加藤雅也、牧瀬里穂との朝ドラ「まんぷく」話題の“夫婦漫才”で「新喜劇出たい」

スポーツ報知
インタビューに答える加藤雅也

 NHK朝ドラ「まんぷく」で俳優の加藤雅也(55)と牧瀬里穂(47)の“夫婦漫才”がお茶の間の話題となっている。加藤も「牧瀬さん、はじけていい感じです。できれば吉本新喜劇にも出たい」と手応えを感じている。昨年、俳優デビュー30周年を迎えて今年は出演作の公開が続く。1月公開の「二階堂家物語」をはじめ「影に抱かれて眠れ」(8月公開予定)など主演作も目白押し。「次はどんな役なの?と期待される役者になりたい」というが、演技の幅を広げるため出演本数にもこだわりを持っている。モデル出身でパリコレに出演して俳優に進出したが、そこは苦難の道への入り口だった。

 加藤と牧瀬が演じる川上アキラ・しのぶ夫妻の掛け合いは、浪速の“夫婦漫才”として今や朝ドラの名物にもなっている。

 「最初は、僕も牧瀬さんがあの役をやるのには驚きました。僕は関西人だからボケツッコミの苦労はないんですけど、牧瀬さんは九州の方で、その感覚はないからかなり勉強なさったと思いますよ。最初の頃のツッコミは恐る恐るで『ここまでやっていいんですか』という感じでしたが、そのうちにガンガンきました。あれぐらいやるから面白いと思うし、今ではこちらが助けられています。ネイティブな関西弁もマスターして『最近は濱田マリさんに見えてますよ』って言ったら、牧瀬さんも『うれしい』って喜んでいました」

 ―できれば、吉本新喜劇の舞台でも見たいですね。

 「それ、僕いいと思うな。一回、池乃めだかさんとお芝居させてもらったことがあったんですが、あの方々は予定調和じゃないから常に舞台の上でアンテナ張ってないとダメで勉強になりました。牧瀬さんやるかな~。出てくれたら面白いな、絶対受けると思います。大阪で朝ドラ見ている人多いんですよ。NHKに『パーラー白薔薇の客として出たい』って真顔で言ってくる芸人も多いそうですから」

 今年は出演映画が目白押しだ。1月に「二階堂家―」が公開され、来月19日に話題作「キングダム」、その後も北方謙三さん原作の主演作「影に―」などが控えている。

 「去年までに撮ったものが今年に集中した感じです。『二階堂家物語』は堅い小津安二郎さんのような世界観で、同時期に朝ドラがあったので、よく『印象が違うね』と言われます。『キングダム』の中国ロケはスケールがすごかった。歴史ドラマで使ったセットを貸してもらったんですけど、向こうはまずセットを建てて撮影が長期になると周りに店ができる。1~2年のスパンになると次にホテルができて、家が建って人が住み着くという仕組みなんですね。我々のロケ地は上海から車で6時間ほどの所にあり、現地の人に聞くと『上海のスタジオを使うのは超一流で、遠くなるほどだんだん格が落ちてくる』って。チェン・カイコー監督の作品の撮影は上海、我々はそこから6時間ですよ(笑い)」

 大学在学中にモデルとしてデビューしパリコレにも出演したが、外国人モデルを見て限界を感じたそうだ。

 「陸上部に入ってましたが、そんなに熱くなるものがなくて『人生面白くないな』って思っていた時、知り合いにスカウトされました。大学3年の時です。モデルの適応性を見極めていた時に『メンズノンノ』の(創刊号)モデルに決まりました。阿部寛君や風間トオル君らと一緒で、時代性の強い雑誌に受かるのは、自分の中に時代のキャッチーなものがあるんじゃないかと判断してこの世界に入りました。で、パリコレにも行くんですが、パリよりもまず東京コレクションに出る方がハードルが高かった。今のテレビ業界と一緒で一回いいものやると、次からオファーは来るけど、それまでは来ない。東京コレクションに出るまでは見向きもされなかったけど、一回出ると『ウチのショーにも』ってなりました。で、パリですよ。もうギリシャ彫刻みたいなヤツの集まりで、これじゃ一生の仕事にならないと思って帰ってきました。何か違う表現方法を考えた時、CM撮影で『動いている方がいいよね』とよく言われていて、それなら役者にという発想になりました」

