瑛太、苦悩の日々 大河ドラマ「西郷どん」大久保利通役の撮影は「胃痛がした」

スポーツ報知
大久保利通を演じた瑛太

 明治編に突入し、クライマックスが近付いてきたNHK大河ドラマ「西郷どん」(日曜・後8時)。大久保利通役の俳優・瑛太(35)がこのほどインタビューに応じ、約1年2か月の撮影について「胃痛がした」と苦悩を明かした。

 欧米視察から帰国し、欧米の文明の発展に圧倒され、内政改革を第一と考える大久保。外交問題解決のために朝鮮使節派遣を遂行しようとする西郷隆盛(鈴木亮平)。これまで盟友として肩を組んできた2人が今後の国の指針で意見が合わず、ついに対立する。

 瑛太は大久保と西郷の関係性を「月と太陽」と表現し、「お互い人間として好き同士なのに思想の違いで離れていくのに面白みを感じている。これから月と太陽のような関係性の2人の描かれ方がさらに色分けして見えてきて、ドラマチックになってくる」。

 作品の出来に胸を張る一方で、大久保と向き合った日々は「撮影に行くのが嫌だった」と告白した。「大久保は種をまいても咲いてこない。何やっても島津久光(青木崇高)に潰され、岩倉様(笑福亭鶴瓶)にすかされたり…。青年時代の時から謹慎処分を受け、希望を持って生活しているのに物事はうまくいかない。いつか何かしてやるという固いバネを縮めたようなものを感じ」と、思い通りにいかない生き方に鬱憤(うっぷん)がたまることも。「僕自身にも負荷がかかって、演じがいが分からなかった。中間管理職的な立場で感情をはけない苦痛があった。大久保にはある意味、腹の底から毒素が出ていた。僕は大久保に尊敬の念を抱いているので、ダークヒーローにはなりたくないと芝居をするうえで葛藤があった」。

 思い通りに行かない大久保の人生が孤独に感じたことで、撮影現場での立ち振る舞いにも影響が及んだ。「現場によってスタンスを変えますが、今回はみんなが集まる前室に一度も行かず、雑談もしなかった」。1人で控室にこもり、携帯ゲームで時間を潰していた。一方、座長の鈴木は共演者と交流を深めていたという。「亮平君はコミュニケーション能力が高いので、鶴瓶さんに『何でセリフ覚えてないんですか?』と言い、『うるせーよ、このゴリラ』と言い返されていた。僕はその言い合いを黙って聞いていました」。

 現場では1人でいることが多く、演じ方にも葛藤していた瑛太を救ったのは鹿児島ロケで出会った地元のタクシー運転手だった。瑛太が「大久保さんは鹿児島では嫌われてますか?」と聞くと、「『西郷も大久保もものすごい過激だったんだよね? だからどちらでもないよ』と。どちら派でもない人がいて安心しました。みんなが西郷好きで大久保嫌いだという話しを聞いていたので」。故郷の生の声に孤独感が薄れた。

 “相棒”鈴木の存在も大きい。「ずっと亮平君の背中を追いかけています。亮平君の姿を見て、鍛えたこともありました。ぶれることもまりましたが…。芝居でもいろんな武器を持っているのでうらやましさや嫉妬心もあります。亮平君はいいなーって。亮平君も吉之助さんも好きです」と照れ笑いを浮かべた。

 終盤は「西郷と大久保の2人の話」という瑛太は、今後の見所の一つを「大久保の演説」という。大久保が演説の途中にある悲しい知らせを聞き、動揺を隠しながらも国民に訴えかけるシーンだ。

 「俳優さんが長いセリフを覚えてすごいと思われるようなシーンにしたくない。伝達が来ると、その演説は普通じゃなくなるんじゃないかと思い、監督と相談させていただきました」と力を込めた。

 大河ドラマは08年「篤姫」以来、2度目。篤姫にかなわぬ恋心を抱いていた小松帯刀を繊細に演じた。役者としては中堅の立ち位置だが、わずか2度の出演で、ともに重要な役どころを担っている。映画やドラマにも引っ張りだこだが、大河ならではの魅力を問われると、「今回、初日は8時間待ちでした」と苦笑いしつつも、「老若男女問わず多くの人に見てもらって、街中で『偽札はどうなるの?』と声をかけられる。その感想が長く、『毎週見ているよ』という声がうれしい」。胃痛も視聴者からの励ましで吹っ飛んだ。最後まで“月”として“太陽”の鈴木を支え続ける。

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