若手女形のホープ・中村梅枝、最難「阿古屋」役抜てき　玉三郎は「無数の工夫、４次元ポケットのよう」

　歌舞伎俳優の坂東玉三郎（６８）が、東京・歌舞伎座１２月公演（２～２６日）の夜の部「壇浦兜軍記　阿古屋（だんのうらかぶとぐんき　あこや）」で３年ぶりに女形屈指の大役、阿古屋を演じる。６代目中村歌右衛門から受け継ぎ、１９９７年に演じて以降、玉三郎しか演じておらず、最も難しいとされる役。今回、異例の試みとして成長著しい中村梅枝（３０）、中村児太郎（２４）の若手女形２人を抜てき。そこには玉三郎が使命と考える「芸の継承」の哲学が込められている。

　「舞台に出る時、心臓が飛び出るくらい緊張するかもしれません」。そう苦笑しながら話す梅枝は、若手女形のホープの１人だ。関係者の話では、玉三郎は研究熱心な梅枝を見て、３年前に演じた際、大がかりな着替えの過程を「見にくるかい？」と呼んでいる。「まさか自分がやると思わずにその時、見ていました」と振り返る。

　楽器の稽古は早くから始めていた。「せりふが少なく、演奏を通して気持ちを表現。難しさのレベルが違います」。演者の動きは流れるように進み、見る者はなかなか大変さに気づきにくい。

　しかし楽器を持つ位置、角度などで玉三郎が無数の工夫をしていたことに驚かされたという。「まるでドラえもんの４次元ポケットのように思えた。まだ演じられるうれしさを感じる余裕はありませんが」。多くのものを吸収し、女形として大きく飛躍する。

　◆中村　梅枝（なかむら・ばいし）１９８７年１１月２２日、東京都生まれ。３０歳。５代目中村時蔵の長男。９１年本名の小川義晴で初お目見え。９４年４代目中村梅枝を襲名し初舞台。今月は歌舞伎座出演中。弟は中村萬太郎。趣味はダーツ、ゴルフ。屋号は萬屋。