佐野玲於、王道の裏に葛藤「表の仕事に就けるのか裏方の世界でやっていくのか」デビューイベントで号泣した心境明かす

スポーツ報知
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 人気ダンス&ボーカルグループ・GENERATIONSの佐野玲於(23)が出演する映画「PRINCE OF LEGEND」が来月21日に全国東宝系で公開される。アクション大作「HiGH&LOW」を手掛けたチームが、今作では伝説の王子を決める少女漫画的な内容に挑戦しており、佐野は「ハイローとは真逆のテイストで、新たなエンターテインメントと捉えている」という。10歳でEXPG(養成所)に入所してジェネに加入。王道を歩んでいるように見えるが「オーディションの時はかなり葛藤があった」とも。苦しかった時代や将来のビジョンなどを聞いた。

 「PRINCE OF LEGEND」は学園内に存在する「セレブ」「ヤンキー」「生徒会長」「ダンス」など各派閥の王子たちがヒロインを争奪する物語で昨年、日本テレビ系で放送されたドラマの劇場版だ。映画では“伝説の王子”決定までの戦いを描いており、佐野は良家出身の生徒会トップとして登場している。

 「最初に『ぜひ、生徒会長をやってください』とオファーを受けました。僕とコンビとなる(関口)メンディー君との2ショットも考えたんじゃないですか。今回はハイローとは全くテイストは違いますね。世間さまのEXILE系のイメージは汗に筋肉、レモンサワーに男、というのが強いと思います。実際そうなんですけど(笑い)。硬派とは真逆の作品ですが、ウチの組織の強みを生かしながら今までとは違った客層に刺していくというか、新しいエンターテインメントにつなげる意図があると思っています。自分は『LDHもこういった作品に挑戦する時代になったのか』とポジティブに捉えています」

 今作ではLDHの若い世代が中心となっているが、個人で頑張ることがグループや会社の成長につながると考えているようだ。

 「今回ジェネから僕と片寄(涼太)君、メンディー君が参加していますが、グループを代表してHIROさんに任せられた部分もあり、まぁ出向みたいなものです。ランページからは川村(壱馬)君に吉野(北人)君らが出演しています。彼らが他の作品で主演を張ることもあるだろうし、作品じゃなくても町田(啓太)君が何かのブランドのプロデュースに入るかもしれない。いろんなプロジェクトに関わって盛り上げていくことは、個人にもグループにもつながって最終的には組織に返るはず。HIROさんがLDHでやっていることはごく一般的な企業と変わらないと思います」

 小学生でダンスにのめり込み、大好きなダンスを通じて人生の転機となる先輩たちと出会うことになる。

 「小3のときにダンスをしたくて、母親にスクールに連れて行ってもらいました。ダンスにはまる中でお会いしたのがAKIRAさんやNAOKIさん、岩田(剛典)さんで(彼らが所属していた)KRUMP(クランプ)ダンスチームの練習会にも行くようになりました。そしたらAKIRAさんがEXILEに入ったんですよ。それまでEXILEは『Mステで見た』程度の知識しかなくて…。で、今度はNAOKIさんが新生J Soul Brothersを経て(EXILEに)入っちゃって。しまいにはNAOKIさんが就活していた岩田さんをHIROさんに紹介して『就職決まってんですけど、三代目JSBに入れたいです』って。近くにいる先輩たちが表舞台に出る瞬間を間近で見てウズウズするというか、その流れでEXPGに特待生で入れてもらいました」

 養成所では同い年の小森隼らとともに目立つ存在で、ジェネのオーディションに合格して候補生として「夢者修行」ツアーに参加した。

 「EXPGで定期的に試験をやっていく中で『若い世代のグループを作る』となって、小森と一緒に受けました。全国から集まった30人ぐらいが10人になって、1週間合宿して絞られた候補生7人が夢者修行に出るワケです。もう全部が手探り。お客さんを集めなきゃいけないし、自分たちの実力もつけなきゃいけない。ステージの数も多いから体力的にもきつい。それに出会いたての7人でどうやってグループを作っていくのかです。育ってきた環境もやってきたこともバラバラ。ボーカルがいたり芝居やってきたメンバーもいればダンスもさまざまで、今考えると『EXILEになりたい』というベクトルだけが支えでした。これも近くで先輩方のドームやアリーナツアーに触れて夢見させてもらっていたおかげだと思います」

