アクアタイムズ・太志「人生で大事なことはこの15年間で教わった」独占手記

スポーツ報知
涙をこらえて熱唱する太志

 年内で解散する5人組バンド「Aqua Timez(アクアタイムズ)」が18日、横浜アリーナでラストライブを行い、涙まじりに1万3000人のファンへ別れを告げた。バンドの顔として、曲作りの苦悩と向き合ってきたボーカルの太志は、スポーツ報知に手記を寄せた。

 * * * *

 夢だった横浜アリーナのワンマンライブ。夢がかなった喜びと寂しさが入り交じった不思議な気分だった。Aqua Timezは演奏がうまいわけでも、歌がうまいわけでもない。才能もないし、カリスマ性もない。本当は横浜アリーナで2デイズやりたいけど、難しいことは分かってる。でも「心に響くものがある」と言ってもらえるのは、俺たちが楽しみながらやってきたからだと思う。下手でも、夢中になってパフォーマンスしていることが一番の良さだと思う。

 解散を切り出したのは俺だけど、ずっと解散を意識していたわけじゃない。おじいちゃんになるまで、Aqua Timezとしてやると思っていたから。でも、どこかで無理しながらやってきた。それが今年になって満タンになった。誰かのせいじゃない。4月にアルバムができてからメンバーに打ち明けたら、誰も止めなかった。

 みんな「太志はよくやってきた。俺たちも頑張ってきた。自分たちは才能ないのに、10年以上もよくやってきた」と言ってくれた。それまで詞を書いて、曲を作ってレコーディングしたら、また次…。それを繰り返して重荷を背負ってきた。周りを見渡すと足跡がたくさんある。それを踏んじゃうと前と同じになっちゃうから、絞り出す苦悩があった。解散が決まって、ふわっと気持ちが楽になったというのは正直なところ。

 10月にメンバー4人でハーフマラソンを完走した。mayukoは走らなかったけど、応援に来てくれた。10キロ以上は走ったことがなかったから、ハーフマラソンは未知の世界。途中、体力的にキツかったけど、OKPが「ちょろい、ちょろい」と100回くらい言って、自己暗示をかけていた。一人じゃ絶対にリタイアしていた。みんなで励まし合ってゴールできた。おかげで最後の横浜アリーナに向けて一体感が生まれた。

 この15年間で印象に残っているのは、初めてミュージックステーションに出た時のこと。テレビ自体が初めて。しかも生放送の全国ネット。「カメラの奥で何千万人の人が見てるんだろう」と思ったら、めちゃくちゃ緊張したな。STUSSYのトレーナーにティンバーランドのブーツを合わせて「等身大のラブソング」を歌った。まだインディーズの頃だから、私服だった。

 出演者はほかに内村さん、ふかわりょうさんたちの「NO PLAN」がいた。司会のタモリさんから「共演してどう?」と聞かれて、「若干、やりづらいですね」って答えたら、タモリさんがコケてくれて、スタジオが盛り上がった。次の日はバイトだった。有線放送のテレアポのバイトで、全然仕事しないでAqua Timezのランキングが上がっていくのをぼーっと眺めてた。

 メジャーデビューしてからも、ライブの集客が伸びなくて苦労した。ただ、曲作り、曲への向き合い方は変わらない。成長する必要もないくらい、シンプルなものだから。ギターを弾きながら鼻歌でいいなって思ったメロディーにいいなと思う歌詞をのせるだけ。ある時からスマホのボイスメモに鼻歌とか歌詞を吹き込んで、いくつもためてきた。曲作りにはスランプがあって、書けなくて納得できないことも。その悔しさが頑張る原動力になった。

 「思いをちゃんと書けた」という手応えを感じた曲は「小さな掌」。「後ろばかり見てたら明日が哀しむから人は前に進むしかないんだよ」という歌詞が気に入っている。声帯炎でツアーを飛ばしてしまった時、ファンのみんなへの思いを歌詞にした。思い浮かぶというより、切羽詰まった中から出てきたもの。人生で大事なことは、この15年間で教わった。うまくいかない中で、もがきながら乗り越えていく術を教わった。

 再結成は「絶対にない」とは言いたくない。楽しくて音楽を始めたわけだし、バンドを続けてきたんだから。いつか息がつまらずにできる時が来たら、10年後でも、15年後でも、どんな小さな会場でもいいからやってみたい。でも、みんな相当なアンチエイジングが必要になるよね(笑い)。OKPの髪形なんて、ドレッドとか絶対に無理だね。彼にそんな毛量はもうないはず(笑い)。

 15年間、一緒にやってきたメンバーとは何も言わなくても分かり合ってる。OKPはイジられキャラ。イジられてナンボ。最年長なのに末っ子のような存在。TASSHIは背骨のような存在。精神的にも、彼に支えてもらった。mayukoは天然ボケの不思議ちゃん。真面目な性格で楽屋の掃除もよくする。俺とOKPが散らかして、mayukoとTASSHIが片づける。大ちゃんは優しくほほ笑んでる。いつもそんな感じ。家族よりずっと一緒にいた。青春だった。

 ファンのみんなにはAqua Timezの曲をずっと覚えていてほしい。曲作りに葛藤があったけど、曲にしてしまえば祈りになる。その祈りを共有できた。音楽をやっていてよかった。やり残したことはない。やり切った。そうじゃないと、これまでやってこれなかった。自分は本当に幸せだと思う。出会ったみんなに感謝したい。

芸能

×