ラジオと演劇が異色コラボ「リスナーが主人公」固定観念を覆すプロジェクトの裏側

スポーツ報知
ラジオ番組と連動し、演劇作りに挑んでいる松居大悟氏(右)。オンエア後、出演者の本折最強さとし(左)、目次立樹と談笑

 ラジオと演劇が融合した異色の試みが話題を呼んでいる。2月6日に開幕する舞台「みみばしる」(東京・下北沢本多劇場、同17日まで)は、劇団「ゴジゲン」の主宰で、同作の作・演出を手掛ける松居大悟氏(33)がナビゲーターを務めるJ―WAVEの「JUMP OVER」(日曜・後11時)と連動した作品。「リスナーが主人公」としてラジオで募集したアイデアが直接舞台に反映されるほか、出演者やキャッチコピーなどもリスナーから募集。ラジオと舞台の垣根を越えるプロジェクトの裏側に迫った。(宮路 美穂)

 東京・六本木のJ―WAVEのスタジオ。「公演のグッズ、なにかいい案ありますかね」。約1か月後に迫った公演に向け、電波を通じ、リスナーにアイデア募集が促される。双方向のメディアであるラジオの特性を発揮した舞台作りが行われている。

 同番組の室崎光プロデューサー(29)によると「当初は単純にJ―WAVEの30周年を記念した舞台を作るつもりだった」というが、作・演出を依頼した松居氏から「聴いている人も巻き込みながら舞台を作れないか」と逆に提案を受けた。「僕のなかで、演劇とラジオは『ヒト対ヒト』という特別感が共通していると思いました。演劇も人の前でやるし、ラジオもしゃべったことがそのまま耳に届く。その近さを応用できたらと思い、作っている過程も含めて、ラジオの生放送でやってみたいとお願いしました」(松居氏)

 2月からパイロット版がスタートし、4月にレギュラー化した。公演は主演を女優の本仮屋ユイカ(31)が務め、シンガー・ソングライターの石崎ひゅーい(34)が音楽を担当することが決まったが、作品作りにおいてはあくまでもリスナーが主人公。「理不尽な話」などのエピソードを募り、ストーリーのアイデアに反映させることもあったほか、音楽会議や美術会議もラジオの生放送内で展開していった。

 夏にはリスナーオーディションを実施し、実に824通の応募があった。「小学生やおばあちゃんも参加してきてくれたのが意外でした」と室崎P。合格者の顔ぶれは高校生や保育士などさまざま。松居氏も「オーディションで、普通ならまず落ちるような声の小さい子が『ラジオだったら、こんな僕でも仲間に入れてもらえる気がして』と話してくれた。ラジオは誰かにとっての居場所であるんだな、と思って泣きそうになりました。彼にも出てもらいますが、普通に演劇やってるのとは全く違った予想もつかない楽しみがある」とリスナーとの化学反応を前向きにとらえている。

 実際のチラシに掲載するキャッチコピーもリスナーが決めたもの。1041案のなかから「意味なんか、追い抜いてゆけ。」や「人生なんてぜんぶかんちがい」など珠玉のコピーが集められた。今後は稽古がいよいよスタートし、クライマックスにかけて、放送もさらに熱がこもる。松居氏は「今から聴いていただいてもまだ間に合います。稽古場リポートも始まって、役者のインタビューをしたり、グッズやアフターイベントの案も募集します。どんどん具体的になっていくので、放送してから取り入れるスピードが早いので、どんどん参加してきてほしい」と語る。

 都会的で洗練されたイメージのJ―WAVEが、固定観念を覆して演劇作りに挑んでいく泥臭い姿は「J―WAVEの思春期と呼ばれています」と室崎Pは語る。松居氏も「コンプライアンスとか気にするご時世ですが、そういうの無視してきたのがラジオと演劇。おしゃれでも、健全でもないかもしれないけど、常に越え続けていきたい。参加して、人生が変わるような体験をしてもらえたら」と呼び掛けた。

 ◆ゆかりの人物とトークイベントも

 公演後には毎回、ゆかりの人物を迎えてのアフタートークイベントが行われる予定。すでに劇団「ヨーロッパ企画」の上田誠氏や音楽監督の石崎らの出演が発表されているが、今後も出演者は随時更新されていくという。また東京公演終了後、福岡、大阪でも公演を予定している。

芸能

×