仙名彩世、葛藤と感謝の卒業公演 宮城・名取市出身「8年前、背中を押していただいた全ての方々に感謝」

スポーツ報知
サヨナラパレードで笑顔で手を振る仙名彩世(カメラ・筒井 政也)

 2万人を超える犠牲者を出した東日本大震災の発生から11日で8年を迎えた。宮城県名取市出身の宝塚歌劇花組トップ娘役・仙名彩世(せんな・あやせ)は同日、本拠地・宝塚でのサヨナラショーを行った。

 4月28日付で宝塚歌劇を退団する仙名が、兵庫・宝塚大劇場公演「CASANOVA」の千秋楽を迎え、11年間立ち続けた本拠地に別れを告げた。大劇場前のパレードでは約1200人のファンに見送られた。

 宮城県名取市出身。芸名は、高校の通学先だった仙台市の「仙」と名取市の「名」から取った。東日本大震災の発生時は入団から丸3年。本拠地公演を終え、実家に帰省していた際に地震と遭遇した。2017年のトップ娘役就任時のスポーツ報知インタビューでは「家の中がかなりグチャグチャに…」と振り返った。電気供給の問題などもあり「東京公演をやっていいのか」と複雑だったが、被災した知人から「こういう時だからこそ舞台が見たい」と声が届いたという。

 仙名は黒の紋付きに緑のはかま姿で大階段を下り、「各地で追悼の行事が行われている中で、私が卒業の祝福をいただけることに、心の葛藤も感じております」と正直な胸の内を吐露。それでも「8年前、宝塚に残って舞台を務めることを決意をしたからこそ、今、この場に立たせていただいております。あの時、背中を押していただいた全ての方々に感謝申し上げます」と、しみじみ話した。

 入団7年目までに抜てきされる新人公演ヒロインの経験がない異例のトップ娘役。だが歌・ダンス・芝居の三拍子がそろった実力者で、宝塚の顔ともいえる花組を陰から支え、“トップ・オブ・トップスター”明日海りおの3代目パートナーに起用された。明日海は「トップ娘役を完璧にこなしながら、下級生、そして私の面倒まで見る離れ業を、見事にこなしてくれた。さすが、母さん」と、母親役も多く演じた相手役をねぎらった。

 「特別な日」とも語った3・11の本拠地ラストでは、サヨナラショーで思い出のナンバーも披露。舞台に立てるありがたさを再認識し、29日開幕の東京宝塚劇場公演で最後の一花を咲かせる。

 ◆仙名 彩世(せんな・あやせ)12月3日生まれ。宮城県名取市出身。第94期の首席入団で2008年3月「ME AND MY GIRL」で初舞台。のちに花組配属。17年2月に花組トップ娘役に就任。162センチ。愛称「ゆき」。

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