 2012年11月、川崎ラゾーナでのデビューイベントで号泣した。その裏にはある葛藤が隠されていた。

 「今思い返すとこんなちっちゃなことでと思うんですが、当時は自分のメモリーの中では消化できないほどの悩みでした。オーディションは自分が高1になりたての時で、やっぱ家庭もひとり親で裕福じゃなくて自分もバイトしなきゃいけなかった。学校にも行ってバイトして時間がない中で、このグループに入れなかったら、しばらく(新たなグループ誕生は)ないだろうと考えたとき、ダンスを教える道もあるのかなと頭に浮かびました。表の仕事に就けるのかマイナーな活動プラス裏方の世界でやっていくのか。まさにその狭間(はざま)だったのですごい葛藤はありました。そんなことが思い返されて感情が爆発しました」

 デビューしてホールからアリーナツアーとレベルアップして、昨年は初のドームツアーを成功させた。

 「ホールツアーは粗削りな部分があって、けっこうHIROさんに手伝ってもらいました。アリーナをやるとなって、関わるスタッフの数や来るお客さんの人数が増えるとみんなキリッとし始めましたね。がむしゃらに頑張っていた無駄な部分をそぎ落として、自分たちの意図を少しずつ形にできるようになったと思います。ドームは夢でしたが、ちょっとハードル高いというか『ドームって、こんなにもできることが増えるのか』って感じでした。嫌らしい話ですが『こんなに経費かけられるの』っていうぐらい、いろんな演出ができるようになるんですよ。この技術を使うためだけに海外の専門家に来てもらったり、自分たちのキャパを超えて新しいモノがどんどん入ってくる。そうなるとこっちも引くに引けなくなるし、絶対成功させなきゃいけないから精神的にけっこうきつかったです」

 昨年は中国ツアーを開催。デビュー以来、定期的に海外公演をこなす中で外国語の重要性も感じている。

 「海外は別の挑戦というか、一から始めるぐらいの気持ちで取り組んでいます。去年はシアター規模で3都市9公演、日本ではドームをやりながら中国では新人としてホールツアーです(笑い)。日本とは違ったニーズやファンの巻き込み方とか、仕入れたことが日本のライブに返ったりしますから相乗効果はあります。海外に出ると言葉の重要性を痛感します。デビュー前から英会話レッスンを入れられて『えっ、俺たち海外に行くの』って感じでしたが、本当にやっていて良かったと思います。今は海外の最新の技術を借りることも多いし、振付師やデザイナーの方とお仕事する機会も増えてきています。先頭でディスカッションしていくためには言語はやっぱり大事だなと思います」

 ジェネの中では“おしゃれ番長”として有名だ。将来的には趣味のファッションを生かしたプロジェクトへの参加を目指している。

 「元々ファッションは好きで、将来的にはさまざまなプロジェクトに関わりたいと思っています。海外でのイベントや祭典とかに行かせていただいていますが、そこで出会った若いクリエイターをLDHアパレルの代表に『こういった人を見つけたんですけど』とか、『このデザイナーでJr.EXILEのライブ衣装どうですか』とか提案させてもらっています。アイテム作りでもアイデアを出したりしていますし、公表してない中でもディレクションに関わっているアイテムもけっこうあります。今は将来を頭に入れていろいろ勉強中です」

