仙名彩世、サヨナラ公演「CASANOVA」 希望に満ちた役に心境重ね演じる

スポーツ報知
退団公演を控え、そっと手を振るしぐさを見せる宝塚歌劇花組トップ娘役・仙名彩世

 宝塚歌劇花組トップ娘役・仙名彩世(せんな・あやせ)が4月28日付で、愛し続けた乙女の園に別れを告げる。退団公演は一本物の祝祭喜歌劇「CASANOVA」。脱獄し、逃げ回っている希代のプレーボーイ・カサノヴァ(明日海りお)と偶然出会い、冒険を共にするヒロイン・ベアトリーチェ役で「人生を謳歌(おうか)しようとする彼女のエネルギーを、私も持ち続けたい」と、アグレッシブにラスト作品に取り組んでいる。(筒井 政也)

 サヨナラの春が近づく。入団から丸11年で迎える卒業作。これで最後という意識は「お芝居が続く様子を客観的に見ている時、ふと感じます。下級生の頃から、私もここでやってきたんだなあと。『あっ、幸せだな』とジ~ンと思うことは多々あります」。感傷よりも、喜びで心を満たして臨みたいコメディー調の大作だ。

 18世紀の伊ベネチアに実在し、「世界の恋人」とも称されるカサノヴァの運命を狂わせる役柄。トップスター・明日海の3代目パートナーは「プロローグで娘役さんに囲まれていらっしゃる明日海さんの姿が何てカッコいいんだろうと…。そんな方の相手役をさせていただいたことは本当によい経験でした」。明日海とは舞台でラップバトルも用意され、「初めてですし、すごく斬新(笑い)。今までにない関係性かな。2人で物語を運んでいく力が大切」。コピーの「人生には、恋と冒険が必要だ」にある「冒険」がキーワードだ。

 ベアトリーチェも長い修道院生活を終えたばかりで「これから、新しい人生が始まる!」と希望に満ちている。音楽学校入学時の自分と重ねた。「これ面白そう!と思ったら素直に言葉に出てくる。すごくポジティブなんですね」。初心を思い返す機会でもある。

 決して順風満帆ではなかった。新人公演ヒロイン経験がないトップ娘役は平成では初。9年目での就任も遅咲きだ。下級生時代から癖の強い役も多かったが、多様な経験が首席入団の実力に磨きをかけた。

 「仙台市」と「名取市」から1字ずつ取った芸名通り、宮城県出身。2011年の東日本大震災では、帰省中に地震に遭遇したが、舞台に立てるありがたさを再認識。常に逆境を自らの力に変えてきた。本拠地・宝塚でのサヨナラショーを、8年たった3月11日に行う。「あの時、経験して感じたことは忘れずにいたい。3・11は、いつも特別な感情があります」。多方面への感謝を歌とダンスで伝えたい。

 娘役として肝に銘じてきたのは「いろんな思いをしながらここまで来たので、難しいことですが…『常に美しくあること』ですね」。後任は、入団丸5年となる華優希(はな・ゆうき)=写真=に決定。「娘役でいられる時間を大切にして」とシンプルかつ深い言葉を贈った。

 退団後の進路はまだ見えてこない。だが、その状況もヒロインと同様に楽しむ。「自分の可能性を広げたい、と思っていた入団当時のように『何ができるんだろう』『どんなことが起きるんだろう』と、ワクワクしながら探していきたい」。大輪の“ゆきの花”を、またどこかで咲かせられるように―。

 ◆仙名 彩世(せんな・あやせ)12月3日生まれ。宮城県名取市出身。2008年3月「ME AND MY GIRL」で初舞台。94期生。花組配属。新人公演時代は経験がなかったが、宝塚バウホールや外部劇場公演でヒロイン役を務め、17年2月に花組トップ娘役に就任。3月17、18日には宝塚ホテルでミュージック・サロン「Sen―se」に出演する。身長162センチ。愛称「ゆき」。

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