中島美嘉が「一番怖い曲」と語る代表曲「雪の華」その理由と込めた思い

歌手の中島美嘉(35)が、代表曲のバラード「雪の華」を主題にした3枚組みのベストアルバム「雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE」を発売した。昨年10月に発売15周年を迎えた同曲は映画化も実現するなど、今も多くの人に愛されるが、中島は「一番怖い曲」と語る。この曲に込められた思いやレコーディング時の秘話、今後の歌手人生などを聞いた。(加茂 伸太郎)
冬の名曲として、世代を超えて愛されているバラード「雪の華」。発売15周年の企画ベスト盤に、中島は「曲に周年をつけるって、新しいなって。いいきっかけになると思いました」。この曲にスポットライトが浴びることを、誰よりも喜んでいる。
03年の日本レコード大賞金賞、作詞賞などを受賞。同曲収録のアルバム「LOVE」はセールス160万枚超の大ヒットを記録した。それまでも「STARS」「WILL」など数々のヒットを放ってきたが、中島が「曲で勝負ができる」と初めて感じた作品。デビューから2年がたっていた。
「ありがたい悩みだけど、(デビュー以来)タイアップをつけてもらっていた。自分(の声)と曲だけで勝負したことがないような感覚もあったんです。そうじゃない曲が一曲ほしい―。そんな時、この素晴らしい曲に出会えました」
KinKi Kidsの「心に夢を君には愛を」、RUI(柴咲コウ)の「月のしずく」などを手がけた作詞・Satomi氏、作曲・編曲の松本良喜氏のコンビが「これ以上、いい曲は書けない」と言い切ったこん身の楽曲。スタッフの思いも肌で感じていた。「アルバムの中の一曲にはしてはいけない、と思いました。タイアップもつけたくなかったですね」
その思いとは裏腹に、明治製菓のチョコレートのCM曲に決まる。「(提供できる)曲が足りず、どうしてもはめる曲がなかった。CMの曲にしたくはなかったけど、どうしようもなかった」
モヤモヤした気持ちは全てレコーディングにぶつけたはずだった。しかし、最終日、歌い終えて帰宅した後、どうしても気になる箇所があった。「ディレクターに『歌い直してもいいですか?』って電話して、夜中にまたスタジオに行ったことは覚えています」
「今年、最初の雪の華を 2人寄り添って」というドラマチックなサビのメロディーが印象的だが、歌い出しの「のびた人陰(かげ)を 舗道に並べ 夕闇のなかをキミと歩いてる」からBメロへ、しばらく低音が続く。「低い声が出づらく、今ほどコントロールできなかった。何か嫌だな、気持ち悪さが残っていたんだと思います」
再びスタジオに戻ると、何度も歌い直した。「みんなに感動してもらうには、自分が納得できていない声、歌い方ではダメ。出し切った、と思えていない曲で感動するはずがない」。どの部分をどれだけやったか、記憶は定かでない。深夜のレコーディングはエンドレスで続いた。