大竹しのぶ、「愛の讃歌」歌い続ける…20代で出会い4度目上演の舞台「ピアフ」

スポーツ報知
CDのポスターに寄り添って笑みを浮かべる大竹しのぶ(カメラ・小泉 洋樹)

 女優・大竹しのぶ(61)の主演舞台「ピアフ」(作・パム・ジェムス、演出・栗山民也)が11月4日~12月1日に東京・日比谷のシアタークリエで上演される。仏歌手エディット・ピアフの半生を演じ、4度目の上演となる大竹の代表作。ピアフの命日となる今月10日にはカバーアルバムを発売、来年1月にはコンサートを開催するなど舞台の枠を超えたプロジェクトに発展し「歌のお仕事もどんどんやっていきたい」と展望を語った。(土屋 孝裕)

 一昨年末の紅白歌合戦。初出場の大竹が力強い歌声で披露したピアフの「愛の讃歌」は大きな反響を呼んだ。ピアフの楽曲を歌うきっかけになったのが、2011年10月に初演された舞台「ピアフ」。12年の「読売演劇大賞」最優秀女優賞をはじめ、数々の賞を総なめにした。今回で既に4度目の上演となる。

 「これだけハイペースでやるとは思わなかったです。やっと終わったのにまた、みたいな気持ちはありましたけど、それだけ見てくださる方がいるというのはうれしいし、ありがたいです」

 ピアフとの“出会い”は20歳の頃に遡る。舞台で共演していた中村勘三郎さん(当時は勘九郎)に評伝本を勧められ、美輪明宏主演の評伝劇「愛の讃歌」を観劇した。

 「分厚い本なんですけど、哲明さん(勘三郎さんの本名)が『これ読んだほうが絶対いいよ。とにかく読みなさい、女優なんだから』って。なぜかは分からないんですけど。当時はやるなんて思ってもいなかったので、不思議ですよね。40代になってロンドンで公演を見た時に、今だったらできるかな、やりたいって思いました。どんな汚い言葉を使っても彼女はチャーミングで優しい、けれど孤独。孤独なところに面白さを感じますね」

 今でも忘れられないのが初演の地方公演の千秋楽。カーテンコールで一人の女性が舞台の前まで駆け寄ってきた。泣きながら「もう一度、愛の讃歌を歌ってほしい」と手を合わせた。大竹は一瞬迷ったが、アンコールに応じ、さらに出演者全員で「水に流して」を歌った。

 「芝居ではなかなかないこと。コンサートみたいに劇場が一つになった。ピアフの楽曲の力を実感しました。生きるために路上で歌ってきたピアフが、全世界の人々に命を与えて、明かりをともすことができる。すごい人です」

 初演はもちろん、再演するごとに評判は上がり、16年の公演後、舞台の枠を超え紅白歌合戦出場につながった。

 「なんで私が出られたんだろうと今も思いますけど、紅白という舞台で、私が歌を歌う人だと思ってもらえたのはすごく大きいことでした。私はどんな状態でも120%出しちゃうので、(表情が)『貞子』とか言われましたけど、それが私の表現の一つ。また出ることはないと思いますけど、出たいですって言えるように、歌の仕事ができたら」

 10日にはピアフ楽曲をカバーしたアルバム「SHINOBU avec PIAF」を発売。来年1月には兵庫と東京でピアフコンサートを行う。

 「CDはいつかやりたいと思っていて、やっと実現しました。芝居は『ここで1秒間があった方がいいんじゃないか』とか一回一回、次のための進化みたいのがあるけれど、音楽はその瞬間の空気感で消えていく、細かいことを言わなくていい良さがある。お芝居のネチネチしたのも好きなんですけど、音楽の方にも行きたいな」

 プライベートでも今年は大き過ぎる出来事があった。9月1日、母・江すてるさんが96歳で亡くなった。

 「静かに命が消えていくという亡くなり方ではなくて、生きようとしていました。みんなの役に立ちたい、命を燃やそうと思っていたから苦しんでいたんです。最後まで諦めないということを、私や妹に見せてくれたんだなと思います。この時期に生涯、燃え続けようとしたピアフと向き合わなければいけないっていうのは、すごい意味を感じていますね」

 ◆「ピアフ」 フランスの貧民街で生まれ、路上で歌いながら命をつないでいたエディット・ピアフ。ある日、ナイトクラブのオーナーが「そのでかい声、どこで手に入れた」と声をかけ、ピアフの歌はたちまち評判となる。華やかに見える人生に見える一方、私生活では切実に愛を求め、出会いと別れを繰り返す。共演は梅沢昌代、彩輝なお、駿河太郎ら。

 ◆大竹 しのぶ(おおたけ・しのぶ)1957年7月17日、東京都生まれ。61歳。75年に「青春の門」(浦山桐郎監督)で映画デビュー。同年、NHK連続テレビ小説「水色の時」のヒロインに。77年「青春の門」(演出・宇野重吉)で初舞台。11年紫綬褒章。82年にテレビプロデューサーの服部晴治さんと結婚、87年に死別。88年に明石家さんまと再婚し、92年離婚。タレントのIMALUは長女。16日のNHK「うたコン」(後7時30分)に出演する。

芸能

×