 88年に映画「マリリンに逢いたい」で俳優デビュー。新人俳優賞にも輝いたが、自分の弱点にも気付かされた。

 「デビュー作でいきなり主演ですよ。でも、自分に演技の基礎などあるワケないじゃないですか。普通は卵からヒヨコになって鶏になるんですが、僕らは鶏として世に出ちゃっているから、演技は現場で学ぶしかない。当然、劇団から叩き上げてきた人とはおのずと力が違うんですよ。卵からヒヨコになるプロセスみたいなものをちゃんとやらない限り、鶏として存在意義もなくなるだろうし、これはどこかで絶対に埋めなきゃいけないとずっと思っていました」

 くすぶっていた不安を取り除くため、売れっ子俳優の立場を捨て米国修業を決断した。

 「英語も、ろくすっぽしゃべれないのに、話せるというイメージがあってダイアン・レイン(92年『落葉』)やジャクリーン・ビセット(93年『クライムブローカー』)と共演しました。自分の力以上の仕事でしたが、スタッフさんが形にしちゃうのね、プロだから。あの頃、本当に力がなかったですよ。だから僕ね、舞台に立つのも遅かった。45歳ですよ。立たないんじゃなくて立てなかったんですね、力がなかったから。『クライングフリーマン』(96年)に出演後、ブラッド・ピットが主演した『セブン』のプロデューサーから『来い』って米国に誘われました。事務所の周防(郁雄)社長に『やってみたい』と相談すると気持ち良く支援していただき、演劇学校に身を置いて英語も勉強しました」

 昨年、俳優デビュー30年を迎えたが、役者を続けて気付くことも多いという。

 「若い時はアレはやりたくないとかありましたが、今はできるだけ数をこなすことも考えています。一流のアスリートになるためには正しい練習を正しいやり方でやらなきゃいけない。腹筋鍛えるには腕立てをしても意味がないでしょ。ここで忘れがちなのは正しい量をやることで1000回、1万回やらないと筋肉はつかないんですよ。役者もそうで中村勘九郎さんと僕は芸歴30年で一緒なんですね。5歳からの30年と25歳からの30年。勘九郎さんは小さい頃から数をこなしている分、引き出しも多くて慣れもある。技術以上に“慣れ”って芸事には大切だと思います。高倉健さんはあまり出演しないことで『映画俳優たる者はこうなんだ』と思われるけど、健さんも若い時はむちゃくちゃ出ていて、僕らは晩年の集大成を見ているだけなんです。やっぱり数をこなしていろんな役をやらないと。『こんな役か』と思うような作品でも、そこには学ぶべきものがあります。『次どんな役なんだろう』と思われる俳優になりたいし、諦めずにお芝居やっていきます」

 酸いも甘いも経験しているだけに、ひと言ひと言に説得力がある。脇から主役まで幅広く日本の芸事を担っていってもらいたい。

 「パーラー白薔薇」でアキラは客の注文を「ライスカレー OK!」などと復唱するが、この“OK”は娘さんからヒントを得て生まれたそうだ。

 「結婚して神秘性、カリスマ性はなくなりました。当たり前ですが、娘の学校には住所を届けるし、親として普通に接しています。他からは『な~んだ』って見られるかもしれないけどしょうがない。結婚して諦めることも多いですが家庭や子供も持って、そんなシーンをうまく演じられるということもあります。でも子供の発想って面白いですよ。子供って何もないところからだから刺激を受けます。台本も違った角度で読めるようになりましたね。『OK』もこちらが『これやっておいて』というと、娘がよく『OK!』と言っていて、これいいな。じゃあ使ったろかって思ったんですよ」

 ◆加藤 雅也(かとう・まさや)本名・加藤昌也。1963年4月27日、奈良県出身。55歳。横浜国立大在学中の86年にモデルでデビューし、88年に映画「マリリンに逢いたい」で俳優デビューし、第12回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。98年には、映画「GODZILLA」でハリウッド映画初出演を果たす。以降、映画「BROTHER」やドラマ「アンフェア」、NHK大河ドラマなど話題の作品に多数出演。2008年に「ラヴ・レターズ」で舞台にも進出。06年に結婚し10年に長女をもうける。身長183センチ、血液型A。趣味はカメラ、格闘技。

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