美弥るりか、2度目の「アンナ・カレーニナ」で平成ラスト主演に挑む!

宝塚歌劇月組2番手スター・美弥るりか主演の「Anna Karenina―アンナ・カレーニナ―」(脚本&演出・植田景子)が兵庫・宝塚バウホールで10日に開幕した。
ロシアの文豪トルストイの同名小説が原作。星組時代の2008年に妻アンナを奪われる夫を演じた美弥が、11年ぶりの上演の今回は、アンナを奪う主人公に立場を変える。「背伸びして硬くなっていた当時と違い、今回は等身大で自然体。体中から惜しみなくエネルギーを出し続けたい」と、豊かな経験値を生かして臨む。24日まで。(筒井 政也)
平成時代ラストの主演作は、11年間の時の重みを示すバウ公演だ。入団6年目にも同じ舞台、作品に。「初めての通し役。ソロで歌って、必死過ぎて。お芝居に対する考えが変わった特別な作品」で、今度は主役として純愛を表現する。
宝塚では01年に雪組で初演され、08年に次いで3度目の上演。19世紀ロシアに生きる貴族ヴィロンスキー(美弥)は、政府高官カレーニン(月城かなと)の妻アンナ(海乃美月)に一目ぼれ。心のままに激しく求愛し、やがて結ばれるが…。
今年のえとと同様、猪突(ちょとつ)猛進な青年だ。「私も、これと決めたら最短距離を猛スピードで行きたいタイプで『暴走機関車』と言われることも。気持ちが止められない」と、役とシンクロする瞬間が多いとか。
11年前はヴィロンスキーを敵視する“寝取られ役”カレーニンだった。「セリフはすべて覚えているので、懐かしがって、つい、そっち目線になりそうに(苦笑)」という正反対の立場だが「愛について悩んで苦しむ点で共通しているのでは。不思議な感覚ですね」。
不倫が招く家族崩壊、世間の冷たい目など、昨今でも常に話題になる普遍的なテーマだが、今回は真実の愛や生きる実感を得た喜びを前面に出す方向性になるという。「主題歌もポジティブな気持ちで、血が通っているような歌詞、楽曲に変わっています」。
ビジュアルも、日本公開13年の映画版で英俳優アーロン・テイラー=ジョンソンが演じた主人公のイメージで、ウェービーヘアに。「軍服姿で髪を崩すことって、宝塚で今まであまりなかったのでは。今の時代と融合した雰囲気になったらいいな」と新味をアピールする。
様々な変化の形があるが、一番変わったのは自分自身だろう。「青春といいますか…」と思い起こす08年は「午前11時開演ですが、緊張して6時には劇場に(笑い)。そうやって頑張れた一方、カチカチの洋服を着るように(役を)固めて固めて、小さな隙間から気持ちをシュッシュと出しているような」。だが、男役10年を経て、引き出しも増え、余分な力も抜けてきた。
タカラジェンヌとしても「外に出ると、硬くなりながら(人と)接していた」が、今は「気取らず話せてリラックスできている。演じることに対しても気負いがそぎ落とされたからこそかな」と自然体を実感。連動する「心の自由」もまた、真っすぐな主人公に通じる。
「新元号は春に決まるんですか? 楽しみ」と目を輝かせる新年も「芸事に対しては挑戦の気持ちを持ちつつ、人としては背伸びし過ぎず、等身大で。少しでも心に余裕を持って、豊かに過ごしたいですね」。そのしなやかな姿勢で、存在感をさらに強めていく。
◆美弥 るりか(みや・るりか)9月12日生まれ。茨城県古河市出身。2003年4月「花の宝塚風土記」で初舞台。89期生。星組から12年に月組に組替え。17年「瑠璃色の刻」で外部劇場単独初主演。次回出演の大劇場公演(3~6月)の「夢現無双―吉川英治原作『宮本武蔵』」では佐々木小次郎を演じる。身長168センチ。愛称「るりか」「るり」「みやちゃん」。