 ―素に戻れる瞬間は。

 「映画ですね。昔から映画館に行くのが好きで今も新宿、渋谷、六本木とかに通っています。映画館の雰囲気が好きで超落ち着くし、ワクワクするんですよ。映画見た後はやっぱ、帰り道に『こういうことがあるんだ』って自分なりに分析するんですが、映画に影響されていろんな感情に浸る時間が素になれているのかな~。今年15本ぐらい見てます。仕事終わってレイトショーとか朝行くときもあります。一人で。どれも刺さっていますが『七つの会議』は頭に残ってますね。実は見る前にHIROさんとジェネのメンバーで『リーダーとボスの違い』についてLINEしていたんですよ。映画がそれに通じるような内容で、隠蔽とパワハラ、出世と人間関係で最後に正義とは何かみたいなね。メンバーもみんな見たいと言っていました」

 葛藤を通して培われた覚悟は本物だ。これからも先輩の背中を追いかけて、いばらの道を進んで歩んでいくのだろう。苦労を悟られない笑顔が何とも魅力的だ。(ペン・国分 敦、カメラ・小泉 洋樹)

 2014年にEXILEのパフォーマー・バトルで最終選考にジェネのメンバー5人が残った。白濱亜蘭、関口メンディーが合格したが佐野は小森隼と中務裕太ともに落選した。

 「EXILEになりたかったですね~。可能性あると思っていました。まぁ、みんなもそう思っていたでしょうが…。ジェネから2人受かって良かったという安心とうれしさもありながら、自分らが選ばれなかった悔しさは3人にはあっただろうし、自分はすごい感じました。やっぱ。それだけ熱を投じていましたからね。でもEXILEの活動を見ると納得するというか、ウチのこの2人が入って良かったと今は思っています。自分が入らなくて良かったということはないですが、あのときは自分じゃなくて良かったとポジティブに捉えています。わだかまりですか、みんな本当に仲いいのでそれはないですよ(笑い)」

 HIROは「ボーカルとパフォーマーには見えない壁がある。だからこそ互いへのリスペクトが重要」という心得を持っているが、ジェネの事情はどうなのか。

 「壁ですか、それは感じますね。今となってはダンサーが前に立つことが当たり前ですが、それを初めてEXILEが歌と同じぐらいにダンスを前に持っていけないかというところでやってきて、今のスタイルができたと思うんです。でも本をただせば、歌がないとグループは成立しなかったり、自分たちもパフォーマンスできない。歌い手は特別で一番カロリーを担ってくれていて、なおかつグループの顔になってくれている。やっぱり楽曲があって自分たちのパフォーマンスが生きているのは絶対なので、HIROさんも日頃からボーカルへのリスペクトを僕らに口にしていると思います。自分もこういった立場になってすごく実感しています」

 小学生のときからLDHの先輩と付き合っていて、勉強になることが多いという。

 「AKIRAさんとは『GTO』(14年)で共演させていただきました。苦労を買ってでもする人って、こういう人をいうんだなと思うくらい取り組みに熱心で、間近で見させてもらって感じることがありました。岩田さんとも仲いいです。自分が小学生で岩田さんが大学生のときからですから。お互いに出演作品をチェックしていて、自分が映画『ハナレイ・ベイ』に出たときに『俺こういう作品やりたいんだよ』っておっしゃってくださいました。僕が言うのも何ですが岩田さんの芝居力って忙しいのに比例してすごくなっているんですよ。それに変な意味じゃなくて岩田さん、本当に頭いいんです。しっかり自己分析して道筋立てて10年、20年後の設計して今もいろんなことに取り組んでいる。近くで見ていてめちゃくちゃ勉強になります」

 ◆佐野 玲於(さの・れお)1996年1月8日、愛知県生まれ、東京育ち。23歳。2006年にEXPG東京校に入所。11年4月のオーディションでGENERATIONSのメンバー候補に選ばれる。12年に正式メンバーとなりシングル「BRAVE IT OUT」でメジャーデビュー。同年、日本テレビ系ドラマ「シュガーレス」で俳優デビュー。映画は「HiGH&LOW」シリーズに出演し、18年「虹色デイズ」で初の主演を務める。KRUMP集団(R)AG POUNDのメンバーとしても活躍。趣味は映画観賞。血液型A。

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