紅ゆずる、36年ぶり名作「霧深きエルベのほとり」で創立105周年スタートダッシュ

スポーツ報知
日本演劇界の巨匠・菊田一夫氏の作品で2019年を始動する宝塚歌劇星組トップスター・紅ゆずる

 宝塚歌劇星組トップスター・紅ゆずるが来年1月1日、創立105周年となる歌劇団のスタートダッシュを切る。ミュージカル「霧深きエルベのほとり」は、「君の名は」「がめつい奴」などで知られる名脚本家・菊田一夫氏の書き下ろしで1963年に宝塚で初演された昭和の名作。36年ぶり5度目の上演に「温故知新。私自身も古き良きタカラヅカを知り、それにプラスアルファができたら」と、物語の深みを追求している。ショー「ESTRELLAS(エストレージャス)~星たち~」と2本立て。(筒井 政也)

 月組・内重(うちのえ)のぼる(63、67年)、月組・古城(こしろ)都(73年)、花組・順みつき(83年)が継承してきた、べらんめえ口調の荒くれ水夫・カールが、平成最後の新春に帰って来る。「105周年の節目の頭に名作をさせていただき、責任を感じています。自分の人生にとって財産になれば」と張り切っている。

 名家の令嬢と身分違いの恋に落ちるが、彼女の幸せを考えて、自らが“悪者”となって身を引く物語。新進気鋭の演出家・上田久美子氏が「あえて明るく振る舞っているところが(紅に)似ている。合うと思う」と再演を持ちかけた。「かなり難しくて、深い。上田先生の要求もハイレベルで、勉強になるし、下級生の芝居力も上がるのでは」と、寒さ厳しい師走に、稽古で心の中を震わせている。

 自問自答したのが、カールが醸し出す、本来あるべき「男らしさ」だ。「カッコいい=男らしい、ではなく。自分の欲を満たすために他人を犠牲にしているのが現代ですが、その真逆で、他人を生かすために自分が犠牲になる。人間が持つ究極の部分をえぐり出さないとできないかな。今、忘れ去られているものをよみがえらせたい」。喜劇とコスチュームものに取り組んだ2018年とは一味も二味も違う紅が見られそうだ。

 一方のショーは彩り豊かに。「みんながそれぞれの道を行っているようで、星組らしい。まとまってはいるけど『私はこうやりたい』というふうに突き進んでいくところがピッタリ」と表現する。「おせち料理のような?」と問うと「いいですねぇ。みんな似てるね、ではなく個性的であるべき。かめばかむほど味が出るショーになれば」。トップ就任後は初という大階段の黒えんび群舞にも注目だ。

 今年は自身5年ぶりの台湾公演も経験。言葉の壁を乗り越え「『やらなきゃ』じゃなく『やりたい』と思わないと伝わらないことを学びました。しんどいけど、それが楽しい!」と笑顔。本公演をもって3番手スター・七海ひろきが卒業するが「心のあるお芝居をする子で、星組にも私にも惜しいですが、良き思い出になるようにやりたい。怒られても楽しく、みんなで『思い出、思い出!』と、いいふうに持っていってます(笑い)」。

 来年のテーマは「挑戦することを恐れない」とした。「よく『挑戦』って言いますが、すごく勇気が要るんです。なかなかできないこと。妥当な線でとどめるのではなく、勇気を持ち続けることですね」。亥年(いどし)は、さらに強い気持ちで突き進んで行く。

 ◆紅 ゆずる(くれない・ゆずる)8月17日生まれ。大阪市出身。2002年4月「プラハの春」で初舞台。88期生。星組一筋で、16年11月に星組トップスターに就任。来年5月に大阪、東京で上演する「鎌足―夢のまほろば、大和し美(うるわ)し―」では、大化の改新の立役者・中臣鎌足を演じる。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。

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