渡辺大、父・謙との「相対評価より絶対評価されるのが目標」…海外で最優秀主演賞獲得

スポーツ報知
「FAで獲得する時代は終わった、生え抜きの育成を」と熱い巨人愛も語った渡辺大(カメラ・酒井 悠一)

 俳優の渡辺大(34)が主演する映画「ウスケボーイズ」(柿崎ゆうじ監督)が20日に公開される。日本ワインの常識を覆した青年の実話を元にした作品。スペイン・マドリード国際映画祭などの外国語映画部門で最優秀主演男優賞を獲得し話題を呼んだ。父の渡辺謙(58)にも報告し「ゆっくり飲んだことはないんですけど、今度一緒にワインを飲もうと話しました」と、近く祝杯を上げるつもりだ。(土屋 孝裕)

 気になるタイトルの「ウスケ」は、日本ワインに革命を起こしたと言われる「シャトー・メルシャン桔梗ケ原メルロー」を手掛けた伝説の醸造家、麻井宇介さん(故人)の名前。麻井さんの思想を受け継ぎ、常識にとらわれないワイン造りに没頭していく青年たちの姿を、実話に基づいて描いた。渡辺が演じた主人公は、山梨・北杜市で奇跡のワインと評される「ボー・ペイサージュ」を造る岡本英史さんがモデル。撮影前に本人にも会い、役を作り上げていった。

 「畑にいる姿も見せてもらいました。寡黙な方だけど、夢や希望が心の中にいっぱいある感じがしました。自分に似ている部分を感じて、気持ちを重ねやすかったので、難しく考えないようにしました」

 元々ワインは好きだったが、飲んでいたのはほとんどが外国産。撮影前に日本ワインのレベルの高さを知り、心底驚いた。

 「国産は大したことないと思ってた部分もあったんですが、味わいの深さにビックリしました。いろいろ試して、これだけ違いがあるんだと。岡本さんのワインは独特で一発でわかります。他にもキドワイナリーや、小布施ワイナリーなど、これを日本人が知らないのは寂しいな、伝えないといけないと思いました。今は日本ワインの広報だと勝手に思ってます」

 撮影は昨夏、岡本さんの畑も借りて、オール山梨ロケで行った。畑のシーンでは実際に土を口に含み、大自然に向き合って汗をかいた。一方、青年たちがグラスを片手に真剣な表情でテイスティングするシーンも印象的。リアルに見えるよう、撮影中もワイン会を開き、知識も愛情も深めていった。

 「種類だけじゃなくて、おいしくなるタイミングもあるんです。開けてすぐ飲むんじゃなくて、2時間前に抜栓して空気に触れさせたり。全く意識してませんでしたが、ワインには飲み頃を待ったり、造り手の思いをはせながら想像する楽しさもあるんです。ワイン会は今も続いていて、ワインを通して縁も増えました」

 その縁は、海外にもつながった。マドリード国際映画祭、オランダ・アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭に出品され、ともに外国語映画部門で最優秀主演男優賞を獲得。マドリードでは最優秀作品賞、アムステルダムでは柿崎監督が最優秀監督賞を受賞し、計4冠に輝いた。渡辺は初めて海外の映画祭に参加した。

 「スペインではタクシー運転手がストライキを起こしてエラい目に遭って。授賞式も飲み過ぎて、打ち上げのあいさつみたいなノリで出ちゃって恥ずかしかったです。けど、海外の独特な世界観の作品を見られたのは勉強になりました。賞を求めて仕事をしているわけじゃないですけど、いただけたのは人生のいい節目というか、ターニングポイントの一つになりました」

 マドリードでの受賞後すぐ、父が主演する舞台「王様と私」のロンドン公演を訪れ、受賞を報告した。

 「おめでとう、と喜んでくれました。『桔梗ケ原メルロー』を持って行ったんですが、禁酒中なので舞台が終わって(日本に)帰ったら一緒に飲もうと。大人になって十何年、父とゆっくりお酒を飲んだことはないので、たまにはいいかな。(受賞が)飲む口実になったかな。まだ会えてないですが、一応待ってます」

 デビューから16年。俳優としては偉大すぎる父との関係性は、少しずつ変わってきた。

 「今は、親子としてよりも役者としての比率が高い。そっちの方が健全だと思ってます。役者としては、比べるものがあるのかなと思っちゃうぐらいだけど、同じことをしているわけじゃない。作品も演じる役もパーソナリティーも違う。父との相対評価よりも、絶対評価で自分が評価されるようになるのが目標ですね」

 ◆渡辺 大(わたなべ・だい)1984年8月1日、東京都生まれ。34歳。2002年にテレビ東京系「壬生義士伝」でデビュー。03年「ぷりてぃ・ウーマン」で映画初出演。07年「県警強行殺人班 鬼哭の戦場」で初主演。最近では「空飛ぶタイヤ」「散り椿」などにも出演。08年に一般女性と結婚し2児がいる。父は渡辺謙、妹は杏、義弟は東出昌大。父は阪神ファンだが、大の巨人ファン。185センチ、74キロ。血液型A。

 ◆「ウスケボーイズ」

 岡村(渡辺大)、城山(出合正幸)、高山(内野謙太)らは「ワイン友の会」の仲間で、世界中のワインをたしなみ、知識を深め合っていた。ある日、世界に通用する「桔梗ケ原メルロー」の存在を知り、そのワインを生んだ麻井宇介(橋爪功)に憧れ、ワイン用のぶどう栽培からワイン造りに没頭していく。河合香織さん著「ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち」が原作。

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