

 体重は4~5キロ落とし、心身ともに裕二に近づいていった。「『コード・ブルー』が終わって、今回の撮影まで2週間くらい食事はスープだけ。体も顔も相当細くなった。食ってないから本当に意識ももうろうとして、初日に監督に『もうちょっと声を張って』と言われたけど本当に声が出なくて、素でフラフラしてたね」

 8割以上がベッドの上での芝居だった。失望感に満ちた目が印象的だ。

 「景色が変わらず無機質な状態で、体も感情もグラデーションを出さないといけないと心がけた。人って死が近づいた時こそ生に向かおうとする。必死で生きる中に悲しさがある目を意識した。死を前にして『死にたくねえよ』と少し声を裏返して言う場面は、自分でも一番グッときましたね。1テイクで『あ、出たな!』って感覚があった」

 これまでのクールでミステリアスなイメージから一転、人間味あふれる役柄を演じきった。

 「新たな一面、出ましたね。やってない役はいっぱいあったんだな。次のドラマではみんな見たことないようなコミカルな役をやるので、ぜひ見てほしい」

 北野武監督の「キッズ・リターン」で俳優デビューして23年目。ドラマは98年のTBS系「青の時代」以降は10年以上ほとんど出演せず、国内やアジアで映画を中心に活動してきた。

 「若い頃は大好きな映画だけで生きていければ夢のような人生と思ってた。仕事を選びまくってたし、1年に1本映画撮ったらブラブラしてお金がなくなったら働くとか。ドラマのオファーがあっても話が合わないと思ったら、衣装合わせとかしたのに断ったりしてた。でも、だんだんドラマとかマルチに仕事しないと通用しなくなって、間口を広げて自分がやりたくないことも挑戦しようと思えたんです」

 最近はドラマにも多数出演。その転機となった2つの存在がある。1つは所属事務所の先輩で公私ともに親交が深い俳優・竹中直人(62)だ。

 「竹中さんは本当に仕事を選ばずにどんな役でもやってて、才能あふれるマルチな人。『役者なんて恥かいて傷つけばいい』と言われて、俺もやってやると本気で思えた。竹中さんがいたことが今の事務所に入る理由の1つにもなって、僕を変えてくれた恩人です」

 もう1つは、14年に結婚した一般女性の妻や4歳と2歳の子供だ。

 「2人の子供は『コード―』を見て『パパが出てる~』となるし、医学生に声を掛けられたり、テレビから影響を受ける人が多い。だからテレビで代表作を作りたいという挑戦があります。あとは家族の生活がかかってるので、いろんな仕事を受けてお金を稼がないといけないんです(笑い)」

 約20年前、北野監督から受けた“金言”がある。

 「作品を選びながら映画を大切に演じてますと話したら、『20代はカネがなくていい、好きなことやれ。子供が生まれたら嫌でも働かなきゃいけない時がくる』と。その時はピンとこなかったけど、20年たって意味が分かる。泣けるでしょ」

 今年は映画3本、連ドラ2本に出演。それぞれ違う役柄を演じ分けている。

 「そう言われるとうれしいけど、実はそこまで役者がめちゃ好きなわけじゃない。台本を読むのも超嫌いで苦痛だけど、これしかできない。会社員もコンビニのレジ打ちも無理。たぶん俳優は天職ですね」

 犬童一利監督のひとこと
「繊細な難しい役だけど、安藤さんにオファーして本当によかったです。死が迫る物語の後半に池脇さんと対峙(たいじ)するシーンでは人間らしさや弱さが湧き出てた。『死にたくねえよ』というセリフは1発OKで、裏返りそうな声の感じが素晴らしかった。特に好きなシーンですね。台本にないちょっとした動きを絶妙に付け足してくれたり、安藤さんから現場で学ぶ部分も多かったです」

 ◆安藤 政信(あんどう・まさのぶ)1975年5月19日、川崎市生まれ。43歳。北野武監督に見いだされ、96年に映画「キッズ・リターン」で主演デビュー。日本アカデミー賞や報知映画賞など新人賞を総なめ。99年「鉄道員(ぽっぽや)」、2000年「バトル・ロワイアル」、01年「サトラレ」など映画を中心に活躍。ドラマは98年TBS系「聖者の行進」など。今年は10月期の日本テレビ系「ブラックスキャンダル」に出演。趣味は写真撮影。175センチ。血液型O。

 ◆「きらきら眼鏡」あらすじ
 恋人の死を乗り越えられずにいた青年・明海(金井浩人)は、一冊の古本を機にあかね(池脇)と出会う。余命宣告を受けた恋人(安藤)と向き合いながら、見たものをすべて輝かせる心の眼鏡「きらきら眼鏡」をかけて前向きに生きるあかねに対し、次第にひかれていく姿を描く。共演は古畑星夏、杉野遥亮ら。7日から船橋市で先行公開。121分。

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