「両足が宙に浮いた瞬間を忘れられない」…“文系女子”漫画家が感動した義足アスリートの言葉

スポーツ報知
重松成美さん

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本でも障がい者やパラスポーツ(障がい者スポーツ)を取り巻く環境に変化が訪れている。そんな中、「花コイ少年」などで有名な漫画家・重松成美さんがパラアスリートを目指す少女の青春物語「ブレードガール 片脚のランナー」(講談社・BELOVE、https://be-love.jp/kc/bladegirl/)の連載を9月から開始した。

 パラスポーツへの取材を精力的に行いながら「ブレードガール」を執筆している重松さんが、このほど「スポーツ報知」の取材に応え、今後の作品の展開やパラスポーツへの思いを語った。

 「母が病気の後遺症で障がいを負って、身近に障がいがありました。私にとっても身近なことでした」と語り始めた重松さん。自身も昨年、がんの手術を経験。「病院に行くと、リハビリされている方もたくさんいらっしゃって。そういうものって作品の題材にするとかいう感じじゃなくて、本当に身近なものでした」と振り返った。

 文系女子の重松さんは、これまでスポーツとは縁遠かったという。しかし、南アフリカの両足義足ランナー、オスカー・ピストリウス(31)らに対し、「格好いいなという印象」は持っていた。

 そんな中、東京を中心に活動している障がい者スポーツチーム「スタートラインTokyo」と出会い、漫画執筆への思いを強くしていった。

 同チームは義肢装具士の第一人者・臼井二美男氏(62)が主宰。8日~13日までインドネシア・ジャカルタで開催された、第3回アジアパラ大会にもメンバーが出場した。

 さらに「ブレードガール」にも、チームのメンバーをモデルとしたキャラクターが多数登場。重松さん自身も義足を体験した。「体験させてもらえたというのが大きいです。主人公がどう感じるかを学ばせてもらっています」。

 「とにかく毎週取材に通って、知らなかったことや業界用語を教えてもらっています。彼ら彼女らの言葉に耳を傾けていると、皆さんから(四肢を)切断した当時の話だとか、(失った箇所が痛む)幻肢痛だとか、普段の困っていることとかを話してもらえるようになりました」とうれしそうに語った。

 「こちらは大変なんだなと思っても、スタートラインの皆さんは元気でオープンに、パワフルに話してくれます」と重松さん。

 メンバーの言葉で一番心に残っているのは「義足を履いて初めて走れた時、両足が宙に浮いた瞬間を忘れられないこと」だという。「『風を感じられたこともうれしかった』とも教えてもらいました。同じことは出来ないんですけど、なるべく誠実に向き合って漫画を描きたいと思っています。簡単ではない義足やスポーツの世界を、漫画を通して広く伝えていくことを目指しています」と決意を述べた。

 さらに、「本当の義足の人が見ると『そう簡単にいかないよ!』という意見もあると思いますけど、夢や希望を伝えるためにオーバーに表現しています。そうは言っても、絶対にいいかげんなことを書かないようには注意を払っています」とも話した。

 最後に「アニメやドラマ、映画にもなってくれたらうれしいですね」と今後の展開への期待も明かし、「映画になって、スタートラインの皆さんがキャストとして出演してくれたら最高です」と笑顔を見せた。(松岡 岳大)

芸能

×