【報知映画賞】新人賞に16歳コンビの南沙良&蒔田彩珠がダブル受賞

今年の映画賞レースの幕開けとなる「第43回報知映画賞」の各賞が27日、発表された。新人賞は「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(湯浅弘章監督)にダブル主演した南沙良(16)、蒔田彩珠(あじゅ、16)が受賞した。同一作品で女優2人が受賞するのは初めて。
「16歳の実力派」と評された南と蒔田の高1コンビは、何よりも2人そろっての受賞を喜んだ。南が「一緒ですごいうれしかった。彩珠がいないと私は(主人公の)志乃になれてなかった」と感謝すると、蒔田も「自分だけだったら『沙良のおかげなのに』って逆に悔しかったと思います」と、お互いをたたえ抱き合った。
南は言葉が上手に話せずに周囲となじめない志乃を、蒔田は音楽好きだが音痴な同級生・加代を演じた。南は吃音(きつおん)がある人々に実際に会い「話せない演技」に体当たりで挑んだ。蒔田も撮影2か月前から猛特訓したギター演奏を披露。2人が感情を爆発させるシーンは、ともに初主演とは思えないエネルギーを作品に注ぎ込んだ。
南はファッション誌「ニコラ」の専属モデルで、一昨年の映画「幼な子われらに生まれ」(三島有紀子監督)で女優デビュー。映画2作目で大役を射止めた。劇中、鼻水を流しながら号泣するシーンがあるが「監督から『泣いて』と言われたわけじゃなくて、思ったことを表現してくれれば大丈夫と言われたので、そのまま演じたら涙が出てきて…。鼻水も全然気にしてなかったです」と振り返る。「こんなに早く主演させていただいて、締めくくりが映画賞…。本当なのかな? 今年は人生で一番充実してました」と、はにかんだ。
蒔田は兄の影響で7歳の時に子役デビュー。10歳の時に出演したフジテレビ系ドラマ「ゴーイングマイホーム」で是枝裕和監督に才能を見いだされ、シーンは短いながら「三度目の殺人」「万引き家族」など、すでに是枝組の常連だ。「是枝監督が女優を続けていきたいと思わせてくれました。今回も出演が決まってLINEを送ったら『気負いすることはない』と言ってくれて、『よく頑張った』と感想をくれました」。恩師の言葉が自信につながっている。
劇中の役柄同様に、人見知りで内気な南と、勝ち気で芯の強さを感じさせる蒔田。湯浅監督の「性格が違うので仲良くなれない」という予想をいい意味で裏切り、撮影2日目には意気投合。2週間の撮影中、一緒にカラオケに行ったり、南が蒔田の部屋に泊まるなど「一生の友」になった。南は「彩珠を尊敬してますし、また一緒にやりたい」、蒔田も「沙良とはテンポが合う。ライバルというより純粋に友達です」。照れながら見つめ合った2人が将来、映画界を引っ張る存在になる。(土屋 孝裕)
◆蒔田 彩珠(まきた・あじゅ)2002年8月7日、神奈川県生まれ。16歳。7歳で子役デビュー。その後、映画「海よりもまだ深く」「友罪」「猫は抱くもの」などに出演。現在、大塚製薬「カロリーメイト」CMに出演中。12月8~28日に「道」(東京・日生劇場)で初舞台。身長156センチ、血液型O。
◆南 沙良(みなみ・さら)2002年6月11日、神奈川県生まれ。16歳。小6の14年に「ニコラモデルオーディション」でグランプリを獲得し芸能界入り。17年「幼な子われらに生まれ」で女優デビュー。来年5月17日公開の映画「居眠り磐音」に出演。趣味は仏像鑑賞、アニメ、漫画。身長159センチ。血液型A。
◆「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 うまく言葉を話せない志乃(南)は、音楽が生きがいなのに音痴な加代(蒔田)と友達になり、バンド「しのかよ」を結成。文化祭出演に向け一歩を踏み出すが、同級生の男子・菊地(萩原利久)が強引に加わることになり…。
▽新人賞 唐田、木竜、志尊、山本らも挙がったが、南と蒔田の支持が強く、協議の末、ダブル受賞。「蒔田はクールな役のちょっとした弱さを見せてくれた」(恩田)、「南は『幼な子われらに生まれ』から、いい演技を続けている」(松本)、「1人というより2人で受賞してほしい」(渡辺)