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ホリプロが「メリー・ポピンズ」日本公演を実現した理由は?

2018年4月20日16時0分  スポーツ報知
  • ミュージカル「メリー・ポピンズ」の一場面
  • ミュージカル「メリー・ポピンズ」のワンシーン

 東京・渋谷の東急シアターオーブで上演中のミュージカル「メリー・ポピンズ」(5月7日まで)を観劇した。1964年に公開され、アカデミー賞5部門を受賞した世界的大ヒット映画のミュージカル化。1910年のロンドンを舞台に、子どもを放りっぱなしのバンクス家の子守として舞い降りたメリー・ポピンズが、不思議な魔法の力で2人の子どもを魅了し、両親の考え方も変えていくファンタジーだ。

 04年に英ロンドンで初演されたが、日本公演は今回が初めて。先日、10年がかりで日本公演を実現させたという主催のホリプロ・堀義貴社長(51)に取材したが「とにかく見ればわかるよ。絶対に面白いから」と力強く語っていた。「独りよがりでは?」と疑いを持って劇場に行ったのだが、確かに衝撃を受けた。

 日本公演では「世界最長」というメリー・ポピンズのフライングシーンをウリにしているが、個人的に感動したのは、世界的にも有名なナンバーの「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」と、「ステップ・イン・タイム」のナンバーだ。誰がすごい、というのではなく、脇役も含めた全体の迫力に圧倒される。相当な時間をかけて稽古を積んだことが容易に想像できた。

 映画版よりも、一家の主の頑固な銀行員・ジョージ・バンクスのかたくなな心が変わっていく動きを丁寧に描いていることも印象に残った。堀社長は「50代のオッサンに見て欲しい」と言っていたが、男性の観客は、バンクスを自身に投影できることも理由だろう。観客は女性が8割以上だったが、隣で見ていた60代と思われる男性が終演後、真っ先にスタンディングオベーションを行ったのには驚いた。

 世界的名作、とは言っても原作は50年以上前の映画。キャストは日本での知名度は関係なく、全員を英国スタッフのオーディションで決めるルールだった。結果的に実力派の俳優がそろったが、5~6月の大阪公演も合わせ、2か月半のロングランを決めるのにはかなりのリスクもあったはずだ。堀社長は「日本人はやれるんだよってところを見せたいんですよ。海外には、どうせ日本じゃできっこないと思いこんでる人もいるけど、裏方の能力は世界でもトップレベル。技術的には世界一です。ここ10年間で俳優の力も上がってきて、そんなに遜色ないところまで来てる。自信を持っていい」と力を込めた。

 ホリプロは海外作品の招聘(しょうへい)だけでなく、これまでも蜷川幸雄さんの演出作品などで積極的に海外に進出してきた。将来的に日本生まれのミュージカルを本格的に世界進出させる野望も抱いている。

 15年には人気コミック「デスノート」をミュージカル化し、韓国でも上演。今年10月には黒澤明監督の「生きる」(1952年公開)をミュージカル化して初演する。2つの作品は原作の海外人気も意識しての舞台化で、欧米での上演も視野に入れている。「自分のところから“世界記録”を出したいんです。どうだ、海外でもやれるんだよ日本人は、というのを見せたい。何十年かかろうが、海外に渡るぞと思ってます」。夢が現実になる日は、そう遠くないかも知れない。(記者コラム)

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