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「都合のいい時にだけ障がい者になってはいないか」内部障がい記者が抱える悩み…小林春彦の講義を聞いて

2018年7月1日16時1分  スポーツ報知
  • 小林春彦(左から2人目)の講演会に出席したCoCo―LIFEタレント部のメンバー

 高次脳機能障がいの作家でモデル・小林春彦(31)の講演会には、内部障がい1種1級(僧帽弁狭窄で4回心臓手術、脳梗塞も経験)の私にも、共感するワードが詰め込まれていた。

 全国各地を飛び回り講演を行っている小林が、6月中旬に都内で「ハッと目覚める当事者不在の支援現場」という講演を行った。

 そこでは、小林が抱えている視野狭窄(きょうさく)での体験や、“見えない障がい”に対しての世間の反応、マジョリティー(社会的多数派)とマイノリティー(社会的少数派)の格差などについても語り、小林とつながりがある東大先端科学技術研究センターによるプロジェクト「DO―IT Japan」での見聞にも話題が広がった。

 「DO―IT Japan」とは、障がいや病気のある小中高校生・大学生の進学と就労への移行支援を通じ将来の社会のリーダーを育成するプロジェクト。小林は第1期生として参加、現在も関わりを継続している。

 最も共感したのは、小林が話した「世間の期待に応えるために、“障がい者らしく”する」という話。

 視野狭窄を抱える小林は、普段は白杖(はくじょう、視覚障がい者が道を進む上で必要な道具)を携帯しているという。電車などでは席を譲ってもらえるが、その彼がスマホを取り出して見始めると非難の視線が注がれることがあるのだとか。

 「視覚障がいにも種類があって、強度弱視や視野狭窄、夜盲や色弱色盲といった人もいる。それなのに世間は、白杖を持っていれば全盲、そうでなければ晴眼者だと白か黒かで判断しがち。それで自分も白杖を持っている時は社会に合わせるため、全盲の振りをするべきか、と戸惑う」と話した。

 私も内部障がいなので、見た目には全く分からない。普段はないが、突然体調に変化をきたすこともある。そういう時のために「ヘルプマーク」をかばんにぶら下げているが、ガッチリしている体形のため障がい者と見られることが少ない。もしものために日頃から弱々しく振る舞わなければいけないのか…と強迫観念にとらわれることがある。

 小林の「都合のいい時だけ、障がい者になっているんじゃないかと思うことがあった」という言葉には強く共感した。

 また小林は、「診断としての障がい(disabillity)の大小ではなく、その障がいによって社会生活で発生する困難(difficuly)の大小に目を向けるようにすると、社会は変わるのではないか」と提案。「困難を抱えている人に目を向けるべきではないか。障がいとは個人と社会の間にある距離であって、その距離を縮めるのに個人が社会に近づくのか社会が個人に近づくのかを問い直したい」との見解を示した。

 みなさんが思う「障がい者」の定義はどんなものですか?(記者コラム・松岡 岳大)

 ◆小林 春彦(こばやし・はるひこ)1986年12月17日、兵庫・神戸市出身。障がい者タレント専門芸能事務所「Co―Co LIFE(ココライフ)タレント部」所属。高次脳機能障がい・視野狭窄・左半身まひ。白杖と、左手に白い手袋を着用。私立三田(さんだ)学園中学・高等学校卒。「見えない障がい」の問題を訴える渾身の著書「18歳のビッグバン 見えない障害を抱えて生きるということ」を2015年に上梓。見通しの利かない未来に対して、光明を放ち奔走する、話題の論客。

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