【平成回顧】＜３０＞Ｇａｍｅを五輪種目に“ｅスポーツ元年”賞金は１億円超

　天皇陛下の生前退位により４月３０日で３０年の歴史を終える「平成」。スポーツ報知では、平成の３０年間を１年ごとにピックアップし、あらためて当時を振り返る。第３０回は平成３０年（２０１８年）。（この記事は２０１８年１２月２日の紙面に掲載されたものです）

　平成３０年は“ｅスポーツ元年”となった。対戦型電子ゲームが競技種目として認められ始め、ｅスポーツの全国組織が完成、９月にジャカルタで行われたアジア大会では実際に競技種目に採用された。流行語大賞にもノミネートされ、世界の競技人口は１億人以上に及ぶ。なぜ今年、娯楽の代表格であるゲームが大ブレイクしたのか。火付け役たちに話を聞いた。（増田　寛）

　三塁線、抜ければ逆転の当たりを捕球する好プレーに、観客席から感嘆の声が漏れる。勝負の場面では選手から汗があふれ、観客は大画面を見つめて静まり返る。勝敗が決まると、選手はガッツポーズ。歓声と拍手がプレーヤーをたたえる―。

　１１月に都内で開催された野球の家庭用ゲームで行われるｅスポーツ大会「ｅＢＡＳＥＢＡＬＬ　パワプロ・プロリーグ２０１８」の第３節。ゲームとは思えない熱気が会場を支配していた。観戦していた５０代の女性教職員は「人生初のｅスポーツ大会です。楽しい！　めちゃくちゃ楽しいです！」。

　主催するコナミデジタルエンタテインメントプロモーションの企画本部副本部長・車田貴之さん（４０）は「ｅスポーツはスポーツです。会場はスポーツ観戦と何ら変わらない。ぜひ一回、会場に来てほしい」と力説する。会場に充満する熱狂ぶりはまさにスポーツならではの雰囲気。観客席で応援歌を歌っていた２０代の男性は「今回で２回目の観戦。家で配信も見ていましたが、やっぱり生が一番」と興奮を隠さない。

　平成３０年はまさに“ｅスポーツ元年”となった。１月に初の全国統括組織である一般社団法人・日本ｅスポーツ連合（ＪｅＳＵ、ジェス）が発足し、大会が活発になった。２月には平昌五輪開幕直前、史上初となるＩＯＣ公認のｅスポーツ大会が同地で開催された。

　９月、ジャカルタ・アジア大会で公開競技になり、サッカーゲーム「ウイニングイレブン２０１８」で日本代表が金メダルを獲得。現地には観客が４００人集まり熱狂。日本でも大きく取り上げられ、話題を呼んだ。２２年の杭州アジア大会では、正式競技になる。世界を見渡せば競技人口は１億人以上、愛好者は３億５０００万人を超える。

　日本はゲーム大国だが、実はｅスポーツは後進国だ。「やっとｅスポーツが日本でも普及してきました」とＪｅＳＵ副会長の浜村弘一さん（５７）。「普及には選手活躍の場が重要。それを提供する統括組織、ＪｅＳＵができたのは大きい」

　同組織公認の大会は多い時は月に６回。選手が組む個人大会は毎日行われている。１２月には国内最高額となる優勝賞金１００万ドル（約１億１０００万円）の大会が開かれる。来年にはサウジアラビアとの国際試合が予定されている。

　大会と観客数を増やしたことで、ｅスポーツは知名度を上げた。昨年９月の認知度１４％から今年７月には４１％に。今年の流行語大賞にノミネートされ、全国に波及している。車田さんは「ｅスポーツの大会から毎週のように声が掛かります。茨城国体の影響は大きい」と話す。来年９月に行われる都道府県対抗戦の茨城国体。その選手選考大会を開くため、競技種目の「ウイニングイレブン―」の使用許可の問い合わせが静岡、徳島、青森、広島など途切れない。

　終わりゆく平成に、新たなるスポーツの可能性を切り開くｅスポーツ。だが、ここが終着点ではない。浜村さんは「ｅスポーツは男女差や地域差がなくできる数少ない競技」と位置付けた上で、「かなり競技の敷居が低いです。ゲームとその機械さえあればいいので。やる気があれば、誰でも、いくらでもトップを狙えます」。目指すは五輪正式種目。その時代はすぐそこだ。

　◆ｅスポーツ

　「エレクトロニック　スポーツ」の略称。コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える。野球、サッカー、格闘技、パズル、カードゲームなどの種目がある。原点は、１９７２年に米・スタンフォード大の学生が開催した対戦型シューティングゲーム「ＳｐａｃｅＷＡＲ！（スペースウォー）」の大会だといわれる。日本では統括組織・日本ｅスポーツ連合（ＪｅＳＵ）が国内の公認タイトルの決定や、プロライセンスを発行。ゲームタイトルが競技種目として公認されるには、「競技性、ゲームの稼働実績、ｅスポーツとしての継続的大会運営、ｅスポーツ大会の興行性」を伴うことが条件。プロ認定は、公認大会で好成績を収めることが必要となる。