戸田恵梨香、初めて戦争映画に出演 あふれる母性「子供は宝」

22日に公開された女優・戸田恵梨香(30)と大原櫻子(23)のダブル主演映画「あの日のオルガン」(平松恵美子監督)が話題を呼んでいる。2人は太平洋戦争末期に幼い園児53人を連れて集団疎開する保母役を熱演した。これまで戦争映画は「避けてきた」という戸田が本作に出演した理由、また子供たちとの撮影の日々や自身の変化について聞いた。(江畑 康二郎)
2017年8月頃、戸田が本作の出演オファーを受けた際、脳裏をよぎったのは拒否反応だった。
「できない、と思いました。責任が大きすぎると思ったのが一番の理由。実話であり、ご存命の方がいらっしゃるというところを踏まえて、この作品を担えるのか不安でした」
これまで多くの映画に出演してきたが、戦争映画への出演はなかった。
「避けてきました。何度かお話をいただいたことはあったのですが、その作品が持っているメッセージ性や登場人物が発する発言が、私の思いと違うものはできなかった」
今回出演を決めたのは、平松監督との出会いが大きかった。オファーから約2週間後に対面し、じっくり話し合った。
「この作品は戦争のど真ん中を描いているわけではない。子供たちを守ることが、どれほど大きなことか。違う目線から私たちが感じ取らなければならないことを教えてくれる作品と思えたので『やれる』と思いました」
兵庫県神戸市出身。1995年1月、6歳で阪神・淡路大震災を経験し、「近所のおじちゃん、おばちゃん」を亡くした。
「大震災で死というものを初めて知った。この日常や文化的生活が当たり前のことではないことも分かるようになった。今回、そういう自分だからこそ伝えられることがあるかもしれないという意義を見いだすことができた」
撮影は昨年3月、京都を中心に行われた。保母たちのリーダーで責任感の強い板倉楓役を演じた戸田は、名作「二十四の瞳」(54年)などを見てイメージを膨らませ、子役30人と共演した。これほど多くの子供と仕事をするのは初体験。撮影の合間に鬼ごっこなどをして遊ぶ一方で、撮影中に騒ぐ子供に対して、「うるさいねん! みんな、何しに来たん。お仕事しに来たんでしょ」と関西弁で叱ることもあったという。
「私が声を出したことで、ハッとした表情をして、意識が変わった気がする。子供だからといって、子供扱いしないで同じ目線に立つことが大事なんだと分かった。まるで楓先生みたいでしたね」
自身の“母親願望”も刺激されたようで、「これからを担っていく子供という存在は、宝だと思う。未来のためにも、自分の心のためにも子供を授かれたらいいな」と話した。
昭和63年に生まれ、平成とともに歩んだ30年。新元号に変わる今年、本作とともに新たなスタートを切った。手始めに昨年10月、自身のインスタグラムをいったん全て削除しリセット。その理由を「テレビ番組に出演する際、ピックアップされるのは大抵4年ほど前のもの。SNSを引用するなら今を見てほしい。自分にとって大事なのは今であり、これから」と語る。
9月末からはNHK連続テレビ小説「スカーレット」で陶芸家のヒロインを務める。クランクインを4月に控え、陶芸教室に週3~6回のペースで通い、ジムで体力づくりに励む日々だ。
「この映画と朝ドラに共通するのは、とても愛情深くて情熱的なところ。そこは私自身も持っている部分なので。私の体と声を使って、どれだけ多くの人に愛を渡せるかがこの1年のテーマ。目いっぱい、いきたい」
平松恵美子監督「戸田さんが演じたのは陰影の濃い深みのあるキャラクターでしたが、役への掘り下げ方が深くて驚きました。私は普段そんなに自己アピールしないのですが、お会いして話すうちにぜひ一緒に仕事をしたいと思い、作品を含めてものすごく自己アピールをしてしまいました。命の大切さや平和への思いなどは、テーマとして繰り返し何回言っても言い過ぎではないと思います」
◆戸田 恵梨香(とだ・えりか)1988年8月17日、神戸市生まれ。30歳。2006年「デスノート」で映画初出演。07年フジテレビ系「LIAR GAME」で連ドラ初主演。08年フジテレビ系「コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」、10年TBS系「SPEC」が大ヒットし映画化。他にTBS系「大恋愛~僕を忘れる君と」、映画「駆込み女と駆出し男」など。趣味はスキューバダイビング。身長164センチ。
◆あの日のオルガン 太平洋戦争末期の1944年、若手保母たちが幼い園児53人と集団で疎開し東京大空襲の戦火を逃れた「疎開保育園」の実話を平松恵美子監督の脚本により映画化。受け入れ先として見つかった埼玉の荒れ寺で疎開生活を始めた保母と園児らは、さまざまな問題に直面しながら、励まし合い奮闘する。大原は天真爛漫(らんまん)で音楽好きな保母・野々宮光枝役を演じる。