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まゆゆ、AKB卒業後の第一歩…「看板なし」の生き方とは

2018年5月19日11時0分  スポーツ報知
  • 初ミュージカル「アメリ」のゲネプロで熱演を見せた渡辺麻友

 定年後の人生を考える“定年本”が売れている。楠木新さんの著書「定年後」はベストセラーに。人生80、90年時代に突入した今、会社の肩書がなくなった後、一個人として残りの人生をどう生きるか―。今やそれが多くの人にとって、大きな課題であり、関心事になっている。

 芸能界でも事情は同じだ。背負ってきた大きな看板がなくなった時、タレントは、いや一人の人間は、どうやって生きていくのか―。18日、昨年いっぱいでAKB48を卒業した渡辺麻友(24)の初主演ミュージカル「アメリ」の初日を取材した時、そんなことを思った。

 主人公・アメリの真っ赤な衣装にボブカットで会見した渡辺は「ついに初日の幕が開くんですけど、この作品のお話を最初に聞いたのが1年半前くらい。まだまだ先だなあと思っていたら、あっという間に時間が過ぎて…。今、すごく緊張と不安とドキドキと楽しみと、いろんな気持ちが入り交じっているんですけど、最高の舞台をお届けできるように一生懸命、精一杯頑張りたいと思います」と、トレードマークの大きな目を輝かせた。

 初日公演の直前、2時間に渡って取材陣に公開されたゲネプロでもAKBの11年間で鍛え抜かれたダンスを披露。ウェイトレス、修道女など様々な“コスプレ”で観客を楽しませた上、肝心の歌の方も全20曲を堂々熱唱。大きな拍手を集めた。

 クライマックスには恋人役の太田基裕(31)とのキスシーンまで披露。AKB時代を通じて、全く初めてのキスシーン挑戦となった。

 06年、12歳で創設期だったAKBのオーデイションに合格。「まゆゆ」の愛称のもと、2014年6月のシングル選抜総選挙で史上最多(当時)の15万9854票を獲得して1位となるなど、11年間に渡って、エースとして活躍してきた。

 この日のゲネプロを見て、「AKB時代と違う、まったく新しい渡辺麻友という一人の女優だ。かなり振り切って、ミュージカル女優に徹しているなあ」そう思ったから、聞いてみた。

 「AKBという看板がなくなって5か月。エースとして背負ってきたものを下ろしたホッとした気持ちとAKBという大きなブランドがなくなった不安と、今、どちらが大きいのか?」

 一瞬、「ええと…」と口ごもった渡辺は、まっすぐこちらを見ると言った。「正直に言うと、不安の方が大きいですね、やっぱり。ひとりでやっていかなきゃいけないので、そういう不安はあるのですが…」と正直に気持ちを吐露。その後、「でも、舞台は、やっぱり生ものですし、自分自身が楽しむということもすごく大事だと思うので、その気持ちを忘れずに精一杯、挑みたいと思います」。今回の“座長”として、気合を込めた言葉を続けた。

 そう、キーワードは「ひとりでやっていかなきゃいけない」という一言だ。この日、一女優として歩み始めた元アイドルの人生も、定年を迎えて明日から自分の名前の前から会社名も、役職名も消える、あなたの人生も一緒だ。自分一人の足で立って、最終的には一人で生きて、一人で責任をとっていく―。それが人生というものかと、心の底から思う。真っ赤な衣装で力いっぱい歌い上げる「新生まゆゆ」の可憐なシルエットを見ながら、そんなことを考えた。(記者コラム・中村 健吾)

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