【報知映画賞】主演男優賞は最多タイ4度目受賞の役所広司「希林さんと一緒」

スポーツ報知
作品賞とのダブル受賞に「『万引き家族』もあったのに…」と思わずサムアップポーズの役所広司(カメラ・頓所 美代子)

 今年の映画賞レースの幕開けとなる「第43回報知映画賞」の各賞が27日、発表された。主演男優賞は「孤狼の血」(白石和彌監督)で暴力団と渡り合う破天荒な刑事役を演じた役所広司(62)が21年ぶりに受賞した。昨年の助演男優賞から2年連続の栄冠で、通算4度の受賞は史上最多タイ。報知映画賞の歴史に名を刻む名優は「(樹木)希林さんと一緒に並べることはうれしいし、光栄です」と亡き先輩との同時受賞を喜んだ。

 賞と呼ばれるものを126回(公式HPより)受けてきた役所は、127回目の吉報に無邪気な顔を浮かべた。「去年頂いたので、もうもらえないかなと思っていました。映画の後半、あまり出ていませんし…。つくづくツイてる男だなー、と思います」。演じた役柄とは対極にある穏やかな微笑だった。

 1996年に「Shall we ダンス?」など、97年に「うなぎ」などで2年連続の主演男優賞。昨年は「三度目の殺人」と「関ヶ原」で助演男優賞。通算4度の受賞は原田美枝子(59)と並ぶ史上最多タイで、男優としては初の快挙となった。「共演もさせていただきましたけど、僕、もともと原田さんのファンなんです。年下ですけど黒澤(明)組も経験された先輩ですからね、光栄です」

 カッコ良すぎる「有言実行」になった。昨年の表彰式で(司会者に乗せられたとはいえ…)「ぜひ来年もこの場に来られたらいいな、と思います」と予告していた。当時の言葉を「言ったかもしれませんね~」と笑顔で振り返りながら「来られたらいいな、というのは本心でしたよ」とも。どこかで感じていた手応えは1年後、主演男優賞の栄誉になって戻ってきた。

 警察と極道の男たちの狂熱を描いた「孤狼の血」で、豪快な性格とルール無用の捜査で暴力団員も恐れをなす刑事・大上を演じた。「ムチャクチャですけど、美しい正義感のカケラが最後に残っている男。愛される男だなあ、と思います。もう62で元気な役は似合わなくなるので最後の最後ですよ」。静かな狂気をはらんだ殺人犯を怪演した「三度目の―」の直後の撮影だったが、両極端のキャラクターを一気に作り上げた。

 今回の受賞で何よりうれしいことがある。助演女優賞の樹木希林さんは2012年に映画「わが母の記」で共演。敬愛する先輩だった。「全身がんと言われてから、無理してでも自分を表現して最後の力を注がれたんじゃないかと思うんです。希林さんは『そんなことないわよ』って言うかもしれないけど」

 晴れの日の壇上に樹木さんはいない。だが、役所は「一緒に」と言う。「(亡くなった時は)撮影で新潟にいて、ちゃんとお別れもできていなかったので、報知映画賞の壇上で一緒に並べることはとってもうれしいですし、光栄なことですよね」。共に受賞することで再会する。舞台を飾る。やはり役所は役者が違う。(北野 新太)

 ◆役所 広司(やくしょ・こうじ)1956年1月1日、長崎県諫早市生まれ。62歳。高校卒業後に上京し、千代田区役所勤務。仲代達矢主演の舞台「どん底」を見て俳優を志し、78年に仲代主宰の「無名塾」入塾。79年に映画、80年にテレビデビュー。代表作に「失楽園」「キツツキと雨」「日本のいちばん長い日」など。現在、仲代との共演映画「峠 最後のサムライ」(2020年公開)の撮影中。息子の橋本一郎も俳優。

 ◆「孤狼の血」 舞台は昭和63(1988)年、広島県呉原市。国立大卒の新人刑事・日岡秀一(松坂桃李)は県警呉原東署の暴力犯捜査係に配属される。直属の上司になったのが暴力団との癒着もウワサされる破天荒な敏腕刑事・大上(おおがみ)章吾(役所広司)だった。

 ▽主演男優賞 井浦、大杉、東出、松坂らも挙がったが、役所が圧勝。「現実にはありえない刑事役に圧倒的リアリティーで憑依してしまう。毎回そうだが役所広司は奇跡の役者だ」(見城)、「この年代で役所が演じた役をできる人はいない。貴重性がある役者」(齋藤)

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